ついに“絶対王者”愛工大名電高校卓球部の練習に潜入した。
8月のインターハイ、編集部の山下がRallys Tシャツを着て会場をうろうろしていると、開会式前のふとしたタイミングで今枝一郎監督と会場ですれ違った。「卓球界のためなら何でもしますよ」。そう声をかけていただき「ぜひ取材させてください」とお願いすると電話番号を教えていただいた。
意を決して取材日程調整のために9月頭に電話した。「Tリーグ、国際大会の国内予選、海外リーグなどでほとんど選手が揃わないんだよね(笑)」。今枝監督はそう笑いながらも、取材日程を調整してくれた。
そして10月末に1日だけ、Tリーグベストペア賞の篠塚大登、インターハイ3冠王の谷垣佑真、全日本ジュニア王者の濵田一輝の3人が揃う日があった。編集長の槌谷、編集部の山下は、名古屋市にある練習場に足を運び、3選手と今枝監督に話を聞いた。まずは今枝監督のインタビューをお届けする。
【愛工大名電高卓球部】愛知県の卓球強豪校。2021年のインターハイ学校対抗では5連覇、男子シングルスで谷垣佑真、男子ダブルスで谷垣佑真/篠塚大登ペアが優勝し、谷垣は3冠を達成した。松山祐季(協和キリン)、木造勇人(愛知工業大学)ら日本卓球界の最前線で活躍する選手を輩出している。今枝一郎監督もOBで過去には全日本卓球選手権でシングルス優勝に輝いている。
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「自分の母校とは考えられないチーム」からのスタート
写真:今枝一郎監督(愛工大名電高 /撮影:槌谷昭人
今枝監督はコーチとして母校に帰ってこられたんですよね?
落ちるとこまで落ちてて、でもインターハイは団体ならベスト8くらいは入ってたんですけど、個人は愛知県予選を1人通過できるかどうかぐらいでした。
写真:今枝一郎監督(愛工大名電高)/撮影:槌谷昭人
2人がみるみる強くなるから、他の選手も夜の練習に一人ずつ「僕も入れてください」とだんだん増えていったのが最初でしたね。
神谷卓磨監督(愛み大瑞穂高) 以前の取材で今枝監督への感謝を語っていた
松山らで全国高校選抜で日本一になって、木造たちも続けて日本一になって、今のような状況になりましたね。
「弱い頃も教え甲斐があって楽しかったですよ(笑)」
強くなる選手の要素とは?
今日は試合でいないですけど、岡野も全日本ジュニアで3位になりましたし、今いる3人はほんと三者三様で、真面目真面目の濱田と、おちゃらけの谷垣と、もうそれをちゃんと観察していいものを取り入れる篠塚。全員が人間として魅力的ですね。
全員が全国で表彰台に並ぶ。こういう恵まれた状況にあるのが本当にありがたいですね。
写真:篠塚大登(愛工大名電高) この代の主将を務めた/撮影:槌谷昭人
人の目を見て挨拶できる礼儀の部分や、話を聞いて吸収して、日々前進していく子でないと強くはならないと思います。今の時代は、自分で強くなる理由をたくさん取り入れなきゃいけない。それができる子というのは、スポーツマンなんじゃないかなと僕自身は思ってます。
写真:練習中、濵田一輝に声をかける今枝一郎監督(愛工大名電高)/撮影:槌谷昭人
例えば、ゲーム間にベンチでアドバイスするとき、効いている戦術があっても、試合の展開は読めないですから、何対何のときにやれとは言えない。でもなかなか結果が出せない選手は0-0でそのアドバイスを実行しようとするんですよね。
写真:木造勇人(愛知工業大学) 愛工大名電高ではインターハイ3冠王に輝いた/撮影:ラリーズ編集部
いつ使うかは、要するに自分の状況を知り、相手を観察してるからこそできることだと思うんですよね。自分の考えをちゃんとプラスしてくれている。いつも木造の試合を見てそう思ってました。
レギュラーは投票制
写真:愛工大名電の練習風景/撮影:槌谷昭人
卓球に対すること、生徒に対すること、許していいこと許しちゃいけないことなどを2人で学習してきたから今があるんじゃないかなと思います。
写真:2021年全国中学校卓球大会での真田浩二監督(愛工大名電中)/撮影:槌谷昭人
「一生懸命今日はやれないの?じゃあやめようか」くらいのスタンスです。生徒も平気で「今日集中力ないんで帰ります」って言いに来ます。全然卓球をやらせている感じはない。
監督をやって感じたのは、自分が生徒以上に必死なうちは勝てないということ。僕らより本人たちが必死になってやる状況を作らなきゃいけない。気づいたら彼らの方が一生懸命やってるという状況に導かなきゃいけないという風に答えが段々なりました。
写真:今枝一郎監督(愛工大名電高)/撮影:槌谷昭人
だからレギュラーも僕が決めてなくて生徒たちの投票制です。僕がいないときに適当にやってる子や集中力がない子は投票されずにレギュラーになれません。
いつも言ってるのは「僕のチームじゃなくて、おまえたちのチームだ」ということ。「悪いけど俺には来年もインターハイがある。だけどあなたたちにはない。だから今を大事にしなあかん」というスタイルでやるようにはしてます。
こんな私を信頼して、名電を信頼して、子どもを預けていただいた親御さんの期待に応えたいという思いもあります。行かなきゃよかったなんていう風に終わってほしくない。
そういう一つ一つが完全にモチベーションになってますね。
写真:今枝一郎監督(愛工大名電高校)/撮影:槌谷昭人
物腰柔らかで冗談も交えながらインタビューに答えてくれた今枝監督。選手からの信頼感も厚い。
その今枝監督が絶賛するのが、主将を務めた篠塚大登(愛工大名電高3年)だ。
続いては篠塚のインタビューをお届けする。