"エースとの出会い"と"北欧での不思議な感覚" 木村香純が大学で急成長した2つの理由 | 卓球メディア|Rallys(ラリーズ)

写真:木村香純/撮影:田口沙織

卓球×インタビュー “エースとの出会い”と“北欧での不思議な感覚” 木村香純が大学で急成長した2つの理由

2021.01.08 取材・文:槌谷昭人(ラリーズ編集部)

唐突だが、木村香純はなんとなく猫っぽい印象がある。

「あ、言われます。あと、秋田犬にも似てるって」

そんな、なんだかモコモコなイメージとは裏腹に、試合中の木村はとても冷静で表情をあまり変えずに戦う。

お手本のように、基本に忠実なスイングときれいなボールで、攻撃的でありながらも静かにポイントを重ねていく。


写真:木村香純/撮影:ラリーズ編集部

>>>>第1話はこちら “カスミ”の名を持つミラクル・ガール木村香純【ヒロインも遅れてやってくる】

急成長の裏に2つの理由

ただ、木村は名門、四天王寺中学・高校の団体戦で主力メンバーとして出場し、ほぼ無敗を貫いたにも関わらず、個人戦シングルスではタイトルに縁がなかった。

環境を変えよう。一念発起して、関東の専修大学に進学したが、それでも結果は出ない。


写真:木村香純/撮影:田口沙織

それが大学2年の秋から風向きが変わった。
2019年11月、全日学選抜優勝でシングルス初タイトルを獲得すると、Tリーグ初参戦で格上相手に破竹の4連勝、さらに2020年12月の関東学生選手権でも優勝し、その実力が“ミラクル”ではないことを強烈にアピールした。

なぜ木村香純は覚醒したのか。
きっかけは明確に2つあると言う。

安藤みなみとの出会い

大学に入ったとき、3つ上に安藤みなみさんがいたこと」を第一の理由に挙げる。


写真:専修大学時代の安藤みなみ/撮影:ラリーズ編集部

そもそも大阪・四天王寺高校から関東の専修大学に進学するのは近年では珍しい。四天王寺高校の選手の中には、そのまま実業団に進む選手もいる。

ただ、木村は自身の実力をこう分析していた。
「高校のときも社会人と試合をする機会はありましたが、ボールの威力も質も、全体的な力で負けてました。私はこのまま実業団に行っても通用しないと思いました」


「4年間大学で自分の卓球を磨きたかった」

当時、関東の大学女子卓球界では、鈴木李茄トップおとめピンポンズ名古屋/昭和電工マテリアルズ)、庄司有貴(中国電力)、そして安藤みなみ(十六銀行)を擁する専修大学は全国トップクラスの強豪校だった。木村は、専修大学への進学を決めた。

大学の卓球部は、それまでの恵まれた環境とは違った。
専修大学は大学卓球界の中では設備も部員数も相当充実しているほうだが、少なくとも入部したときの木村には、不安に思えた。


「ここで4年間どうやっていこうっていう不安」

その練習場に、安藤みなみがいた。
木村が入学したとき、安藤は4年。
大学3・4年と2年連続で全日本学生選手権女子シングルス・ダブルス2冠を勝ち取る安藤は、日本学生界に敵なしの状態だった。


写真:現在は実業団・十六銀行でエースとして活躍する安藤みなみ/撮影:ラリーズ編集部

自分を作る

木村には、安藤一人だけ集中力の質が違って見えた。
「無駄なボールが一本もない。練習に入り込んでいて、人数も少ないから、安藤さんが練習に入ると、“あっ”て、周りも雰囲気が変わるんです」


写真:「安藤さんがいると練習場の雰囲気が変わる」/撮影:田口沙織

“自分を作る”と、木村はその感触を表現する。
「中高は、すごい充実した環境で、オリンピック選手がいて、何でも拾うことができた環境だったのに、逆にその環境に慣れてしまい、私は自分のものにすることができなかった。その経験があったからこそ、自分を作る大切さに大学で気づくことができた」


