取材・文:川嶋弘文(ラリーズ編集部)
各種目の予選が終わり、本戦トーナメントへの出場者が出揃った3月12日、主催者であるITTFとポーランド卓球協会は大会中止という苦渋の決断を下した。世界で流行している新型コロナウイルスの影響を鑑みた対応だ。
スウェーデンリーグで活躍中の英田理志(エスロブ/愛媛県競技力向上対策本部)も、予選突破を決めていた直後の大会中止に戸惑ったという。
その時、現地では何が起きていたのか。パンデミックの影響で緊急帰国中の英田にオンラインでインタビューを行った。
>>日本勢予選通過も大会中止 英田「残念だが仕方ない」<卓球・ポーランドオープン>
試合中止と国境閉鎖のダブルパンチ
写真:英田理志/提供:ittfworld
ーーポーランドオープンへのエントリーのきっかけは?
英田理志(以下、英田):スウェーデンを拠点にしていますので、ヨーロッパ開催のワールドツアーには出来るだけ参加しています。去年の10月にポーランドオープンがあって、今年は3月にあったので出ました。
ーー予選突破後の大会中止。現地の状況は?
英田:同じカットマンのギオニス選手(ギリシャ)との対戦を楽しみにしていたので、本当に残念。ですが、感染を広げないためにも仕方ないのかなと思います。
主催者から情報を見といてくれと、張り紙が2度出されました。
1度目は、大会の事については政府の指示に従うので状況をよくみといてくださいという感じ。2度目は夜の10時ぐらいで中止が決まりました。さすがに中止にはならないだろうと思ってたんですけどね。
ーーその後すぐに帰国されましたよね?
英田:もうみんなすぐに自分の国に帰っていきました。その二日後くらいにポーランドも国境閉鎖するという流れでしたので。
僕もすぐにスウェーデンに帰って。結構ホームシックだったんで、このうちに日本に帰ろうと思いました。ヨーロッパに閉じ込められるとやばいなと。ドイツとかイタリアとかもコロナ感染が増えて国境閉鎖になっていましたからね。
ーーチームにはどう伝えたのですか?
英田:マネージャーには「国境閉鎖になって日本帰れなかったら、来シーズンでの日本での契約の話とかできないから、そうしたらかなりまずい。だから帰らせて欲しい」という感じで伝えましたね。ちょうどそこから2週間くらい試合なかったんで許可が出て、一人で無事帰ってきた。もう翌日にはチケットとって帰ったんですけど、ヒヤヒヤしました。
その日の正午にデンマークが国境閉鎖になるって言われて、いつもコペンハーゲン空港から出てるんで、ヤバいヤバいとなった。13時の便だったんで、正午に国境閉鎖されたら飛行機が出るのか分からなかった。でもとりあえず午前中にコペンハーゲン空港まで行って、出国する分には大丈夫だったんですけど。
ーー閉鎖直前のコペンハーゲン空港から帰ってきたと?
英田:そうですね。掲示板見てドキドキしてましたね。キャンセルになってる便が多かったんで、自分の便がキャンセルになったらコペンハーゲンに残されるのかと。スウェーデンにも戻れなくなったらいよいよヤバいな〜と。とにかく帰ることができて良かったです。
プロ卓球選手、パンデミックによる影響は?
写真:英田理志(2018年)/撮影:伊藤圭
ーー今はどんな生活リズムですか?
英田:自宅で筋トレして、料理とか作って昨日とかカレー5時間くらい煮込んでました。過去最高のカレーができましたよ(笑)。
ーー新型コロナの影響で大会が無くなり、卓球へのモチベーションの変化は?
英田:みんな試合が無いこの状況がチャンスだとプラスに捉えるしかありません。
過去に一度日本リーグで1部で6勝1敗のいい成績が出せた時があるんですけど、その時はケガから復帰した時で、全然練習が出来ていなかったのですがすごく調子がよかった。
練習ができる環境にあったら卓球の練習をどんどんするんですけど、球を触れない状況だから、逆にいい機会というか。卓球以外の勉強をしたり、動画をたくさん見たり、本を読んだり、料理もそうです。
今その時間が凄い増えてるので、この機会を大切にして、次の試合にしっかり備えたいなと思ってます。
ーー今後の見通しは?
英田:スウェーデンのマネージャーの方からは来シーズンのサインをしたいというオファーを頂いたのですが、まだ迷っていて未定です。
今年度の日本での所属はまた愛媛の「愛媛県競技力向上対策本部」でやらせて頂き、国体とか全日本社会人とか全日本選手権に向けて頑張っていきます。
(北欧挑戦3年目で掴んだ「リーグ個人1位」の理由 に続く)