愛工大名電高が誇る大器・谷垣佑真は、2021年のインターハイで男子シングルス、ダブルス、学校対抗の3冠を成し遂げた。3冠は2017年大会の木造勇人(現・愛知工業大学)以来の快挙となった。
持ち味は豪快な両ハンドドライブだ。今枝一郎監督(愛工大名電高)も「弾丸のような球が何本も入っていた」とインターハイでの谷垣のプレーに舌を巻いていた。
谷垣の三冠の裏には、高校2年生で直面したコロナ禍の苦しい時期があった。
【谷垣佑真(たにがき ゆうま)】2003年6月3日生まれの18歳。兵庫県出身。右シェークドライブ型。2018年には全国中学校卓球大会シングルス優勝、全日本ジュニアベスト4に入った。2021年のインターハイでは男子シングルス、ダブルス、学校対抗の3冠を獲得。Tリーグでは岡山リベッツに所属。
「俺が勝ったらヒーローだなと思ってました」
写真:谷垣佑真(愛工大名電高)/撮影:槌谷昭人
――3冠獲得のインターハイはどうでしたか?
谷垣佑真:まず団体戦では準々決勝の東山戦で、5番の自分が勝つか負けるかで勝ち負けが決まるところまで追い詰められました。
たぶんみんな緊張すると場面だと思うんですけど、自分はそんなことなくて、思い切ってプレーできたと思うし、それが繋がって決勝でも5番に回ってきたときに良いプレーができました。
写真:インターハイでの谷垣佑真(愛工大名電)/撮影:ラリーズ編集部
――緊張はなかったんですね。
谷垣佑真:「自分がやらないと」みたいなのはあんまりなくて、普通にラスト、俺が勝ったらヒーローだなと思ってました(笑)。
写真:谷垣佑真(愛工大名電高)/撮影:槌谷昭人
――3冠後には「木造さんを見て、心技体がそろってないと3冠にはなれないと思った」と話されてました。
谷垣選手も心技体を揃えてインターハイに臨めたのでしょうか?
谷垣佑真:インターハイ前までは、「心」についてはメンタル面がちょっと強い人と比べると欠けていたと思いますし、「技」については自分の技術が劣っていることを2021年の全日本ジュニアで感じさせられました。「体」については、ジムでトレーナーさんに診てもらって身体づくりに励みました。
「技」を特に中心的にやって、「心」と「体」はそれについていけるように頑張ってやりました。
――インターハイでは、弾丸のような球が入ってましたね。
谷垣佑真:入りまくってましたね(笑)。攻めなくて負けるのは悔いが残るので、振って入らなくて負けるなら良いと思いながらプレーしていました。
写真:谷垣佑真(愛工大名電高)/撮影:槌谷昭人
3冠で広がった視野
写真:谷垣佑真(愛工大名電高)/撮影:槌谷昭人
――インターハイ3冠したことで何か変わったところはありますか?
谷垣佑真:以前より少し視野が広がったと思います。前までは自分だけで精一杯みたいな感じでしたが、優勝したことによって他の選手も結構見るようになりました。
――他の選手を見るというのはどういう…?
谷垣佑真:例えば、篠塚(大登)だったら、台上プレーが上手いので参考にして、自分の技術に加えようとか、鈴木(颯)はフォアが強い選手なので、自分はフォアが弱かった分、参考にさせてもらったりとかですね。
写真:谷垣佑真(愛工大名電高)/撮影:槌谷昭人
コロナでモチベーション低下
写真:谷垣佑真(愛工大名電高)/撮影:槌谷昭人
――高校時代で苦しかった時期はありますか?
谷垣佑真:去年高校2年生の時、
コロナで全然試合がなくて、モチベーションが保てませんでした。
今枝先生にも「モチベーションがもうないです」と相談させてもらいました、高校2年生のときが一番辛かったです。
――そこから持ち直したのは、やはり今枝監督の言葉ですか?
谷垣佑真:先生からは
「おまえの気持ちはよく分かる。高校3年生のとき、コロナが明けて試合ができるときに爆発させよう」と言われて、自分もその目標に向かってやれました、
相談して良かったと思います。今枝先生からそういう言葉をもらったので、自分ももう一回頑張ろうと思ってできました。
写真:谷垣佑真(愛工大名電高)/撮影:槌谷昭人
――今枝監督の言葉はそこまで響くものなんですね。
谷垣佑真:なんかすごいものがあるというか。存在感がありますし、人とは違うものを持ってるなと感じますね。結構刺激もらえます。
――逆に一番ノってるというか、良い時期だと今ですか?
谷垣佑真:今もなんですけど、自分が思うに中3のときですかね。
中3で全中優勝して、世界ジュニアの一次選考会も何人もいる中で一敗で一位になって、全日本ジュニアでもベスト4に入れた。結構全国で良い成績が残せたので、その時が一番ノってたと思います。
写真:谷垣佑真(愛工大名電高)/撮影:槌谷昭人
――中3高1で段々上がっていって、コロナでつまずいた感じですね
谷垣佑真:中3高1で上昇気流に乗ってて、高2でコロナの影響で試合がなくてちょっと下がりました。でも、高3でモチベーションを保てて、インターハイ3冠できたので、良かったと思います。
毎日全国大会みたいな練習
写真:谷垣佑真(愛工大名電高)/撮影:槌谷昭人
――名電の選手はなぜ強くなると思いますか?
谷垣佑真:まず名電は高校の監督が今枝監督で、中学校が真田監督で、その存在も大きいです。
また、選手が全員強くて、毎日全国大会みたいな練習ができています。みんなが成長することによって自分も成長できるし、お互いがお互いを成長させられる環境だなとすごく思います。
写真:谷垣佑真(愛工大名電高)/撮影:槌谷昭人
――今枝監督の指導についてはどうですか?
谷垣佑真:技術も教えてもらうんですが、大事な試合のときの心構えなどメンタル面のことで学ぶことが多いと思います。いざ大事な場面になったときに、焦らないような心構えができるという感じです。
写真:谷垣佑真(愛工大名電高)/撮影:槌谷昭人
――今後はどういう目標ですか?
谷垣佑真:あんまり目標はないんですよね。自分はほんとに目の前の一瞬一瞬に集中するというか、それだけを大切に生きていこうかなと思います。
まあ強いて言うなら、目標は相手に勝つこと、ですかね。
写真:谷垣佑真(愛工大名電高)/撮影:槌谷昭人
“絶対王者”愛工大名電高校の強さの秘密に迫る特集もこれでラスト。
目標に「あまりない、強いて言うなら相手に勝つこと」と答えた谷垣。溌剌とした受け答えの裏にある、信念の強さを感じた。
個性を伸ばす今枝監督の指導方針の元で、伸び伸びと、しかし切磋琢磨しながら力をつけてきた篠塚、濵田、谷垣の三選手を取材し、その三者三様の充実に、“絶対王者”の理由を見た気がした。
愛工大名電高卓球部取材動画
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