【頭で勝つ!卓球戦術】ボールを打つ時間だけが試合ではない!プレー間の有効な戦術とは


文:若槻軸足(卓球ライター)

卓球は心理戦である

卓球は心理戦である。

球技と名のつくスポーツは数多あれど、その中でも最も心理的な要素が強いのが卓球だ。

その理由は、相手との距離。ほんのわずか2mほどの近い距離で常に対峙してプレーをするので、表情、顔つき、息遣い、しぐさなどのほんの些細な情報で、相手の心理状況がつぶさに分かる。

さらに、卓球のフィールドは小さい。縦2,7m、幅1,5mほどの小さな卓球台というフィールドに、わずか2,7g程度のボールを打ち合う。ほんの少しの心の揺れが、そのままボールに伝わってミスにつながる。

卓球は非常に繊細なスポーツなのである。

試合中は、ボールを打っていない時間の方が長い

卓球の試合は、5ゲームマッチであれば試合時間は15分から30分ほどだ。しかし実はこの時間のなかで、ボールを打っている時間は、おそらく2割程度だといわれている。時間にすると3分から6分ほど。

では、残りの時間は何をしているかというと、気合いの込もったガッツポーズをしていたり転がっていったボールを拾ったり、次のプレーに入るために呼吸を整えたり、といった時間である。

この「プレー以外の時間」が圧倒的に長いので、ここを戦略的に考えることが出来れば、勝利へ一歩近づくことはお分かり頂けるだろう。

そこで、このプレー以外の時間で活用出来ることを、大きく3つに分けて考察する。そしてそのそれぞれで、心理的に有効な戦術を紹介する。

その1:声

声とは、選手が得点したときに上げる「かけ声」のことである。最近では、張本智和選手の「チョレイ」がテレビなどで度々取り上げられた。ひと昔前は“愛ちゃんの「サー!」とは何なのか”というのが話題になった。だが今はそんなことはどうでもよい。

大事なのは、「かけ声を出す」ということに何の意味があるかということだ。

ひとつは、自らを鼓舞する、つまり試合の中での“自分のテンションを盛り上げる”という役目。自分で大きな声を出すことで、エンジンをフル回転させ、調子を上げていく。

もうひとつの役目は、相手へプレッシャーを与える効果だ。

東京アートの大矢英俊選手や、シチズン時計の神巧也選手などは、大きなかけ声(というよりも雄叫び)を上げながらプレーすることから、「ガッツのある選手」などと言われたりする。こういった選手と対峙する相手は、結構嫌なものである。

相手の「声」に押されてしまい、自分のプレーが委縮するということは存分にある。

大きな「声」を出すタイプの選手は自分を鼓舞すると同時に、相手へのプレッシャーもかけられるので、一石二鳥である。

また、普段とのギャップを与えるために声を出す(もしくは出さない)という戦術も考えられる。

得点するごとに常に大きなかけ声を出していて、大事な局面で、ぱたりと声を出すのを止めてみる。あるいは、普段はじっと静かにプレーをしていて、ここぞという1点を取ったときに、渾身の大きなかけ声を上げる。

そのように急に態度を変えると、相手はこれまでとのギャップで、一瞬驚くであろう。

そういったことで、相手をぐっとひるませて、消極的なプレーを誘うことが出来る。

もちろん、自分は声を出さずに冷静にプレーをするタイプだという方もいるだろう。そんなあなたは、次に紹介することも参考にして頂きたい。

その2:表情

プレー中、ボールを拾っているとき、相手が構えに入るとき、相手の表情は常に観察することを心掛けるべきだ。強気の表情か、弱気の表情か。余裕があるのか、ないのか。作戦を考えているのか、作戦がなくてお手上げなのか。

逆に、自分も顔を相手に見られていることを意識して、表情を作ってみよう。

例えば、点数でリードしているときは強気な表情で、リードを許しているときは弱気な表情。これでは分かりやす過ぎる。

強気なときは強気な表情でいいのだが、大事なのは、弱気なときほど強気な表情をするということだ。2-8で負けていたとしても、「もうだめだ」という表情ではなく、「ここから逆転するから見てろよ」といった強気な顔つきをしていれば、相手もそれを警戒したプレーになる。

