骨肉腫で右肩関節切除も全日本ジュニア予選通過&東京パラ五輪代表下し日本一 パラ卓球界の新星・舟山真弘 | 卓球メディア|Rallys(ラリーズ)

写真:舟山真弘(早稲田大学高等学院)/撮影:槌谷昭人

卓球×インタビュー 骨肉腫で右肩関節切除も全日本ジュニア予選通過&東京パラ五輪代表下し日本一 パラ卓球界の新星・舟山真弘

2022.04.12

この記事を書いた人
Rallys編集長。学生卓球を愛し、主にYouTubeでの企画を担当。京都大学卓球部OB。戦型:右シェーク裏裏

パラ卓球界に新星が現れた。高校3年生の舟山真弘(早稲田大学高等学院)だ。

2021年9月には健常者の大会である全日本卓球選手権大会(ジュニア男子の部)東京都予選を通過し、2021年11月には第13回国際クラス別パラ卓球選手権大会で東京パラ五輪代表の岩渕幸洋(協和キリン)を決勝で破り、シングルス優勝を果たした。

2024年パリパラ五輪出場を目指す若武者に、障がいと向き合いながらプレーする卓球について尋ねた。


【舟山真弘(ふなやままひろ)】パラ卓球日本代表の次世代育成枠の高校3年生。4歳で右上腕骨の骨肉腫にかかり、手術では右肩関節と上腕骨を切除し、右足の腓骨を移植した。2021年9月には全日本卓球選手権大会(ジュニア男子の部)東京都予選通過、2021年11月には第13回国際クラス別パラ卓球選手権大会でシングルス優勝、ダブルス準優勝。2024年パリパラ五輪出場を目指す。

健常者に交じり全日本ジュニア東京都予選通過


写真:舟山真弘(早稲田大学高等学院)/撮影:槌谷昭人

――健常者にも混じって全日本ジュニア東京都予選を通過したと伺い驚きました。
※全日本ジュニア本戦は新型コロナウイルスの関係で棄権
舟山真弘:ジュニア予選は、(高校2年生で)今年最後だったので通りたいなという気持ちがあって、直前は1日10時間くらい練習をやり込んでいて、いけるんじゃないかなという感触はありました。

すごく緊張はしたのですが、通った時は相当嬉しかったですね。


写真:舟山真弘(早稲田大学高等学院)/撮影:槌谷昭人

――舟山選手は、卓球のどこに面白さや魅力を感じてますか?
舟山真弘:どこがと言われれば難しいんですけど、ほとんどすべてが楽しいですね。特に障がいがある中でも、自分の障がいの場合は健常者の人と変わらずにできるので。

骨肉腫で右肩関節などを切除

――具体的にはどういう障がいなのかもお伺いして良いですか?
舟山真弘:4歳の時に右上腕骨の骨肉腫という小児がんにかかりました。手術の過程で右の上腕骨と肩関節、その周りの筋肉を全部切除して、右足の腓骨を上腕骨の代わりにぶら下げるような形で移植しました。

肩関節がないので、腕を回せなかったり、押さえていないと腕の位置を保てなかったり、自分のコントロールがあまり効かない障がいになります。ただ、前腕の部分は問題がないのでサービスのトスを投げるなどはできます。


写真:舟山真弘(早稲田大学高等学院)/撮影:槌谷昭人

――では、卓球を始めたときはそこまで違和感なくできた感じですか?
舟山真弘:装具の一種のベルトを巻いていて、トスを高く上げるのは難しんですが、トスもできるので、特別そんな違和感はなかったですね。


トスも普通に行い多彩なサービスを繰り出す

――舟山選手の障がいは、卓球をする上でどういう点が難しくなるんでしょう?
舟山真弘:手の長さが手のひら一個分くらい違うので、バランスが悪くなります。

大きく右側に動いたときに普通の人よりもブレやすかったり、バランスを崩しやすいというのがあります。

東京パラ五輪代表を下し日本一に


写真:舟山真弘(早稲田大学高等学院)/撮影:槌谷昭人

――2021年11月の大会では、東京パラ五輪代表の岩渕選手にも勝って優勝されていますね。
舟山真弘:国際クラス別パラ卓球選手権大会という大会だったんですが、一昨年がなく、前回大会はコロナで中止と2年空いての大会でした。

自分も伸びている自信はありましたが、周りがどれくらい強くなっているのかわからない状況でした。でも、自分の中で成長している実感を信じて、良い勝負にはなるかなと思って臨み、優勝できました。

――優勝して何か変わりましたか?
舟山真弘:自分の中ではあんまり変わったことはないんですけど、いろんな人からお祝いのメッセージが来て、ちょっと嬉しかったくらいです(笑)。


写真:舟山真弘(早稲田大学高等学院)/撮影:槌谷昭人

次の目標は世界へ

ここで舟山の練習拠点の1つで、指導にあたる村上祥コーチにも話を聞いた。


写真:舟山真弘と村上祥コーチ/撮影:槌谷昭人

――実際に舟山選手が日本一になるのを見て、どう感じましたか?
村上祥コーチ:最初、舟山は正直そんなに実力はなかったんですよ。

ただ、入ってきたレベルから実力が上がっていく率で考えると、高校卒業までには絶対日本一にできるという自信はありました。もちろん本人がよく頑張って勝ち上がったと思います。


写真:村上祥コーチ/撮影:槌谷昭人

――お二人はどういう出会いだったんでしょうか?
村上祥コーチ:大会の会場でたまたま席が近くて、ちょっと会話をしていて、「練習場がないんだったら来れば?」みたいな感じがスタートでした。

その時に高校卒業するまでに岩渕選手に勝てるようにという目標も話していて、僕の目標としていた期間よりは少し早めに達成できたという感じです。現状、この立ち位置に来たので、次は世界で優勝するという目標に切り替わりました。

――世界を目指す上で今後はどうサポートしていきますか?
村上祥コーチ:本人の卓球の実力向上はもちろんなんですが、それ以外でも例えば海外遠征の事務作業的なものやスポンサー周りの金銭的なものは発生してくるので、本人がやれない部分をサポートしていければと思います。

大学進学後も、自分が帯同して一緒にサポートしていけるような体制作りを模索しながらやっている段階なので、まず安定してチームとしての行動を確立できるようになれればなと思います。


写真:村上祥コーチ/撮影:槌谷昭人

パリパラ五輪を目指して

最後に舟山に今後の目指すものを聞いた。


写真:舟山真弘(早稲田大学高等学院)/撮影:槌谷昭人

――今後目指しているところは?
舟山真弘:パリパラ五輪です。

ただ、まずは強くならないと全然パラ五輪に立って勝てるレベルではないので、純粋に強くならなきゃいけないなと思っています。


写真:舟山真弘(早稲田大学高等学院)/撮影:槌谷昭人

舟山真弘:あとは今年、アジアパラといういろんな競技の方が参加する大会があって、選ばれればその大会は自分にとっても初めての大きな大会なので、今年の中で意識している大会のひとつです。そこで結果を出したいと思っています。


写真:舟山真弘(早稲田大学高等学院)/撮影:槌谷昭人

障がいと向き合いながらプレーし、健常者相手にも遜色ないプレーで立ち向かう舟山。高校3年生となり、インターハイ予選通過も狙う。

今後の日本パラ卓球界を背負うであろう舟山の戦いから目が離せない。

豪快なフォアドライブやカウンターも披露してくれた動画もぜひご覧ください。

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