太田輝(中央大4年)は、愛工大名電中高と強豪校の卓球部に所属しながら、運動障害「イップス」に苦しみ、得意のフォアハンドが思うように振れなくなった。
「卓球を辞めれば楽になる」。何度もそう思った。
しかし、高校卒業後も関東の強豪・中央大学で卓球を続けることを決めた。イップスと向き合い、再び我慢の4年間となるはずだった。しかし、入学後転機が訪れた。
【太田輝(おおた ひかる)】長野県出身。愛工大名電中高を経て現在中央大学4年生。中学時代にフォアハンドがイップスとなったが、バックハンドを主戦として戦い、大学でも卓球を続けた。2021年の全日学ではダブルスでベスト16入りを果たしている。
>>「何回も卓球を辞めようと思った」愛工大名電で“魔病”イップスに悩まされた男<太田輝 前編>
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勝ちたいなと思ったことで考え方が変わった
写真:太田輝(中央大4年)/撮影:ラリーズ編集部
全日学予選を通るのにシングルスは無理だと思っていたので、絶対ダブルス通ろうと思って、じゃあダブルスどうやって勝とうかなと考えました。
写真:吉田俊暢(中央大4年)/撮影:ラリーズ編集部
でも、フォアにツッツかれたときにツッツキ返したらもったいない。「じゃあ別にバックで打てばいいや」と思って、そこから結構考え方が柔軟になりました。
勝ちたいなと思ったことで、考え方が変わるきっかけになりました。
「勝ちたいと思ったのもめちゃめちゃ久々でした(笑)」
「お前の卓球、他の人と全然違うから見てて楽しいわ」
卓球がそれなりに強かったから中高入れてもらって、勝つためにやってきた流れで大学にも行ってるので、負け続けるよりは勝つ方が良いですよね。
写真:太田輝・吉田俊暢ペア(中央大)/撮影:ラリーズ編集部
そうやって言ってもらえるのはすごい嬉しいですし、だったらいっぱい試合したいじゃないですか。それなら勝てた方がいいよねという感じで、勝ちたい気持ちが強くなりましたね。
写真:太田輝(中央大)/撮影:ラリーズ編集部
でも、中学生、高校生時代は視野が狭くなっていたので、試合で勝っても楽しくなかったんですよ、正直。フォアが上手くいかないボールがあると試合に勝っても楽しくないし負けたらもちろん楽しくなかったです。
卓球を本当に楽しめるようになったのは大学からなので。フォアハンドのしがらみから解放されてからは、勝つために自分の持っているものを出そうと。1つがダメでも他のができればOK。今日はここは調子悪いけど他が入っていれば別にいい。そういう感じで、「ラッキーでも勝てばいいじゃん」と。大学入ってから考え方が柔らかくなりました。
全日学ではダブルスでベスト16まで勝ち上がった
卓球を嫌いになっちゃうのが一番切ない
どうやったらよくなるかはわからないので、正解はないです。でも、もう少し練習の仕方も変えればよかったなとも思いますし、もっと早く考え方を変えて柔軟にいろんなことを考えられてたら、もっと早くから卓球を楽しめていたんじゃないかなと思います。
また、頑固で天邪鬼になっていたので、本当に今枝先生(愛工大名電高校監督)や真田先生(愛工大名電中学監督)に今でも本当に申し訳ないと思っています。もう少し色んな視点で見られればよかったなと今でも思いますね。
写真:太田輝(中央大)/撮影:ラリーズ編集部
ただ、一個視点を変えて、別に卓球をやらなくても死ぬことはないし、他にやりたいことを見つければ、そっちに集中する事もできます。別に社会人になって、仕事をしながらでも全然卓球はできますし、楽しくやる方法もあるよということを伝えたいです。
それが卓球することじゃなくて、人に教えることだったり、試合を見ることだったりでも全然いいと思います。
前のめりになりすぎて卓球を嫌いになっちゃうのが一番切ないので、一生懸命やってきたことだから楽しく最後まで卓球を好きでいられるようにするには、どうしたらいいかを考えて欲しいなとは思います。
取材後には中陣からのバックドライブを指導してもらいました。詳細は動画から
全日学の試合後には「総じて楽しく試合ができた」と笑顔で振り返っていた。同期の吉田を含めた中央大学での出会いが、太田の卓球人生に光をもたらした。
「卒業後も全日本社会人出場などを目指して卓球を続ける予定です」。
卓球を楽しむ。その純粋な気持ちを思い出した太田の卓球人生はまだまだ始まったばかりだ。