「恐怖のオヤジ」1日7時間の練習…「俺は卓球マシーンか!」

世界で戦う卓球アスリートに迫る 森薗政崇編 第1回


文:武田鼎(ラリーズ編集部),写真:伊藤圭

2017卓球世界選手権ドイツ大会、男子ダブルスでメダルを獲得した森薗政崇・大島祐哉ペア。

決勝で惜しくも敗れたものの、「48年ぶりの銀メダル獲得」という快挙を達成した。

本連載では森薗政崇の軌跡を4回に渡って追う。第1回は森薗少年と卓球の出会いから紐解く。

「卓球をやるために生まれてきた」環境

森薗少年が卓球と出会ったのは4歳の頃だ。

「出会った」という偶発的な意味を持つ言葉を使うのは間違いかもしれない。

なぜなら森薗の父は時計メーカーCITIZEN卓球部の実業団選手、さらに姉は卓球選手の森薗美咲(日立化成)、従妹は森薗美月(サンリツ)という「卓球エリート」の家族に生まれたからだ。

「卓球を始めるのは必然でしたね。4歳の時の記憶はありません。でも一番古い記憶は卓球をやっているところでした。卓球マシーンかって話ですよね。」苦笑しながら話す。

幼少期の話をすると、間髪入れずに返ってきたのは「親父は怖かったっすね!」という答えだった。

「今でこそすっかり仏になった」父だったが、幼少期は「恐怖の対象だった」と明かす。

父親直々に厳しい指導を行った甲斐もあり、森薗少年は小学4年、6年で日本一になり、一躍「天才卓球少年」の名をほしいままにして名門・青森山田中学へと進学する。

当時の森薗の練習メニュー(休日)がある。その練習量は「圧巻」の一言だ。

・6:30~7:00までトレーニング
・9:00~11:30まで練習
・14:30~18:00まで練習
・20:30~21:30まで練習(自主)

中学1年生にして合計7時間以上の練習量をこなしている。平日も早朝トレーニングと放課後の4時間のトレーニングを欠かすことはない。

特に印象に残っているのが父親からの球出しの練習だ。

「親父が左右にひたすら球を出し続けてそれを打ち返す。それを『もう動けなくなるまで』やるんです。しゃがんでいる僕に無言で延々と球出しを親父が続ける。そりゃしんどかったです」と懐かしむ。

入学した青森山田は全国有数の卓球強豪校ながら自由な校風で有名だった。

「もちろんきっちり練習はやるけど、コーチも特に口うるさいわけじゃない。フォームに細かい指示を入れることなくのびのび卓球をやらせてもらいました」

立ちふさがった「たんば君」? 丹羽孝希という壁

やがて森薗に大きな転機が訪れる。それが1つ上の代にずらりと居並ぶ強い先輩たちの存在だ。

「トーナメント表に『たんば君』って書いてあって。誰だろうって思いながら試合してみたらめちゃくちゃ強くて」。

その「たんば君」こそ他ならぬ丹羽孝希(にわこうき)だった。丹羽は森薗と同じく左利きで身長も160cm(丹羽は162cm)と同程度。いわば“同じタイプ”の選手だ。

さらに丹羽の代には町飛鳥(まちあすか)、吉田雅己(よしだまさき)という“3強”が絶対的な壁として立ちふさがった。

その“壁”が森薗の刺激になった。

「それまではずっと卓球を“やらされていた”状態でした。辛くて辞めたくても親父に言い出せなくて。でも1つ上にすごい先輩がいたのが刺激になりました」。

丹羽たち「3強」を超えたい——。そこから森薗の試行錯誤が始まる。最初に始めたのが先輩たちの観察だ。

「ずーっと横目で見ていました。やっぱり丹羽さんはボールのタッチが異常なんですよ、本当に綺麗なタッチをするんで、見ながら真似したりして」。

その後、丹羽と森薗は中学高校だけでなく、大学(明治大学卓球部)まで同じ道をたどる。

森薗の練習態度も以前とは変わった。

「今まではただ漫然と練習をこなしていただけで。でも考えるようになったんです。例えば、前の日の夜から、明日は何を気を付けようとか考えながら寝て。そして朝みんなより少し早く起きて体動かす。で、練習中にその考えていた事を考えながら実践する。『何でできないんだろう、何でできないんだろう』ってまた考える。もちろんすぐに答えが出るわけじゃないんだけど、ある時ふと『ああそういう事か!』みたいな。そういう『気づき』がすごい多くて」

あれほど逃げ出したかった卓球はいつしか楽しみになっていた。そこから森薗の才能が花開く。

高校3年間の集大成とも言える大会がある。それが三部航平(さんべこうへい)と出場した2014年の全日本選手権ダブルスだ。

森薗はここで水谷隼・岸川聖也ペアを破って、64年ぶりの現役高校生での優勝を果たしたのだ。
第2回:”エース水谷との激闘で挙げた64年ぶりの快挙 そして「ゾーン体験」”に続く)

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  • 撮影協力:Shakehands

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