戦型:右ペン表裏
卓球ライター若槻軸足がお届けする「頭で勝つ!卓球戦術」。今回は、「覚えたてのバックドライブの使いどころ」というテーマでお話していく。
バックドライブと聞くと、かっこいい、スマート、といったイメージの一方で、難しい、上級者向け、といった印象を持っている方も多いだろう。事実、バックドライブはフォアドライブよりも難易度は高い。
適切な打球ポイントも狭く、ボールに上手く力を伝えるのも難しいからだ。そのため、ある程度競技の年数が経過した選手が新たな技術として習得するといったケースが多いだろう。
そんなときに悩ましいのが、「試合での使いどころ」である。練習ではできるけれども試合ではできない。ただ試合で使えるようにならなければ意味がない。バックドライブに限らず、新たな技術を習得する際には誰もが陥るジレンマである。
今回は少しでもこのジレンマの解決の手立てとなるよう考えてみたい。(基本的にロングボールではなく、ツッツキ系のボールに対するバックドライブという観点で話を進めていく)
このページの目次
まずは「入ってくる」と思わせるのが大事
習得したてのバックドライブを使いながら、試合にも勝ちたい。理想を言えばバックに来たツッツキ系のボールには全てバックドライブを打っていく、というのが本来であるが、それはなかなか難しい。
それにミスが多く出てしまうと、相手にとっても脅威にならない。バックドライブで打ち抜いて得点しなくてもよいので、8割くらいの確率できちんと台に入れることができれば、「バックドライブもあるから警戒せねば」という気持ちにさせることができる。
まずは「入ってくる」と思わせることが大事なのだ。
大事なのは選択肢を絞ること
そのために大切なのは、選択肢を絞ることだ。
例として相手のバック前に下回転サービスを出して、バックへツッツキが来たときを考えよう。
このときあなたには、
・バックでツッツキをする
・回り込んでフォアハンドドライブをする
・バックドライブをする
という3つの選択肢がある。
選択には必ず判断が伴い、迷いが生じる。また、終盤の競った場面であれば、安定性が高く自信のあるプレーを選択すべきなので、練習中のバックドライブは選択肢から外れてしまうだろう。ただやはり競った場面でも自信を持って振れるようになりたいところだ。
そこであえてここでは、選択肢に入れない、というようにしてはどうだろうか。相手のバックからこちらのバックへ来るツッツキに対しては、バックドライブは振らない。最初からそのように決めるというわけだ。
そうすると余計な迷いも生じないし、自信のあるツッツキや回り込みの攻撃に集中することができる。実際に私もペンホルダーで裏面を貼っているが、このバックからバックへのツッツキに対しては裏面のバックドライブは絶対に打たないと決めている。
理由は後ほど触れるが、このように使う場面を切り捨てるのもときにはとても大切なのだ。では、具体的なおすすめの使いどころも合わせてご紹介しよう。
バックドライブの使いどころを考える①フォア前サービスからの3球目
おすすめの使いどころとしての1つ目は、こちらがフォア前へ縦回転のショートサービスを出したときの3球目攻撃である。
このサービスを出した段階で、「バックへツッツキが返ってきたらバックドライブを振る」と最初から決めて待ち構えるのだ。ここをバックドライブで待つ利点は2つある。
1つは相手のフォアサイドに出しているという点だ。当然こちらのフォアクロスへの返球もケアしなければいけないので、サービスを出したあとはフォアサイド寄りに構える必要がある。その位置からバックへ回り込むのは相当厳しいので、バックドライブがあることでカバーできるわけだ。
2つ目はコースの打ち分けが自在にしやすいという点だ。先程の例のように、相手のバックへサービスを出して、こちらのバックに来たツッツキに対して、相手のフォアを狙ったストレートにバックドライブを打つのは実は技術的にかなり難しい。となると自ずとクロスへのコースしか打てないというということになり、相手へのプレッシャーをかけることができないのだ。
フォアストレートから来るボールであれば、相手のバックへはもちろん、ストレート、それにミドルへと打ち分けることが比較的簡単なのだ。特にミドルへのバックドライブはこちらがミスするリスクも抑えながら有効打になるので、非常におすすめである。
バックドライブの使いどころを考える②逆横回転のサービスのレシーブ時
もう1つのおすすめの使いどころは、相手が逆横回転のサービスを出してきたときだ。
相手がサービスのとき、巻き込みやYG、バックサービスといった構えを見せた瞬間、もうバックドライブを振る気持ちで待つのだ。
こちらをおすすめする理由の1つは、単純に回転方向とラケット角度の相性がよいからだ。逆横回転に対してはこちらから見てボールの左側を捉えるのが、回転に負けずに返球する方法である。バックドライブを打つ際のラケット角度がそれと同じになっていることから、ごく自然に返球することができるのだ。
そして2つ目は、逆横回転のサービスは台から出てくるケースが多いからだ。
これは経験則から言えることで、初級者から中級者層では逆横回転、特に巻き込みサービスをきっちりと2バウンドで収めることができる選手は少ない。しかしみんなそれに気付かず台上でボールを触ってしまうケースが非常に多い。台から出るだろうと疑わなければドライブをかけることは決してできないので、ぜひ疑いの目を持って見てほしい。その際もしっかりとボールを引き寄せて打てば、意外と簡単に台に入ってくれる。
またサービスがちゃんと短く来たときも、バックを振る意識を持っていれば台上でのチキータ等へもスムーズに入れる。とにかく逆横を出されそうな雰囲気になったら、バックハンドを振る準備をする、というのがおすすめである。これらで得点にまで結びつけば、相手としても同じサービスは出しにくくなることだろう。
まとめ
試合で使えるようになるためには、あらかじめ使いどころを絞るということが大切だ。
その上できちんとミスせず入れることができれば、相手としては「バックドライブも飛んでくる」と警戒をするので、相手のプレーの選択を狭めることができる。
このように使いどころをしっかりと限定していれば、その展開を想定した具体的な練習メニューも組みやすいはずだ。
その練習を重ねて、試合でも問題なく使えるようになってくれば、そこから初めて使いどころを増やすことを検討していけばよいのである。バックドライブに限らず、新しい技術を習得する際はこのような考え方をするように心がけてみよう。
若槻軸足インタビュー記事
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