41歳プロ卓球選手・吉田海偉はなぜ現役を続けられるのか「プロは大変さを感じないとダメ」 | 卓球メディア|Rallys(ラリーズ)

写真:吉田海偉(小西海偉)/撮影:ラリーズ編集部

卓球インタビュー 41歳プロ卓球選手・吉田海偉はなぜ現役を続けられるのか「プロは大変さを感じないとダメ」

2023.01.08

この記事を書いた人
1979年生まれ。テレビ/映画業界を離れ2020年からRallys編集長。
軽い小咄から深堀りインタビューまで、劇場体験のようなコンテンツを。
戦型:右シェーク裏裏

男は、ちょっとしたやり取りも電話だ。

「あ、着きました」

約束の時間の1時間近く前に最寄り駅にやってきた男は「まだドイツから送った荷物が届かなくて、ひげ剃りもそこに」と、無精髭を触りながら照れた。

吉田海偉(よしだかいい)、41歳のプロ卓球選手だ。

2022年2月、長く所属した実業団・東京アート卓球部が休部を発表、今季は家族を日本に残して単身でポーランドに渡り、デコルグラス・ジャウドボに所属した。

現時点で個人は13勝2敗、チームは1位という大車輪の活躍を見せる。
11月には、ECL(ヨーロッパチャンピオンズリーグ)では、東京五輪銅メダルのオフチャロフを倒し、吉田海偉の健在ぶりに世界がどよめいた。


写真:吉田海偉/提供:鍋島孝夫

吉田が15歳で中国人留学生“宋海偉”として青森山田高校にやってきてから、長い時間が過ぎた。その間、日本には次々と才能溢れる若い選手が脚光を浴び、そして去っていった。

なぜ、吉田海偉だけは現役第一線で踏ん張り続けられるのか。束の間の日本帰国時に、話を聞いた。

13勝2敗も理想の成績ではない

――ポーランドリーグでは、個人で13勝2敗とチームを引っ張ってますね。
吉田海偉:理想の成績じゃないですよ、本当は全勝したかったから。これ、調子乗ってるわけじゃなくて。

ポーランドリーグは全勝して、ECL(ヨーロッパチャンピオンズリーグ)は世界のトップ選手と試合やりたい。

――そのECLで、オフチャロフに勝利しましたね。日本のファンもSNSで盛り上がってました。
吉田海偉:コメントも読みましたよ。“あんな古い卓球でどうやったら勝てるんだ、でも、かっこいいな”って。嬉しかったですよ。

中国語のコメントで“なんか知らない選手がオフチャロフに勝った”というのを見て、“お前調べろよ、そもそも中国出身だし、世界選手権で団体銅メダル獲ってるぞ”って思ったけど(笑)。


写真:吉田海偉/撮影:ラリーズ編集部

吉田海偉:もともとオフチャロフは、自分は嫌いなタイプじゃないんですよ。

最初はロシアリーグで、まだオフチャロフが20、21歳頃のときに試合して勝ってますね。その後プロツアーでは2回対戦して全部2-4で負けてるんだけど、2-2までは行く。でも、オフチャロフはオリンピック銅メダル2回獲って世界ランク9位の選手だから、レベルは向こうのほうが高い。

こないだの試合は、1ゲームとりあえず取りたいなと思ったら2ゲーム連取できた。

で、急に疲れちゃったんです。

――そこで?(笑)
吉田海偉:勝ちたくて、いつもとちょっと違う声出したからね。そこは41歳よ(笑)。

張本は若いからいいんだよ。あの張本も41歳であんな声出してオールフォアでガンガン打ったら、絶対疲れるはず(笑)。

3ゲーム目はチャンスボールも自分がミスして、いつもと全然違う卓球で。

ベンチに戻ってバナナもらって食べて、4ゲーム目が勝負だなって思ってました。2-2になると5ゲーム目は6点勝負、オフチャロフが起きてくるから。


写真:ドミトリ・オフチャロフ(ドイツ)/提供:ittfworld

娘・紅偉ちゃんはオフチャロフのファン

――そして、4ゲーム目を獲った勝利の瞬間、観客席を指差してましたね。
吉田海偉:日本人のファンがいたからね。ベルギーから車で駆けつけてくれた男と、その家族。
――へえ。吉田さんご自身の家族は、なにか言ってましたか。
吉田海偉:娘の紅偉(べにい)ちゃん(9歳)は、オフチャロフの大ファンなんです(笑)。

ドイツで朝ごはん食べてるときオフチャロフがいたから、日本にテレビ電話して、隣でオフチャロフが“おはよう”って言ったら、めちゃくちゃ顔赤くして“ヤバい、やめてやめて”って照れてました(笑)。

