ドイツ卓球、選手寿命が長いワケ | 卓球メディア|Rallys(ラリーズ)

写真:坂本竜介(T.T彩たま監督)/撮影:ラリーズ編集部

卓球×インタビュー ドイツ卓球、選手寿命が長いワケ

2020.04.14

取材・文:川嶋弘文(ラリーズ編集部)

中国を筆頭に、日本、韓国、チャイニーズ・タイペイ、香港と世界の卓球シーンをリードするアジア勢。時代とともにプレースタイルの進化も早い。

そんなアジア勢に対抗馬として、古豪ドイツは長きに渡って世界のトップを維持している。自らも10代で渡独し、ドイツ卓球を知り尽くす坂本竜介氏(Tリーグ、T.T彩たま監督)に「なぜドイツの選手は息が長いのか?」というテーマでお話を伺った。

>>第1話 坂本竜介に聞く「現代卓球のトレンド」 5年後伸びる日本選手とは

なぜドイツ勢は選手寿命が長いのか?

ーーなぜドイツの卓球選手は息が長いんでしょうか。
坂本竜介監督(T.T彩たま、以下坂本):
ドイツを代表する選手はティモ・ボル。本当にすごいですよね。今39歳でしょ。ティモって2003年に世界ランキング1位なんですよ。

今2020年でしょ?もう17年も世界のトップを維持している。まだ世界ランクトップ10入ってる。奇跡だよね。


写真:ティモ・ボル(ドイツ)/提供:ittfworld

普通、世界ランキング1位の時の技術を変えるって、なかなかできないんだけど、やっぱり生き残ってくためにアップデートしていった。

ーー時代に適応し続けていると。
坂本:
それだけじゃないですよ。みんな勘違いしてるのはどんどんアップデートされて新しいものが生まれていく。そうなると昔のものが通用しないって思う人が多いんですけどそんなことは無い。

アップデート後に卓球を始めた選手たちは昔の頃の技ができなくなっていることが多い。例えば、今、日本の若手選手がティモみたいなループ(回転量の多いスピードを抑えたドライブ)をできるかって言ったらできないし、普段練習で受けることは無い。だから逆に今、昔の技術がまた効くんですよ。

時代が流れているからこそ逆に昔のものが今にないものにまた変わっている。だからまた効き始めるってことがあるのがスポーツの面白いとこと。

だからティモは新しい技術は取り入れるけど、自分のそもそもの芯はぶらさずにやってるので強い。

だからドイツは強いし、息が長いんじゃないですかね。オフチャロフもそうだし、フランチスカも似てるし。

Tリーグが日本選手の選手寿命を伸ばすのか?

ーーアジアとヨーロッパの選手寿命はなぜ違うのでしょうか?
坂本:
それは環境ですね。でもTリーグができたことで日本選手も寿命長くなると思いますよ。今まではいわゆる代表引退したらやめなきゃいけなかったのが今までの流れだったんで、それがTリーグができたことによって選手寿命が長くなる。

単純に言うと卓球選手として働く場所があるか無いだけの問題なんです。

ドイツでは代表引退してブンデスリーグ行って、ブンデス1部で勝てなかったら2部に行って、3部に行ってというところなんですよね。僕もブンデスリーグ5年でやってたし、2部も3部も4部の試合も見てきた。


写真:Tリーグで活躍する松平健太(T.T彩たま)/撮影:ラリーズ編集部

だから単純になんで選手の寿命が長いかじゃなくて環境の問題ですね。選手寿命を長く出来る場所があるかないかの問題。その場所がドイツにはある、日本には無かった。いよいよ2018年に出来たばかりってことなんですね。ただそれだけの問題ですね。

ーーということは日本でも卓球選手の寿命が今後長くなるのでしょうか?
坂本:
まさにそこはTリーグ次第。そのためにはチームも増えてくれなきゃいけないし、もっとしっかりした組織になって、卓球界の雇用を1番生み出す場所にならなきゃいけない。

あとは成功例を作らないと。まず1番は松平健太(T.T彩たま、)じゃないですか。日の丸背負っていた選手が自分からナショナルチームを辞退して、Tリーグ一本でご飯食べて行こうとしている第一号ですから。こればかりは本人の人生なんで、本人が決めることですが、もう数年は健太が引っ張っていくべきなんじゃないかと思うんです。そうすることで日本の卓球選手にも新しい選択肢が出来ますよね。

(第3話 今だから言える“オーダーの意図” Tリーグ史上ベストゲームの裏側 に続く)

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