中学時代に実績のない選手も急成長 渡邉夫妻を慕い生徒が集う三浦学苑高校卓球部に潜入 | 卓球メディア|Rallys(ラリーズ)

写真:三浦学苑高校卓球部/撮影:ラリーズ編集部

卓球インタビュー 中学時代に実績のない選手も急成長 渡邉夫妻を慕い生徒が集う三浦学苑高校卓球部に潜入

2022.05.01

この記事を書いた人
Rallys編集長。学生卓球を愛し、主にYouTubeでの企画を担当。京都大学卓球部OB。戦型:右シェーク裏裏

三浦学苑高校卓球部は、至って普通の部活動だ。寮がなく、通える範囲の生徒が1時間~2時間かけて通学している。さらに中学時代に実績のない選手も多く、全国経験者の入学も多くない。

そんな中でも、2022年全国高校選抜卓球大会で予選リーグを突破し、ベスト16入りした。

『潜入!高校卓球部』と銘打ったこの企画を始めた初期から、YouTubeのコメントでは「三浦学苑高校卓球部に潜入してほしい」との声が多かった。今回ついに潜入し、三浦学苑高校卓球部の渡邉優樹監督と山本煌翔主将に話を聞いた。


【三浦学苑高校卓球部】神奈川県の卓球強豪校。2022年の全国高校選抜卓球大会ではベスト16に入った。主将の山本煌翔、副将の東海林聖央のダブルスが、2021年の関東大会優勝を果たした。東京パラ五輪代表の加藤耕也が卒業生。

全員通いの生徒 2時間かけて通う選手も


写真:渡邉優樹監督(三浦学苑高)/撮影:ラリーズ編集部

――三浦学苑高校卓球部はどういうチームでしょうか?
渡邉優樹監督:ガッツと粘り強さがうちの学校のカラーです。また、生徒はとにかく卓球が大好きですね。

あとは寮がないので、全員神奈川県の選手です。

神奈川県南東部の三浦半島にある横須賀市に学校があるのですが、実際のところ横須賀市の選手は1人しかおらず、1時間半から2時間かけて通う生徒も多いです。


都内から電車で約2時間のプチ遠征取材でした ちなみに取材日は三浦学苑高校の入学式でした

渡邉優樹監督:キャプテンの山本(煌翔)も秦野市、副キャプテンの東海林(聖央)も相模原市、他も遠くから通っています。

中には本当に通い切れない生徒もいて、学校の近くにお母さんと学校の近くにアパートを借りて住んでいる子も1人います。


学校の近くのアパートを借りて住んでいる渡部圭太(三浦学苑高3年)

――強豪校にありがちな、寮があって遠方の選手もスカウトして…という感じではないんですね。
渡邉優樹監督:そもそも私は監督を務めて約20年になるんですが、ここまで全中出場経験のある選手は3人しか入ってきていません。

たまたま今年は一気に3人も全中出場経験のある選手が入部しましたが、基本的には中学時代に実績のない選手が多いです。


高2で全日本ジュニアに出場した中野龍弥は、中3は県大会初戦負け

――そこから全国で活躍するまでに成長するのはどういう要因があると考えていますか?
渡邉優樹監督:おそらく生徒たちには「卓球をやらされている」という感覚はないと思います。私自身もポイントに絞って言うだけで、細かく言うこともないので、伸び伸びできているのが良いのだと思います。

私が一番意識しているのは、「卓球を嫌いになることなく3年間やってもらいたい」というところなので。

全員が手を抜かないチーム

三浦学苑高校卓球部主将の山本にもチームについて話を聞いた。


写真:山本煌翔(三浦学苑高)/撮影:ラリーズ編集部

――あまり実績がない選手が入っても成長するのはどうしてだと思いますか?
山本煌翔:練習量も多くて、トレーニングもしっかりします。

何より全員手を抜かないチームなので、メンタルも鍛えられていると思います。

――山本主将は中学時代はどうだったんですか?
山本煌翔:一応県では優勝しています。

中学時代は週3回ほどしか練習していなかったので、三浦学苑に入って練習量は何倍にもなり、結構キツイです(笑)。


写真:山本煌翔(三浦学苑高)/撮影:ラリーズ編集部

――え!週3回練習だったんですね(笑)。
山本煌翔:小中学校は自分の祖母がコーチをしてくれていて、そのクラブチームはワイワイやってて、練習始まったらサービスからオールみたいな感じでした。

