歴史で見る卓球のプレースタイル 各時代を席巻した戦型は? | 卓球メディア|Rallys(ラリーズ)

写真:張本智和(木下マイスター東京)/撮影:ラリーズ編集部

卓球プレーヤー向け 歴史で見る卓球のプレースタイル 各時代を席巻した戦型は?

2020.02.18 文:若槻軸足(卓球ライター)

卓球ライター若槻軸足がお届けする「頭で勝つ!卓球戦術」。

このシリーズでは初心者向けに卓球の基本的な技術についての説明や、そのやり方、対処法などについてお話していく。実際のプレイヤーはもちろん、テレビなどで観戦される方にとっても、頻繁に出てくる用語が登場するので、知っているとより卓球の面白さが分かるだろう。ぜひ参考にしていただきたい。

さて今回のお話は、様々ある卓球のプレースタイルについて紹介したいと思う。

テレビなどで卓球中継を観る方も、ぱっと見ただけでは各選手のプレースタイルの違いなどについて、どう違うのかよくわからないというのが正直な声ではないだろうか。

今回は様々ある卓球の戦型・プレースタイルについて、できる限りわかりやすく、また歴史に沿ってお伝えしたいと思う。

>>さまざまな戦型を知り、自分のプレースタイルを固めよう!
>>【頭で勝つ!卓球戦術】ペン表ソフト対策編~戦型別攻略法~
>>【頭で勝つ!卓球戦術】戦型別攻略法!~対カットマン基本戦術編~

卓球とは回転のスポーツ

そもそものお話ではあるが、卓球のボールは常に回転をしている。1秒間に数十回転しているボールを、瞬時に判断しながら打ち返す競技だ。

より多くの回転をかける為に、様々な打法、あるいはラバーといった用具が研究・開発されてきた。そしてサーブでは、複雑な回転を相手にバレないように出すべく、様々な試行錯誤が繰り広げられているのだ。

卓球の起源はイギリス。雨の日にテニスができないため、室内でネットを張って、コルクなどを削ったボールを打ち合ったことが始まりだという。1800年代後半に発祥し、次第に現在のルールに近づいていった。

当初はもちろん回転という概念はなく、木べらのラケットで文字通り“ピンポン”と打ち合うだけだった。そして1900年代頃からゴム製の「ラバー」が開発されて、回転という要素が生まれることとなった。

当初は、用具が未発達であったり、ネットが今よりも高かったりということもあり、とにかくミスをせずに相手コートに返球し続ける守備型の選手が有利な傾向にあったという。その時代に多く活躍したのが「カットマン」というプレースタイルだ。

カットマン

橋本帆乃香
写真:世界でも活躍するカットマン・橋本帆乃香(ミキハウス・写真は2019ドイツOP時)/提供:ittfworld

通常はドライブといってボールに前進回転をかけて打ち合うことが多い卓球だが、カットマンはその逆だ。卓球台から後ろに離れて、ボールをカット、つまり切るように打球してバックスピンをかけて打ち返すのだ。コートを広く縦横無尽に動き回り、どんな強打も糸をつなぐように次々と返球する様は、観ていて惚れ惚れとする。

1940年代〜1950年代にかけてはこれが主流のスタイルであった。しかし1953年のフェレンツ・シド(ハンガリー)の優勝を最後に、世界大会でのチャンピオンは登場していない。現在はカットマンは少数派となっているが、Tリーガーの村松雄斗、女子では世界選手権代表の佐藤瞳や橋本帆乃香らが活躍している。

ペンドラ


写真:世界最強のペンホルダー・許昕(中国)/提供:ittfworld

そんなカットマンを倒すべく現れたのが、アジアで主流となっていたペンドラというスタイルだ。

卓球のラケットは一般的には2種類に分けられる。握手するように持つ「シェークハンド」と、ペンを握るように持つ「ペンホルダー」の2つだ。ヨーロッパ出身の選手はほとんどがシェークハンド、アジア出身の選手はペンホルダーと、地域での特色が分かれていた。

ペンホルダーの利点としては腕や手首の構造上、より力を伝えやすく、威力のあるボールを打ちやすいということだ。

その特徴を活かしてチャンピオンとなったのが、かの有名な荻村伊智朗氏である。フットワークを使ったフォアハンドで、ドライブやスマッシュを次々と決めていく様は圧巻であった。この頃の日本はまさに卓球王国と呼ばれるほどに全盛の時代であったのである。

