文:ラリーズ編集部
今回は、女子卓球界のトップを走り続ける若手実力派で中国の主力選手の一人である、陳夢(チェンムン・中国)を紹介します。プロフィール、使用用具、プレースタイルなどの基本的な情報から、国際大会での戦績についても触れていきます。
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陳夢とは
陳夢は、2017年から2019年にかけてグランドファイナル3連覇という輝かしい実績を持つ選手で、丁寧(ディンニン・中国)、劉詩雯(リュウスーウェン・中国)らとともに中国を代表する選手の一人です。これまで数多くの国際大会で優勝を飾り、東京五輪でも2個の金メダルを獲得しましたが、世界選手権のシングルスでは未だ金メダルを獲得していない選手としても知られています。
陳夢のプロフィール
陳夢(チェンムン)は1994年1月15日生まれの29歳(2023年8月時点)で、中国の山東省青島市出身です。
卓球選手だった母親のもと幼いころから卓球に親しみ、カデットの時代から国際大会で優勝経験を積んできました。2011年の世界ジュニア選手権で優勝したことで、その名を世界に知らしめました。
写真:陳夢(チェンムン・中国)/提供:ittfworld
2013年には19歳にして世界選手権シングルスで銅メダルを獲得します。さらに同年のアジア選手権では4種目すべてでメダルを獲得する快挙を成し遂げ、その内女子ダブルスと女子団体では金メダルを獲得しました。そして、翌年の2014年には仁川アジア競技大会では女子ダブルス、女子団体で金メダルを獲得、世界選手権東京大会では女子団体金メダルを獲得し、弱冠20歳にして世界のトップ選手の仲間入りを果たします。
その後も陳夢の活躍は止まらず、2015年のアジア選手権では再び全4種目でメダルを獲得。2016年の世界選手権女子団体でも金メダルを獲得し、どんどんと成長を続けていきました。しかし、2016年のリオ五輪では無念の落選。丁寧(ディンニン)、劉詩雯(リュウスーウェン)、李暁霞(リシャオシャ)の3人の牙城を崩すことはできませんでした。
それでも陳夢の勢いは止まらず、2017年のグランドファイナルでは女子シングルスとダブルスで2冠を達成しました。そこから2020年までの4年間連続でグランドファイナルを制覇しました。
写真:左から孫穎莎(スンイーシャ・中国)、陳夢(チェンムン・中国)、伊藤美誠/提供:ITTF
この活躍が認められ、陳夢は2021年の東京五輪中国代表に選出。悲願の五輪初出場を果たし、女子シングルスと女子団体の2種目で金メダルを獲得しました。
東京五輪後も、2022年のWTTシンガポールスマッシュで優勝を飾るなど、世界のトップ選手として活躍を続けています。
陳夢のプレースタイル
陳夢の戦型は右シェーク裏裏の攻撃型で、かつてアテネ五輪と北京五輪で2連覇を達成した元トップ選手の張怡寧を彷彿とさせる両ハンドドライブの安定感と威力が特徴です。ラリー戦ではその強みがさらに発揮され、相手が打球する前からコースや軌道が見えているかのように反応します。
写真:陳夢/撮影:ラリーズ編集部
女子卓球において予測や反応は試合を進めるうえでとても重要な役割を果たします。中陣や後陣でも戦える男子卓球と異なり基本的に前陣から中陣にかけて戦うことの多い女子選手は自分から早いタイミングで攻撃を仕掛けることができる分、相手の返球も早くなります。それを前陣で対応するにはそれ相応の反応と予測の力が必要になってきます。
陳夢はこの反応の速さと予測能力の高さで相手の打球を読んで常に好機をうかがっています。近年では、中陣より後ろに下がってもラリーで相手を圧倒することもあり、ほとんど弱点のない選手へと成長してきています。
陳夢の使用用具
陳夢は、ラケットがSTIGAの『カーボネード45』、ラバーは両面に紅双喜の『キョウヒョウ3 国チーム用』を使用しているそうです。なお、フォア面のラバーは特注品でブルースポンジを搭載しています。
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陳夢の世界ランキング
陳夢の世界ランキングは2位(2023年2月時点)です。最高世界ランキングは1位(2022年3月)です。2017年から常に世界ランクトップ5を維持し続けています。その他、カデット、ジュニア、U21の世界ランク最高位も1位と幼いころからその抜きんでた実力を評価されてきました。
陳夢は2019年6月から2022年末まで約3年間に渡り世界ランキング1位をキープしていましたが、2022年1月に同じ中国の孫頴莎(スンイーシャ)に1位の座を明け渡します。2か月後の3月には再び1位に返り咲きますが、その後7月に再び孫頴莎に抜かれ、以降は2位に留まっています。
陳夢の国際大会での主な成績
2011年 | 世界ジュニア選手権 | 女子シングルス:金メダル |
2013年 | 世界選手権パリ大会 | 女子ダブルス:銅メダル |
アジア選手権 | 女子シングルス:銅メダル、女子ダブルス:金メダル、混合ダブルス:銅メダル、女子団体:金メダル | |
2014年 | 仁川アジア競技大会 | 女子ダブルス:金メダル、女子団体:金メダル |
世界選手権東京大会 | 女子団体:金メダル | |
2015年 | ワールドカップ | 女子団体:優勝 |
アジア選手権 | 女子シングルス:銀メダル、女子ダブルス:銅メダル、混合ダブルス:金メダル、女子団体:金メダル | |
2016年 | 世界選手権クアラルンプール大会 | 女子団体:金メダル |
2017年 | カタールオープン | 女子シングルス:優勝、女子ダブルス:優勝 |
オーストラリアオープン | 女子シングルス優勝、女子ダブルス優勝(朱雨玲と) | |
世界選手権デュッセルドルフ大会 | 女子ダブルス:銀メダル | |
アジア選手権 | 女子シングルス:銀メダル、女子ダブルス:金メダル、女子団体:金メダル | |
グランドファイナル | 女子シングルス:優勝、女子ダブルス:優勝 | |
2018年 | ジャカルタアジア競技大会 | 女子シングルス:銀メダル、女子団体:金メダル |
世界選手権ハルムスタッド大会 | 女子団体:金メダル | |
グランドファイナル | 女子シングルス:優勝 | |
2019年 | 韓国オープン | 女子シングルス:優勝、女子ダブルス:優勝 |
スウェーデンオープン | 女子シングルス:優勝、女子ダブルス:優勝 | |
ワールドカップ | 女子団体:優勝 | |
世界選手権ブダペスト大会 | 女子シングルス:銀メダル、女子ダブルス:銅メダル | |
アジア選手権 | 女子シングルス:銅メダル、女子ダブルス:銀メダル、女子団体:金メダル | |
グランドファイナル | 女子シングルス:優勝 | |
2020年 | ドイツオープン | 女子シングルス:優勝、女子ダブルス:優勝 |
ワールドカップ | 女子シングルス:優勝 | |
グランドファイナル | 女子シングルス:優勝 | |
2021年 | 東京五輪 | 女子シングルス:金メダル、女子団体:金メダル |
世界選手権ヒューストン大会 | 女子シングルス:銅メダル、女子ダブルス:銅メダル | |
2022年 | WTTシンガポールスマッシュ | 女子シングルス:優勝 |
世界選手権成都大会 | 女子団体:金メダル | |
2023年 | 世界選手権ダーバン大会 | 女子シングルス:銀メダル、女子ダブルス:金メダル |
まとめ
世界トップに君臨する実力派の今後の活躍に期待が高まります。