実はフットワーク練習も高校に入ってから初めてやりましたね(笑)。


写真:山本煌翔(三浦学苑高)/撮影:ラリーズ編集部

原因不明の病に苦しんだ渡邉監督

再び渡邉監督。約20年間の監督生活を振り返ってもらった。

――監督生活で一番嬉しかった瞬間はいつでしょうか?
渡邉優樹監督:私が監督になったばかりの頃、先代の先生が築いてきた伝統とかを全部悪い意味で壊してしまって、勝てない時期が長くありました。

まずは神奈川県で一番強い湘南工科附属高校に勝ちたいなと思ってやっていて、平成24年の関東大会準決勝で初めて湘南工大附高に勝った時が一番嬉しかったですね。


写真:三浦学苑高校卓球部の練習場に貼られている部旗/撮影:ラリーズ編集部

――逆に辛かった時期はその勝てなかった初期の頃でしょうか?
渡邉優樹監督:いやそれよりも実はちょっと二年前に私自身がちょっと体調崩しまして、原因が結局わからなかったんですけど、急に呼吸が苦しくなっちゃったり、目眩や吐き気がしたりと正直部活の指導どころか授業もかなり厳しい状態でした。

その時が一番苦しかったですね。


写真:三浦学苑高校卓球部練習場/撮影:ラリーズ編集部

渡邉優樹監督:その時に私が部活にもう行けないので、妻が代わりにずっと練を練習を見てくれていました。

校長先生をはじめ管理職の先生方がそれを見てくださって、妻を外部コーチにしていただいて、その時からずっと二人で練習を見るようになっています。


写真:外部コーチとして指導にあたる渡邉淑子さん/撮影:ラリーズ編集部

――今は体調も回復されたんでしょうか?
渡邉優樹監督:本当にその時には学校の配慮もあって、少しずつ少しずつ回復しました。今はまた部活の指導ができるようになって、すごくホッとしてますね。
――奥さんや校長先生ら周りの支えも大きかったんですね。
渡邉優樹監督:私の代わりに練習見てくれた妻、それから副顧問の武富先生、それから校長先生はじめ管理職の先生方には、本当に配慮していただいて助けていただきました。

他にも本当に多くの先生方や指導者の人に助けられてきたなと感じています。


写真:練習を見守る武富先生(写真左)と渡邉監督/撮影:ラリーズ編集部

渡邉優樹監督:特に同じ県内の湘南工大附高の長谷部先生は卓球のことをすごく勉強させてもらいましたし、埼玉栄の若森先生、樹徳の林先生、千葉商大付属の浅川先生と挙げるときりがないのですが、お世話になってきました。

また、神奈川県のクラブチーム・たなかクラブの監督の田中さんにもすごくお世話になっていて、ほぼ毎年のように選手をうちに送ってくれています。その監督さんが本を出していて、その中で「選手は指導者の鏡である」という言葉を書かれています。それを常に肝に銘じて指導の方にあたってます。

今現在の自分があるのはそういった人たちの支えがあったからだなと思って、感謝しています。

――最後に今後の目標についてもお伺いできればと思います。
渡邉優樹監督:まず今年の全国高校選抜では、8決定戦で負けてしまったので、関東大会の団体戦で優勝は目指したいと思っています。

あとはやはりインターハイには出て、過去最高はベスト16なのでやはりベスト8のところに踏み込んでいけたらなとは強く感じています。


写真:東海林聖央(三浦学苑高)/撮影:ラリーズ編集部

渡邉優樹監督:また、神奈川県では湘南工大附属さんも強いので、2校で切磋琢磨して神奈川県を引っ張っていけたらいいなと思ってますし、関東でも常に上位に行けるようなチームにしていきたいなとは思ってます。

取材動画はこちら

動画では、各選手のプレー&ショートインタビューや東海林聖央に聞いたオススメ練習メニューなどもありますので、そちらもぜひご覧ください!

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