卓球女子ナショナルチームの石川佳純(全農)は、1月末に国際卓球連盟(ITTF)より発表された最新の世界ランキングで4位と日本女子最高位をキープしている。
ロンドン、リオに続く五輪出場を目指す石川は、昨年のITTFワールドツアーではドイツオープン(3月)とチェコオープン(8月)での優勝を含む5度の表彰台(ベスト4以上)に輝いたほか、Tリーグでも2018年の勝利数で1位(10月~12月で11勝)など国内外で成績を残し、安定した強さを誇る。
2007年の世界選手権出場以降、日本の女子卓球を10年以上リードする石川佳純は、なぜここまで安定して勝ち続けられるのか?
その要因の一つとして石川の「プロ意識の高さ」が挙げられる。1月29日に所属先の全農で行われた近況報告会で垣間見えたプロフェッショナルな言動から、石川の強さの秘訣を紐解く。
“常に前向き”が常勝に繋がる
写真:石川佳純(全農)/撮影:ラリーズ編集部
石川が全農職員を前に行った報告会では、はじめに2018年を振り返り、「中国のトップスリーの選手に勝つことを目標としていたが、リードした試合もあったもののあともう少しで勝ちきれなかった」と課題を振り返った。しかしその語り口調と表情は明るく、すでに気持ちを切り替えているようだった。続いて2019年の目標として「2019年の一年間のワールドツアーの成績でオリンピックの出場権が決まるため良い時も悪い時も一喜一憂せずに自分の力をしっかり出すことを目標に頑張っていきたいと思っている」と述べ、自身3度目となる2020年のオリンピックを見据えていることを強調した。
また、現在の心境について「今まで積み重ねてきた自分の良いところは残して変えるところは変えて、成長を積み重ねていきたい。(オリンピックに出場するために)しっかり努力して最高のプレーをできる準備が大切だと思う。あとはやっぱり楽しむことが大事だと思っている」と語っており「成長」や「楽しむ」といった前向きなフレーズを何度も口にしているのが印象的だった。石川は全日本選手権が終わって間もないがもう次の目標へ向けて前進し始めているのだ。
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圧倒的な試合数がプロフェッショナルの証
写真:石川佳純(全農)/撮影:ラリーズ編集部
石川がプロフェッショナルであることを示す数字の一つとして、その「試合数の多さ」が挙げられる。
2018年に石川が参戦した試合を振り返ると 1月の全日本選手権を皮切りに、3月のカタールオープンから12月のグランドファイナルまでITTFワールドツアー12大会に出場。その合間にアジアカップ、世界選手権、チームワールドカップといった世界最高峰の国際大会に加え、10月からはじまったTリーグ(所属チーム:木下アビエル神奈川)では単複15試合に出場した。更に実業団の日本リーグ(所属チーム:日立化成)でも前後期とプレーオフで単複6試合に出場するなど、年間を通じて卓球トップアスリートの中で圧倒的な試合数の多さを見せた。
また大会の合間にもインタビューを受けたり、テレビ番組やCMへ出演したりとハードスケジュールな2018年だったことが分かる。今回の報告会も1月の全日本選手権が終了してからおよそ一週間後のことだったが疲れを一切見せないプロの振る舞いを見せた。大会後は連休も取ったとのことだったが、このようなスケジュールをこなすのは並大抵のことではない。また、石川は昨年12月に行われたTリーグの日本ペイントマレッツとの試合後「日本で初めてのプロリーグ。タイトなスケジュールですが、しっかり準備をして臨むことが、見に来ていただいたお客さんに対する最低限の責任です」とも答えており、ファンやスポンサーからの期待を正面から受け止め、それに応え続ける強さを持ち合わせていることが見て取れる。
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プレー以外に垣間見えたプロの一面とは?
写真:石川佳純(全農)/撮影:ラリーズ編集部
報告会の中で他にも石川のプロ意識の高さを感じられる瞬間があった。まず、非常に謙虚であることだ。報道陣による囲み取材では、多くの全農職員の前での対談を終えてみてどうだったかという質問に対し、「たくさんの方に来ていただいて本当にありがたい」と述べ、年間を通じた選手活動へのサポートや応援に対し、ストレートに感謝を意を表した。アスリートとして試合で結果を残すことは大切だが、支えている関係者への感謝を忘れないというのはどの選手でもできることではない。
また、全農職員からの質問コーナーでは、フリック(台上のボールを払う技術)のコツを聞かれた際に「ちょうど今朝フォアフリックを練習してきたところです」と素振りを交えて丁寧に教えたり、遠くの質問者に自らマイク渡しに行ったりと非常にフレンドリーに接する姿も印象的であった。このような関係者へと向き合う姿勢を見ていると、石川が多くのスポンサーからサポートを受けられているのもうなずける。
チームメイトも分析の対象!?
写真:石川佳純(全農)/撮影:ラリーズ編集部
続いてライバル選手への分析力である。報道陣から全日本選手権で活躍した木原美悠(JOCエリートアカデミー)について質問されると、「勢いもあるが、冷静なプレーもできる選手。一度Tリーグでもダブルスを組んだことがあるが決定打も良いボールを打つので、これからもっともっと伸びると思う。最年少で決勝へ進出したことをニュースで知ったが、自分以来ということもあってとても嬉しい気持ちだった」と答えた。対戦直後の質問では無かったがここまで即答できるということは、日頃から各選手を見て、その特長や弱点を瞬時に分析していることが見て取れる。昨年の世界卓球(団体)ではキャプテンを務めていたこともあり、対戦相手やチームメイトの特長や弱点を見ながらアドバイスをしていたという点からもその洞察力の高さが伺える。石川が競った場面でも落ち着いて対処し、安定した結果を残せるのも地道なライバル研究の積み重ねによるものなのかもしれない。
上述の通り、石川の高いプロ意識は、プレーだけでなく卓球への向き合い方や関係者への接し方にも表れていた。そして、この姿勢は石川の後を追う若手選手のお手本にもなるだろう。日本を牽引する選手の裏側には並々ならぬ努力とプロ意識がある。そのような目線で卓球を見たり、プレーしたりすると今までとは違った景色が見られるかもしれない。2019年、さらなる成長を目指す石川の活躍を今後も追っていきたい。