卓球×インタビュー 【Real Voice・前編】10年の武者修行を経て。森薗政崇が語る「ドイツで戦う難しさ」
2017.11.09
トップ写真・取材・文:赤羽ひな(ラリーズ編集部)
中学1年からドイツでの武者修行を始め、今年でドイツ生活10年目となる森薗政崇。
現在はブンデスリーガ1部のグリューンヴェッターズバッハに所属しており、今まさにシーズンの真っ最中だ。実は森薗はこの10年間、365日のうち約半分をドイツで過ごしている。13歳にして単身でドイツに渡り、卓球だけでなく自力で生き抜く術を習得していったのだった。
そんな彼は、一体ドイツでどのような生活を送っているのか。
ブンデスリーガ4試合目を終えた直後の森薗に、異国の地での私生活について聞いた。
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——今日の試合、お疲れさまでした。
森薗政崇(以下森薗):ありがとうございます。今日の僕の試合は勝ったけど、最後のセットで僕が簡単にミスしちゃった場面があって。卓球は一本で流れがガラッと変わってしまうスポーツだから、そこが良くなかったって反省しています。でもチームも勝てて良かったです。
——ブンデスリーガのチームに日本人はいないけど、コミュニケーションはどうですか?
森薗:英語ですね。僕は今年でドイツ10年目なんですけど、ドイツ語がまったくできないんですよ。ここはドイツ語が母国語だけど、僕が練習してるところにはヨーロッパ各国から選手が集まっていて、やっぱりみんなが使う言葉が英語なんです。だから英語はそれなりに喋れるようになりましたね。だからベンチでのコミュニケーションはすべて英語でやっています。
——ドイツ10年目ということで、最初にこっちに来て大変だったことは?
森薗:最初にドイツ来たときに辛かったのが、コンビニがないこと。とにかくそれがキツかった(笑)日本ってすごい国だなって思ったのが、温かいものが食べれるお店が24時間開いてること。しかもコンビニがどこにでもあるじゃないですか。東京だったら100メートル感覚で。それが本当に便利だなぁって、ドイツに来て気づきました。
あと、ドイツは日曜日には絶対休まなきゃいけないから、スーパーも閉まるんです。だから試合がない週末は土曜日に買いだめをしてそれを日曜日に調理する、みたいな生活を送っています。
——スーパーもコンビニも全部やってない?
森薗:日本の感覚ではありえないけどそうなんです。最初はそんなこと全然知らなくて、日曜日に買いだめもしてなくて、「あーお腹減ったー」と思って食べ物買いに行ったら、どこも空いてなくて。あとで聞いたら、「日曜日は全部閉まってるよ」と。そうなったらその日は何も食べられなくて、結局水だけで過ごしました。その中学1年生のときのことはめちゃくちゃ思い出に残ってますね。
——意外と日常的なことに苦戦した、と。
森薗:あとは電車移動も相当苦戦しました。中3からブンデスリーガに参戦して、最初は4部から始めたんですけど、アウェーの試合時には自力で電車か車で移動するんです。そのときの電車での移動が大変で。
日本では電車がほとんど遅れないじゃないですか。でもドイツは違って、こっちはバスみたいな感覚で10分遅れるのは当たり前。最初はドイツ語の文字も読めないし、アナウンスもわかんなかったから、間違えて違う電車に乗って全く違う場所に行っちゃったこともあって。電車とコンビニの2つは、ヨーロッパの選手が日本に来ても「本当にすごい!ありえないよ!」って言ってますね。
今は10年いるのでかなり慣れてきたし、何にも困ることはないですね。携帯もSIMカード入れられるようになりましたし。強いて言うなら、休みの日にすることがないことくらいですかね(笑)
——ドイツでのプライベートは?
森薗:本当にすることがないんですよね。日本だったら友達もいっぱいいるし、休みの日に誰か誘って美味しいもん食いに行くとか、ちょっと飲みに行くとかできるんですけど。
あと、日本は温泉があるじゃないですか。だから温泉行ったり、マッサージに行ったりして。日本だったら疲れてても色んな方法でケアができるんですけど、こっちに温泉はないし、マッサージも基本的にないんです。だから休みの日は午前中にちょっと長めの練習をして、ストレッチをめちゃくちゃ長くやってます、1時間くらい。
——入念ですね。
森薗:マッサージ代わりに1時間くらいみんなでおしゃべりしながらストレッチするのが恒例です。そのあとは、時間が異常にあるから「何食いたい?」とか言い合いながら買い物に行ったりして。大量に材料買って、めっちゃ豪勢なものを作ったりするのが僕らの週末ですかね。
——ちなみに得意料理は?
森薗:カレーですかね。僕の母が作るカレーがとにかく美味くて。スパイスから作るんですよ。だからそれを真似して、僕もスパイスからカレー作ってみたりして。でもドイツに売ってる肉ってみんな分厚いんですよ。「なんであの薄い豚バラ肉がないの?」って思います。だから今、一緒に住んでるみんなでスライサー買っちゃおうかなって話をしてたりして。120ユーロくらいで、どんな肉もめっちゃ良い感じに薄くなるらしいんですよ。そしたら週末とかもっとすごいやつ作れるんじゃないかなって。
——卓球だけじゃなく料理もできる男ですね(笑)
森薗:ブンデスリーガの1部以外の選手って、壊滅的にお金がないんですよ。2部とか3部の選手はまだお給料も微々たるものだし、そのお給料で家賃払ったり交通費にしたり、自分のチャンスを掴むためのワールドツアーの資金にすると、手元に残るのってほとんどない。実際、僕も中高生の時はずっと食費を考えていた時期があって、そのときに自炊を覚えました。今僕らが住んでる家には立派なキッチンがあって、そこでみんなで自炊したりしてっていう生活をしています。
——今は住んでるのはどんな家?
森薗:それが面白いんですよ。僕らは今フリッケンハオゼンっていう地域で、邱建新さんっていう水谷さんのベンチコーチを2年くらいやってた人のもとで練習してるんですけど。
邱さんが体育館の近くに3LDKの部屋を一つ買って、そこで練習する選手たちに貸し与えているんです。僕らはそれを寮として、そこに家賃を払って住んでるんです。
——コーチが自前で寮を建てたんですか?
森薗:そうなんですよ。めっちゃ大きい家で、去年は最大で6人一緒に住んでたりとか。みんなそれぞれ試合の日程も時間も違うから、色んな人が入れ替わりで2人から6人くらいで住んでます。
やっぱり体育館の近くだから便利だし、もう我が物顔で使ってます(笑)
——どんな人と一緒に住んでるんですか?
森薗:基本的に日本人は日本人同士で固まってシェアハウスしてる感じです。今だったら僕と、ケーニヒスホーフェンってチームの及川瑞基と、あとはフリッケンハウゼン2部チームの田添響と、あとはドイツ人が一人住んでいます。他にはたまにゲストで来た人が一緒に入って来る感じで住んでいます。
——そんなメンバーでの豪勢な自炊、賑やかそうですね!
森薗:こんな感じで僕らはドイツで面白い暮らし方をしていて、でも応援してくれている方々でそれを知っている人は意外と少ないんじゃないかなって。だからこうやって、少しでも僕たちの生活について知ってもらえたら嬉しいですね。
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