2022年4月に北海道千歳市で発足した富丘卓球クラブは、“農業用倉庫”を改装した卓球場が拠点という全国でも珍しい地域密着型のジュニアクラブチームだ。
幼児から高校生まで約40名が一緒に練習するクラブの代表は海野義幸(うんの よしゆき)さん。北の大地でキノコ関連の農業法人を経営する傍ら、チーム発足3年目でクラブを全国大会に導いた。
今回は、富丘卓球クラブ誕生の経緯や、海野さんが作り上げた「選手も指導者も成長できるチームづくりの秘訣」に加え、北海道の立地を活かしたクラブの将来計画についてもお話を伺った。
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はじまりは娘のため 農業用倉庫を改装した父の物語
写真:富丘卓球クラブの練習場の様子/提供:富丘卓球クラブ


その後、娘が入学した中学に女子卓球部がなく、一緒に卓球を始めたいという子が他にもいたので、2022年4月に富丘卓球クラブを設立しました。
写真:富丘卓球クラブの農業用倉庫での練習の様子/提供:富丘卓球クラブ


写真:富丘卓球クラブ集合写真/提供:富丘卓球クラブ

卓球台も当初2台だったのですが、高校で使わなくなった台を譲っていただくなどして、今は6台にまで増えました。地域のご協力のおかげで毎日楽しく練習が出来ています。


平日は近くの中学校のすぐ隣に公共の体育館があるので、そちらで練習することが多く、土日祝日は倉庫の卓球場で練習できます。
写真:公共の体育館での練習の様子/提供:富丘卓球クラブ


毎日練習してトップを目指したい選手、勉強や習い事の合間に来る選手、コツコツやって部活動で頑張りたい選手など、いろいろな目的の子たちがいますので、指導も選手のスタンスに合わせて行うようにしています。
写真:富丘卓球クラブの練習の様子/提供:富丘卓球クラブ
選手だけでなく、指導者も個人目標を持つ


また、現在指導者は私を含めて4名が登録していて、コーチそれぞれにやりたいことや目標があるのが特徴ですね。
指導者にもそれぞれに「どういうことがやりたいの?」とヒアリングして、指導者自身がやりたいことを応援するのもチームの方針です。
写真:指導の様子/提供:富丘卓球クラブ


「卓球の楽しみを伝えたい」というコーチには、初心者の指導をしてもらうという感じです。
写真:指導の様子/提供:富丘卓球クラブ

4名のコーチが活動できる時間はそれぞれ異なりますが、コーチ間で定期的な情報共有を行い、指導の質を高める努力をしています。うちのコーチは皆卓球が大好きな指導者たちばかりですよ。
設立3年で全国出場の秘訣は「できないを叱らないこと」
写真:北海道予選で3位となった千歳市立富丘中学校/提供:富丘卓球クラブ


写真:全中での千歳市立富丘中学校/提供:富丘卓球クラブ

日々の頑張りが1つの形になったと感じて、今までやってきてよかったなと思えた瞬間でしたね。


もちろん練習態度や礼儀など人として大事なことに関しては厳しく注意することもあります。一方で、卓球の技術や勝ち負けについて選手を怒ることは絶対にしません。「技術的な部分で出来ないことがあるのは、我々指導者の力不足だ」と指導者間でよく話しています。
写真:イベントの様子/提供:富丘卓球クラブ

最近では多賀少年野球クラブ(滋賀県)さんの事例をよく勉強させて頂いています。指導者の怒声を禁止したり、監督から選手へのサインを禁止したりして自主性を育むことで、部員数も増えて日本一にも何回もなられているんですよね。楽しく強くする野球をモットーとしていて、一つのモデルケースにさせて頂いています。
写真:指導の様子/提供:富丘卓球クラブ


お子さんがチームに所属する際に、極力負担にならない仕組みを整えています。
もちろん入ったら「子供の応援がしたい」ということで協力やサポートしてくださる保護者の方が多くいらっしゃいますが、保護者の負担が少ないことで子供が卓球を始めやすく、続けやすくなるのかなと。
地域に応援されるチームに
写真:指導の様子/提供:富丘卓球クラブ


できるのが当たり前なんて全く思っていませんが、子供でも大人に勝てるスポーツですし、努力が報われるスポーツであることもよく分かっています。
卓球がもっと好きになり、好きなことをやって、気がついたらチームを作っていました(笑)。
写真:アドバイスを送る海野さん/提供:富丘卓球クラブ


明るく仲良い太陽のような雰囲気がオレンジなんだと。
今後ももっと仲間を増やし一緒の体育館で仲良く楽しく練習していきたいです。そして指導者や子どもたちがそれぞれの目標を達成できるような環境を整え続けたいと思います。
写真:
写真:農業を体験する富丘卓球クラブ/提供:富丘卓球クラブ

例えば、地域のイベントに参加したり、地元企業と協力して活動の幅を広げることも検討しています。
また、少し先の話になるかもしれませんが、「農スポ」といって農業とスポーツの連携を目指すことを構想しています。普段は人手不足の農業の働き手として貢献しながら、指導者として卓球クラブに携われるようなモデルが作れないか、考えているところです。