Tリーグ3連覇を成し遂げた日本生命レッドエルフは、于梦雨(ユモンユ・シンガポール)がシングルス、ダブルス合わせて17試合、陳思羽(チェンズーユ・チャイニーズタイペイ)が8試合に出場した。
コロナ禍でも来日し、チームのために献身的にプレーする彼女らを支えたのが岸田聡子監督だ。ベンチに入ってゲーム間のアドバイスはもちろん、メディアの囲み取材での中国語通訳もこなしている。
キャリア豊かな海外選手と若い日本人選手の間を、巧みな中国語で繋いでいるのでは?そしてそれが三連覇にも大きく貢献したのでは?
それは軽やかに否定されながら、インタビューは始まった。
【岸田聡子(きしださとこ)】1977年4月14日生まれ。北京体育大学卒。現役時代は全日本社会人シングルス優勝や全日本選手権シングルス、ダブルスともに3位に入った実績を持つ。日本生命レッドエルフの村上恭和総監督を支える監督として日本生命レッドエルフの3連覇に貢献。
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日本選手と海外選手のチームワークの作り方
今回、岸田監督には『日本選手と海外選手のチームワークの作り方』というテーマでお話を伺いたいと思っています。
ずっと彼女らのことだけを思ってるわけではなくて、だから言うほどのことはないんですよね(笑)。
え…そこをなんとか…
こういったコミュニケーションという点では、中国語を話せる海外選手が多くいる日本生命は私が伝えているので、そこが目立っているだけかなと。
写真:岸田聡子監督(日本生命レッドエルフ)/撮影:槌谷昭人
選手同士が話しているのを聞いて、何か勘違いしてるなと思ったら教えてあげることもできますし。
写真:岸田聡子監督(日本生命レッドエルフ)/撮影:槌谷昭人
中国に7年間の卓球留学「行ったその日に帰りたいと思った」
じゃあ私は中国に行って練習しないとダメなんじゃないかと思って、北京出身のコーチに紹介してもらって高校から北京に行きました。
写真:岸田聡子監督(日本生命レッドエルフ)/撮影:槌谷昭人
ということは自分より上の学年にはもっと強い選手もいると考えたときに、中国に勝つなんて無理だって思ってしまった。中国に勝つなんて話が遠すぎると思って、行ったは良いけどもう帰りたいとなりました。
「周り見たら周りの子もすごい強くて、リュウ・ジャとかもいました(笑)」
でもそれが私にとっては転機でした。
私は弱いんだと気づいて、とにかく真面目にやって、必死にやったんだから仕方ないと言えるように日々過ごしていました。
本当は1年で帰ってくる予定だったんですけど、1年たった自分が全然強くなって無かった。それだったら高校卒業するまで頑張ろうと思って、3年間経ちました。
日本の大学に進学や企業に就職も考えましたが、練習環境を考えると北京体育大学では卓球が強くなるために必要なスポーツ全般の事を学べ、中国国内での試合にも出れると聞いて、北京体育大学への進学を決め、気が付いたら7年間中国にいました。
海外選手のフォローの仕方
写真:岸田聡子監督(日本生命レッドエルフ)/撮影:槌谷昭人
日本と海外の常識は違うところもあるので、日本はこういう感じだよと先に説明しておけば、選手もだいたい受け入れてくれますね。
わかってはいたけど、謙遜してるだけでめちゃめちゃ貢献してる人だ…
あと一番言っていたのは応援についてです。うちは森さくらと前田美優を中心に、どこのチームにもないようなすごい応援をする。他の選手も2人がすごいから一緒になって応援する。出ていない選手でも試合している選手を全力で応援する。
たぶんシンガポールや台湾もベンチの応援はあるんですけど、うちほどの勢いで応援する感じではない。ベンチでみんな一生懸命応援しているのが、最初はびっくりしたけどすごく励みになるし嬉しいと言っていましたね。
ベンチワークも海外選手だと気をつける点が違うのでしょうか?
なので、様子を聞きながらアドバイスします。ただ、于梦雨と陳思羽の場合は、自信がすぐになくなるタイプなので、「大丈夫だよ」とか「もっと自信持って」とか励ます言葉をかける事が多いです。
いつもの自分とは勝手が違うところで戦っているので、日本人はホームだけど彼女らにしたらアウェイ。不安は日本選手よりも絶対にあるのでなるべく楽にしてあげたいとは思ってます。
写真:岸田聡子監督(日本生命レッドエルフ)/撮影:槌谷昭人
キャリアが長いからこそ「あれもこれもしてくるかもしれない」と不安になる。
みんな一生懸命やってるので勝ってほしいですね。負けるとすごいへこんで暗い感じになっちゃうので。
「一敗もしない人はいないから、良いプレーさえすれば負けてもいいんだ」とはよく言いますね。
勝負だから負ける事も有る。
もちろん勝てれば最高ですけど団体戦は自分が負けてもチームが勝てば良いし、応援してくれている人は、選手の頑張っている姿や、良いプレーに共感したり勇気をもらったりすると思うので、自信を持って戦える様にまた挑戦すればよいと思います。
写真:岸田聡子監督(日本生命レッドエルフ)/撮影:槌谷昭人
自身の7年の中国での経験を活かしたサポートをしつつも、チームワークにとっては日本人も海外選手も関係ない、という爽やかな哲学があった。
特集・日本生命レッドエルフ第1弾 森さくら、前田美優らのインタビュー
>>森さくら、前田美優らのインタビュー!日本生命レッドエルフ特集