前陣速攻


写真:現役時代の劉国梁/提供:アフロスポーツ

そんな日本選手達を倒すべく、中国が産み出したのが「前陣速攻」というプレースタイルだ。

前陣というのはプレーする場所のことで、卓球台のすぐ近くということを意味する。つまり台から離れずにへばりついて、とにかくすぐに打ち返して、相手に時間を与えずに畳み掛けていくスタイルだ。回転はあまりかからないが、球離れが早い「表ソフトラバー」駆使し、江加良氏がこのスタイルで2年連続世界選手権を優勝した。

ペンドライブの選手達は、威力のあるフォアハンドドライブを何本も打つ為に、ある程度台から距離を取って動き回る必要がある。その弱点を突いて、フォアハンドとバックハンド両方を使って、ほとんど動かずにタイミング早く打ち返すスタイルで世界の頂点に経ったのだ。

現在このスタイルで世界のトップで活躍する選手はかなり少数だが、中国ナショナルチーム総監督の劉国梁(リュウグォリャン)氏は、これに裏面打法を織り交ぜた、より進化したスタイルで世界選手権・オリンピックでチャンピオンに輝いている。

余談だが、当時の中国の体育館にはどこもワックスがきつく、油で滑るため、あまり動かないスタイルしか生まれなかった、といった説もあるようだ。

シェークドライブ


写真:ヤン=オベ・ワルドナー/提供:ittfworld

そんな中で次に世界を席巻したのが、スウェーデンだ。

ヨーロッパの伝統であるシェークハンドでドライブを打っていくスタイルかつ、唯一無二の存在感を放ったのが、ヤン=オベ・ワルドナー氏である。巧みな台上プレーで相手に先手を取らせず、さらに打たれても鮮やかなブロックで相手を翻弄する。さらに、前陣中陣・後陣と、どんな場所でも戦える、まさにオールラウンドなスタイルで、長きに渡って活躍した。

シェーク攻撃


写真:馬龍 (マロン・中国)/提供:ittfworld

そんなワルドナーを中心としたヨーロッパ全盛時代を打ち砕いたのは、またしても中国であった。

同様にシェークハンドでドライブを打っていくスタイルではあるが、ヨーロッパ選手のそれよりもより攻撃的だ。ブロックではなく、積極的なカウンタードライブでの攻めや、中国式ラバーの粘着力を活かした台上でのドライブ、さらに鍛え抜かれた肉体から繰り広げられるフットワークを使ったフォアハンド、コンパクトなスイングながら威力のあるバックハンドと、まさに弱点のない完成された卓球スタイルができ上がった。

この時代に活躍したのが、孔令輝(コンリンホイ)氏や、王励勤(ワンリチン)氏といった選手達、そしてこのスタイルを駆使して、現在名実共に世界のトップをひた走るのが馬龍(マロン)である。

現代の卓球


写真:2019年グランドファイナルでの伊藤美誠(スターツ)/提供:ittfworld

ということで、様々な変遷を辿ってシェークハンドの攻撃型のプレースタイルが現在の主流となっている。しかし恐るべきことに、現代卓球では、さらなる進化を遂げている。

チキータというレシーブから威力のあるボールを繰り出せる技術の台頭を皮切りに、どんどんラリーの序盤で決めにいくような展開が増えてきている。前陣に張り付き、バウンドして直ぐを捉えた速いテンポのラリーがどんどん繰り広げられる様は、まさに「高速卓球」と呼ばれるにふさわしい。張本智和や伊藤美誠らがその筆頭と言えるだろう。

まとめ

歴史とともに、卓球には様々なプレースタイルが生まれてきた。今はトップ選手達の間ではシェークハンド攻撃が全盛となってしまっている。しかし、アマチュアとして競技を楽しんでいるプレイヤー達の中では、過去のスタイルも健在だ。さらに面白いのは、今回紹介した以外にも数え切れないほどのスタイルがあるということだ。

特殊なラバーを使用して、身体能力が高くない選手でも同等に戦えるようなスタイルがあったり、あるいはシェークハンドでもペンホルダーでもないラケットの使い手がいたりと、まさに千差万別である。

近年は卓球ブームだ。試合を観る際は今回のようなスタイルにも注目して観て頂ければ、より卓球を楽しめるだろう。そうして興味を持って頂けたなら、ぜひ一度ラケットを握って、プレーをしてみてもらいたい。日本の卓球愛好家が、今後さらに増えることを願ってやまない。

若槻軸足が書いた記事はこちらから

頭で勝つ!卓球戦術

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