オフチャロフにサインもらったユニフォーム、紅偉ちゃんはでかすぎるパジャマにしてるよ(笑)。


写真:愛娘の小西紅偉(Global Athlete)/撮影:ラリーズ編集部

普段言わないけど、奥さんには感謝している

――奥さん(小西杏さん、元日本代表)は?
吉田海偉:2回目、オフチャロフに2-3で負けたとき、今回負けたよって電話したら、えーって(笑)。

俺も負けたくないよって。でも、相手も負けたくないから一緒じゃん。勝負の世界、勝つか負けるしかないじゃんって。

男はね、つらいときもありますよ(笑)。

――厳しい(笑)。
吉田海偉:でも、5分後くらいにもう1回電話かかってきて。

“よく考えたら、すごいじゃん”って。
“1回負けた相手のことをトップ選手は絶対研究する、2回目負けたくないから。自分もそうだったし。自分より全然若いトップ選手に、2回目も2-3ってすごいよ”って。

嬉しかった。最初から言えよって思ったけどね(笑)。

でも、奥さんには感謝してる、普段奥さんの前では言わないけど。

――この機にどうぞ(笑)。
吉田海偉:俺がヨーロッパにいるから、日本では奥さんがひとりで子どもの面倒見て、しかも卓球場もやっているからね。

感謝してるから、ヨーロッパで一人でもわがまま言わずに頑張れる。途中で帰りたいとか、絶対言わないようにしている。

日本食が食べたい、くらいかな(笑)。


写真:吉田海偉/撮影:ラリーズ編集部

試合に勝つことが一番のストレス発散

――ポーランドではどんな生活ですか。
吉田海偉:練習、食べる、寝る、練習、食べる、寝る(笑)。

あんまり喋る相手もいないです。自分は夜早く寝るので、時差の関係で日本の家族ともあんまり電話できない。夜は寂しくなりますね。

――卓球の練習がストレス発散になる面もあるんですか。
吉田海偉:それもあるけど、試合に勝つこと。それが一番。

ヨーロッパは移動も長いから、試合が始まると時間がなくて、全部移動です。ホーム会場も、住んでいるところから監督の車で2時間くらいかかる。

連チャンで試合して帰ってきて、2日後にまた10時間くらいかけて車で移動して試合、とか普通です。

でも、それが本当のプロリーグでしょう。

プロは大変さを感じなきゃダメ

――と、言うと。
吉田海偉:プロは、いろんな大変さを感じなきゃダメ。

確かに、日本のTリーグも毎日卓球でお金もらって、それもまあプロでしょう。

でも、本当のプロはね、いろんな大変さを感じなきゃダメなの。日本の移動は新幹線、飛行機でサッと行ける。美味しいもの食べられる。

俺41歳、ヨーロッパで、我慢、ストレス、我慢。美味しいもの全然食べられない。もうラーメンも飽きた。

でも自信持って言える。俺のほうがファンタジーがある。俺のほうがカッコいいって。


写真:熱いガッツポーズを見せる吉田海偉/撮影:ラリーズ編集部

プロの意味をわかってない

――でも、ヨーロッパでも、新幹線移動ができるならそれに越したことはないですよね。
吉田海偉:ドイツの新幹線、止まり過ぎだから(笑)。日本は便利、その意味では最高なのよ日本は(笑)。

だからこそ、今の日本の卓球に不満もある。

――例えば?
吉田海偉:Tリーグは、出てるのが子どもばかり。将来性?世界で勝ってる?それは本当に卓球の将来性?

お客さんに対してパフォーマンスもできない。試合終わって黙って帰る。だから人気が出ない。

サッカーがなんで人気なのかって、あのパフォーマンスがあるからでしょう。

Tリーグを観に来て、選手が黙ってプレーして黙って帰るなら、もう寝てるのと一緒。つまらない。

卓球をプロでやるっていう意味をわかってないよ。

――全日本を戦うのとはまた違う意味がありますからね。
吉田海偉:選手だけじゃない。問題になっているオリンピック代表選考ポイントもそう。(水谷)隼や、(石川)佳純が言ってる通りだよ。国内で勝ったって、世界に勝てないと意味がない。

Tリーグはプロチームの試合。オリンピック代表は選考会で選べばいい。一緒にしたらTリーグの魅力がなくなる。

チョコレートと酢、混ぜると酸っぱくない?別々に食べて、飲めばいいのに。混ぜるのは変でしょう?

諦めない41歳

ユニークな例えも交えながら、日本の卓球へ激を飛ばす吉田海偉。

「つい熱くなっちゃうんですよ、ポーランドで喋る機会少ないから」時折、照れる。

何ひとつ諦めていない男、吉田海偉、41歳。


写真:吉田海偉/撮影:ラリーズ編集部

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