逆に水谷選手などは、“わざと「もうだめだ」という表情をして、そこからしれっと逆転する“といった高等テクもあると語っていた。やはり一枚上手だ。

最もいいのは、表情を全く出さない、「ポーカーフェイス」でのプレーだ。

丹羽孝希選手などはそのポーカーフェイスぶりで有名である。

どんなときも、常に冷静沈着で、感情をぴくりとも顔に出さない。

そうすると相手からしたら、「こいつはいったい何を考えているのだ」という心理になり、不気味で仕方がない。

また、「自分がスーパープレーをしたときほど、喜びを隠す」ということも大事だ。めったに出ないスーパープレーをして、「よっしゃあ!!」と盛大に喜んでいれば、相手は「ああ、今のはまぐれだな」と思うであろう。

そこを、一切の無表情で、さも「通常通りのプレーですよ」という顔でいれば、相手は「今のプレーが今後も何度もあるかもしれない」と思うに違いない。

このようにして、相手の表情から心理を読み取ると同時に、自分の表情を作って相手への「印象操作」を行うことも非常に有効な戦術である。

その3:間

最後は、「間」である。

「間」とはプレーからプレーに移る間のほんのスキマの時間とここでは考える。よく、「間を取る」「間の取り方が上手い」といった表現をする。

たとえば、卓球は6ポイント毎にしかタオルを使ってはいけない。なのでタオルタイムは有効に活用すべきだ。

相手が連続ポイントを取り、試合の流れが相手にいきそうなときに、タオルを取り、じっくりと「間」を取る。そうすることで、相手のイケイケムードをシャットダウンして、展開を落ち着かせる、といった役目がある。

これは逆に、自分が連続ポイントを取って、イケイケの流れが出来ているのであれば、タオルは取らず、時間をかけずにすぐさま次のプレーの構えに入るべきだ。

また、「間」は「相手との呼吸」といった言葉で表現することもできる。

例えば相撲において、取り組みの最初に、行司の「はっけよい、のこった」の合図でぶつかり合うあうわけではない。互いの力士の、「今から始めるぞ」という呼吸が合ったときに始まるのである。なので、片方の準備が出来ていなかったら、取り組みが始まらないということがしばしばある。

卓球も同じで、サーブを出しても、レシーバーの準備が出来ていなかったら、互いの「呼吸」が揃っていなかったということで、やり直しとなる。こういったルールを上手に使うことも戦術のひとつだ。

たとえば、現役を退いた中国の馬琳選手は「間」が非常に長い。構えに入る前に、手の汗を拭う、額の汗を拭う、ラケットを拭く、屈伸をする、といった「ルーティン」的なものがたくさんあって、なかなか構えに入らないのだ。

相手としては、「早く構えろよ」と、じれったくてしょうがない。

あるいはスウェーデンの英雄、ワルドナー選手などは間が早いことで有名である。ひとつのプレーが終わるやいなや、ひと呼吸置くまでもなくすぐさま次のサーブを出す。調子のいいときほどこの間が早くなるのだという。

相手も構えてはいるが、心の準備は出来ていないに違いない。

こちらがリードしているときほど相手より早く構える。あるいは、相手が構えているけれども、あえてこちらは時間を使って間を外す。

また、次のプレーを開始するまで、どうしても時間が欲しいというときの「間の作り方」も非常に大事である。

ボールが転がっていったときに、決して走らず、ゆっくりと歩いて拾いに行くなど。

福原愛選手は、試合中に間を作るために、ほどけていない靴ひもをわざとほどいて、結び直している間に次の戦術を組み立てたりすると語っていた。
(ただしこれらは、やり過ぎるとバッドマナーとして注意されるので、やり過ぎは禁物である)

こういったことも、自分がより万全な心理状態でプレーするために、また相手への心理的な揺さぶりをかけるために、非常に大切な戦術である。

まとめ

いかがだっただろうか。

一見地味なことに聞こえるかもしれないが、卓球は本当に些細なことで試合の結果ががらりと変わってしまうスポーツである。やはり心理的な要素は大きい。

それが、相手との実力が拮抗している場合や、大きな大会になればなるほど、その心理的要素は大きく影響する。

今回紹介したほんのちょっとの工夫で、ここぞという1本をモノにできることだろう。そして、その1本が、勝敗を分ける1本になると、私は信じている。

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