1年でWR269上昇 "世界で一番伸びた卓球選手"神巧也、飛躍の裏側 | 卓球メディア|Rallys(ラリーズ)

写真:神巧也(T.T彩たま)/撮影:保田敬介

卓球×インタビュー 1年でWR269上昇 “世界で一番伸びた卓球選手”神巧也、飛躍の裏側

2020.04.01

この記事を書いた人
Rallys副編集長。学生卓球を愛し、主にYouTubeでの企画を担当。京都大学卓球部OB。戦型:右シェーク裏裏

“卓球界の熱男”こと神巧也(T.T彩たま)は、昨シーズンの卓球界で飛ぶ鳥を落とす勢いを見せた。

2019年1月末にプロ転向を果たすと、スロベニアOPベスト4、ブルガリアOPベスト8など好調を維持し、2019年3月に314位だった世界ランキングは1年経った今や日本人5番手の45位につけた

TリーグでもキャプテンとしてT.T彩たまを牽引し、シングルスで20マッチ出場13勝をあげ、リーグトップの成績を叩き出した

チームを率いる坂本竜介監督もシーズン最終戦後のセレモニーで「T.T彩たまは“ジンタク”のチーム」と八面六臂の働きを絶賛した。

そこで今回は神を直撃し、急成長と飛躍の1年間を振り返ってもらった。

>>吠える男ジンタク Tリーグ参戦!「僕はエリートじゃない」

「ただただ次に向かってるだけ」過酷な連戦の日々


写真:神巧也(T.T彩たま)/撮影:保田敬介

27歳で訪れた突然とも思える飛躍について、意外にも当の本人は「結果は残せたんですけど、皆さんが思ってるような成長具合を感じてはいないのが正直なところです」と冷静に振り返った。

「勝って嬉しい時も負けてキツイ時も、すぐ次の試合が始まるので余韻に浸ることもない。試合に対してはいつもベストを尽くしたいと思ってやるので、それを繰り返してただけです。なので、自分としては成果を出した喜びよりはただただ次に向かってるだけって感じでしたね」。

それもそのはずだ。2019年シーズン、神はTリーグで単複合わせて26試合出場した他に、スウェーデンリーグにも参戦しシングルス11勝1敗と獅子奮迅の活躍を見せた。さらには世界ランキングをあげるべくヨーロッパやアジアなど10ヵ国以上で国際大会にも出場し続けた。9月には約1か月間海外を転戦するなど過酷な日々を送ることもあった

坂本監督「世界的に見ても一番伸びた選手」


写真:神巧也(T.T彩たま)/撮影:保田敬介

本人の手応えのなさとは裏腹に、T.T彩たまの坂本監督は「林昀儒と並んでこの1年、世界で一番伸びた選手だろう」と高く評価する。

このように劇的とも言える躍進を遂げた選手には転機となった試合があることが多い。何かきっかけとなった試合があるのかと尋ねてみたが、「マイナス面やできなかったことばかりにフォーカスしちゃって、やってる時はこの試合が手応えあったとかは感じなかったです」と苦笑いで答えた。

ただ「結果ありきで逆算してみると…」と前置きしつつ、「今思うと節目だったのは、5月のスロベニアオープンでベスト4までいったときですかね」とキーとなった大会を挙げた。


写真:スロベニアオープンでプレーする神巧也/提供:ittfworld

2019年5月に行われたITTFチャレンジ・スロベニアオープンで予選から勝ち上がった神は、パナギオティス・ジオニス(ギリシャ)、ルーウェン・フィルス(ドイツ)と世界トップクラスのカットマンに勝利し、4強入りを果たした。

「ベスト4まで勝ち進めたから、本当は出る予定なかった次のジャパンオープンに滑り込みでエントリーさせてもらった。そこで中国の劉丁碩(リュウディンシュオ)に勝って予選通過して、カルデラノにフルゲームまでいった。そこからナショナルチームでも大会に派遣してもらえることが増えて、ランキングも上がっていった」。


写真:Tリーグでプレーする神巧也/撮影:ラリーズ編集部

またスロベニアオープンの結果は、全中国選手権優勝の侯英超(ホウエイチョウ・木下マイスター東京)や世界選手権準優勝の朱世赫(チュセヒョク・琉球アスティーダ)ら実力あるカットマンが揃うTリーグでの起用にも好影響を与えていた。

「スロベニアオープンでカットマン2人に勝てて、琉球との開幕戦でも朱世赫(チュセヒョク)に勝てて、カット打ちの部分では神は使えるという印象を残せた。そうすることでTリーグの起用も増えていった」。獲得ポイントの低い格付けのチャレンジ大会での積み重ねは着実に世界ランキングに反映されていった。

夢を背負い戦い続けるジンタク


写真:神巧也(T.T彩たま)/撮影:保田敬介

この一年、神をここまで駆り立てたのは「世界卓球の代表になる」という幼い頃からの夢だ。

2019年12月末、集大成として臨んだ世界選手権代表選考会では、決定戦でゲームカウント3-0からまさかの逆転負けを喫し、涙を飲んだ。「卓球の怖さと裏を返せば自分もチャンスあるというのが垣間見えた試合だった」と振り返ったが、悔やんでも悔やみきれない敗戦となった。


写真:最終選考会では気迫のプレーも一歩及ばず/撮影:ラリーズ編集部

飛躍の2019年、有終の美を飾れなかった神は、更なる躍進の2020年に向けて努力を続けていく。

そんな神を坂本監督はこう評した。「ジンタクは卓球がまだ下手なんですよ。下手なんですけど、誰にも負けたくないって根性で泥臭く立ち向かってる。俺ができるんだったら他の人もできるよという励ましになると本気で思ってる。みんなの夢を背負った卓球してるんですよね」。

「得点源の一つ」と語るファンの声援を背に受け、自らの、そして卓球ファンの夢を背負い戦い続けるジンタクから目が離せない。

1年前の神巧也インタビュー動画はこちら

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