「気づけたのは中・高の環境が充実していたおかげ」

安藤みなみは、入部当時の木村をこう振り返る。

「木村はもちろん強かったので、とても風格があるなって思ってました。おそらく大学の中にそんなに知り合いがいなかったせいか、初めは静かで大人しいなって印象でした」。

鮮やかなオンオフの切り替え

練習場以外のプライベートでも、木村は安藤に深く感謝する。
「どこ行くにも全部誘ってくれて、すごく嬉しかったです。入部してすぐ、大事な関東新人戦も私は4回戦で負けて。この先どうなるのかなって不安なときからずっと声を掛けてくれて。遊びに行ったりドライブいったり、一緒に過ごしてくれました」

安藤もまた、木村香純を含む仲良し数人で過ごした時間が「私の一番の大学生活の思い出」と振り返る。


写真:安藤みなみ(十六銀行)/撮影:ハヤシマコ

「後輩とこんなに仲良くなったことがなかったので、とても嬉しかったです。何か差し入れしたりすると、すごい嬉しそうにニヤニヤ喜んでくれたりするのも可愛い」。


「安藤さんが引っ張ってくれた」

仲良しのその安藤が、いったん練習に入ると研ぎ澄まされた集中力で練習場の雰囲気を変える。オンとオフを切り替える姿勢も鮮やかだった。
「“かっ”と入り込むんです。やっとけばいいというのが全然なくて、この技術は絶対に身につけたいからやりこむっていう感じ」

安藤がいたから気づいた。安藤がいたから頑張れた。
そう振り返る木村にとって、身長150cmちょっとの安藤みなみの小さな背中は、とても大きなものだった。


写真:安藤みなみ/撮影:ラリーズ編集部

スウェーデン、サフィールOPでの経験

木村が成長の理由の2つ目に挙げるのが、大学1年の冬、2019年2月にスウェーデンで行われたサフィールオープン、U-21での優勝だ。
日本からは毎年、関東学生卓球連盟1部に所属する選手らを中心に参加している。

「優勝したことも自信になったんですけど、それより海外の選手を色々見て、こんなのもありなんだって、考えが広がった」

決して大きな大会ではないが、そこで感じた「これもあり」の感覚は、木村が殻を破る大きな契機となる。


写真:「あそこから変わったって感じです」/撮影:田口沙織

グニャグニャ、ポン

「変な言い方ですけど、外国選手の汚さが身についたというか。日本人ってスイングきれいにしようって思うじゃないですか。私も意外にボールきれいって言われる方なので」


写真:お手本のようなスイングで凡ミスの少ない木村香純/撮影:ラリーズ編集部

「外国の選手って、下がってボールの軌道もぐにゃん、みたいな感じじゃないですか。でも、どれだけ変なボール打っても、どれだけきれいなボール打っても、取ったら同じ1点。サーブも変にグニャグニャしてからポンって出して相手がミスしたら1点。だったら、自分の好きなようなスイングで、相手の嫌がる質でやったほうが勝てるんじゃないか」

そう思うと、ふっと気持ちが楽になった。


「サフィールは大きなきっかけ」

きれいに決めたかった

「きれいに決めよう」という思想から解放された瞬間だった。
「そうしなきゃいけないという考えがどっかにあって。そこに自分が閉じこもってたのかもしれない。一気に吹っ切れました」


写真:「スイングが汚くなったのかはわからないんですけど(笑)」/撮影:田口沙織

自ら関東の大学進学を選び、それでも結果が出ない苦しさ。
同世代や下の世代が次々と台頭してくる、もどかしさ。
自分の“きれいな”卓球は、知らぬ間に木村自身を縛るものになっていた。


「あれから結構いい感じです」

「こんなにリラックスできれば優勝できるんだ」
遠くスウェーデンの小さな大会で掴んだ不思議な感覚を、今も木村ははっきりと覚えている。

「そろそろ爆発してください笑」

「あとは、あれもあるかな」
何かを思い出した木村は、悪戯っぽい、猫のような犬のようなモコモコの笑顔になる。


写真:「スイッチ入りました」/撮影:田口沙織

「試合結果を高校の先生に報告してるんですけど、大学2年の6月、関東学生でダメだったときに、先生から返って来たLINEが」

そろそろ爆発してください笑

恩師は今もずっと、気にしてくれている。それが妙に嬉しかった。

わかりました、そろそろ爆発します

そう短く返した木村が、爆発予告(?)通り、全日学選抜で優勝、悲願のシングルス初タイトルを掴んだのは、それから5ヶ月後のことだった。


「あのLINEのおかげでもあります笑」

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