「収入は会社員時代の4、5倍」YouTube1本で生計を立てる卓キチを支える"分析力" | 卓球メディア|Rallys(ラリーズ)

写真:卓球YouTuber卓キチさん/撮影:槌谷昭人

卓球インタビュー 「収入は会社員時代の4、5倍」YouTube1本で生計を立てる卓キチを支える“分析力”

2021.07.07

この記事を書いた人
Rallys編集長。学生卓球を愛し、主にYouTubeでの企画を担当。京都大学卓球部OB。戦型:右シェーク裏裏

選手、コーチ、審判、メディアなど、卓球に関わる職業はいくつかある。

まったく新しい卓球YouTuberというジャンルを切り拓いているのが、「卓キチちゃんねる」で人気を博している卓球YouTuber卓キチさんだ。

チャンネル登録者数は10万人を超え、吉村真晴(愛知ダイハツ)や神巧也(T.T彩たま)らプロ選手ともコラボをしている。

現在はYouTuberを職業とし、YouTube1本で生計を立てている裏には、卓キチさんを支える3つの力があった。全3話でお届けする今回の特集の第1話では、卓キチさんの分析力について聞いた。


【卓キチ/中西淳(たくきち/なかにしじゅん)】1992年11月18日生まれ。岡山県出身。右シェーク裏裏ドライブ型。チャンネル登録者数10万人超えの「卓キチちゃんねる」を運営する卓球YouTuber。卓球の試合動画だけでなくあるある集などエンタメ系動画を数多くアップしている。また、卓球のプレー面でも、2019年には東京選手権東京予選を突破し、本大会出場を果たした実力者。

小学生時代は卓球よりもソフトボール

――まずはチャンネル登録者数10万人おめでとうございます。
卓キチさん:ありがとうございます。いろんな方のご出演や見ていただいている方々のおかげです。


写真:卓球YouTuber卓キチさん/撮影:槌谷昭人

――今回は卓キチさんが、卓球YouTuberとして好きなことを仕事にしている部分を深堀していけたらと思っております。

まず簡単に卓キチさんがYouTuberになるまでの経歴をお伺いしたいです。

卓キチさん:卓球は小学4年生から、地元の公民館で楽しむ程度にやっていました。

当時は他のスポーツもやっていて、実は小学校の頃、ソフトボールにめちゃくちゃハマってました(笑)。中学では野球部に入ろうかなと思ってたんですよ。

――それはまさかでした(笑)。
卓キチさん:結局、公民館でやっていた分、他の人よりも卓球ができたのと、兄が中学で卓球をやっていたので、中学は卓球部に入りました。そこから中高大と卓球部です。

卓キチさん:就職して東京に来てから、社会人4、5年目ぐらいに出た試合で、卓球YouTuberの祐コーチと当たり、「試合動画をYouTubeチャンネルにあげても良いか?」と聞かれたので快諾しました。

その動画の再生数が1,000、2,000と伸びていくのを見て、「やっぱりYouTubeは面白い。動画撮影は自分もしてるしやってみよう」と思い、2018年2月から試合動画をアップするようになって今に至ります。

退職しYouTube1本でやっていく決断ができた分析力

――今は退職してYouTube一本と伺いました。いつ頃専念されたんですか?
卓キチさん:2018年の12月に退職して、そこからですね。
――卓キチちゃんねるが登録者数1,000人に到達して、YouTubeの収益化が可能になったのが2018年9月末ですよね。

そこまで稼げる状態ではない中で、約2ヶ月後に退職して、YouTube1本で食っていく決断ができたのはなぜですか?


写真:2018年9月30日に卓キチちゃんねる1000人突破の動画があげられている/提供:卓キチちゃんねるより

卓キチさん:なかなか動画では言ってないんですけど、YouTubeは好きだったので、かなり分析してたんですよ。通勤時間とか仕事の休憩時間とか、ひたすらYouTubeについて調べていました。Youtubeの再生数伸ばすためにどうしたら良いかだったり、アナリティクスで各KPIを見たりとか徹底的にやっていました。

卓球のYouTube動画については、需要に対して供給が少ないジャンルなので勝てるかもしれないと思いましたし、2018年12月時点では、卓球YouTuberと呼ばれる存在がまだほとんどおらず、登録者1,000人でも結構上の方だったこともあり、決断できました。

――どういう分析をされた結果、卓球動画に勝機を見出したんでしょうか?
卓キチさん:これまで、他のスポーツも含めて、伸びているチャンネルの人気動画の1番目から5番目辺りをしっかり目を通して「なぜこの動画は伸びているのか」を自分なりに考えて答えを出すことを繰り返していました。伸びている理由がわかったら、自分の動画でも活かすというやり方です。

結局、伸びてる動画は面白いんですよね。

卓キチさん:卓球動画はジャンルとして確立しておらず、試合以外にも出せる動画がたくさんあると感じていました。その1つがエンタメ系です。

卓球×エンタメ系動画は今でも卓球芸人ぴんぽんさんぐらいしか出してませんし、需要はあると前々から思っていました。

――そういう分析が背景に合って生まれた1つの形が、卓キチちゃんねるの鉄板となった「卓球あるある」ですね。
卓キチさん:もともと試合動画を出しながら、エンタメ系動画を少しずつ挟んでいましたが、2019年5月に出した「地域によって違う卓球」というあるある系動画がいきなり20万再生ぐらいに伸びました。

予想通りいけるぞと思い、似たような動画をたくさん作って、エンタメ系主体に移行しました。


写真:2019年5月に公開された「地域によって違う卓球」 25万回以上再生されている/提供:卓キチちゃんねるより

「YouTubeだけで稼いでいくのは現実的じゃない」


写真:卓球YouTuber卓キチさん/撮影:槌谷昭人

――実際のところ…YouTuber専業の今は、会社勤めの頃と比べて収入はどうなんでしょうか?
卓キチさん:会社員時代の4、5倍くらいにはなってるんじゃないですかね。仕事を辞めて2、3ヵ月後には、会社員時代と同じくらいになっていましたよ。


思い切って聞いてみました。

――YouTubeは夢がありますね。
卓キチさん:ただ、だからと言って他の人に「今から卓球YouTuberを専業にできるか?」と言われれば、YouTubeだけで稼いでいくのは現実的じゃないというのが本音です。
――それはプロ卓球選手含む参入者が多い今だからということですか?
卓キチさん:今だから、と言うよりも、昔から一握りしか生き残るのは無理な世界です。

多くの人はコーチ業など、他の収益源があると思います。他の人のチャンネルを分析することもあるんですが、YouTubeだけの収益で見るとたぶん厳しいですね。

自慢とかではなく、今、YouTubeだけの収益だと僕と卓球芸人ぴんぽんさんしか生きていけないと思います。

――では卓球YouTuberになりたいという人がいてもあまり勧められない?
卓キチさん:仕事としてはオススメしないです。趣味としてやるんだったら全然良いと思います。

副業でも良いし、卓球場の経営しながらYouTube発信するのも良いです。ただ、お金を稼ごうとすると失敗します。

――それはなぜでしょう?
卓キチさん:シンプルに分析をせずにやる人が非常に多いです。需要がないとこに動画を供給しても仕方がない。しっかりと分析して、需要があるところに供給していかないと、食っていくのは厳しいと思います。

ところが、卓球はすごくニッチな世界で、今は卓球に関する動画投稿者も増えてきて、ほぼジャンルが出尽くしています。新しいジャンルを切り拓いていくのは難しいです。僕が今からYouTubeを始めてYouTube一本でやっていくのは絶対できないです。タイミングもやっぱり大事なので。

それでも仕事としてやるつもりなら、それこそ本当に人生懸けるつもりでやるしかないと思います。

会社員を辞め、卓球YouTuberという新しい職業に就き、卓球×エンタメ系動画という新しいジャンルを切り拓いた卓キチさん。

そこには細かな分析に裏付けられた確かな勝算があった。

第2話では、卓球あるある、ゴムシート卓球、超粘着ラバー卓球など卓キチさんの多彩な企画力の源を聞いた。

「自分が見て面白くなかったらそもそもダメ」卓球YouTuber・卓キチが語る面白い企画の作り方 に続く)

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