卓球界での文武両道を極めたと言っても過言ではない男がいる。
京都大学卓球部に所属する多田浩嗣(ただこうじ)だ。
小学生時代は全日本選手権カブの部、ホープスの部ではベスト8とランク入り。中学からは大阪一の進学校、大阪星光学院中に進学し、カデットでもベスト16に入った。高校ではインターハイ男子シングルスベスト32と、その年出場した関西勢の男子選手の中で一番の勝ち上がりを見せた。
写真:全日本選手権カブの部でランク入りした多田浩嗣/提供:本人
名指導者・作馬六郎氏の指導を王子クラブで受けた多田は、高いレベルで卓球と勉学を両立するための考えを身に着けている。大学院入試の勉強の合間を縫ってインタビューに答えてくれた多田に、文武両道の秘訣を聞いた。
【多田浩嗣(ただ こうじ)】大阪府出身。左シェーク前陣速攻型。育徳クラブで卓球を始め、小学6年生から王子卓球センターでプレー。大阪一の進学校である大阪星光学院中高に通いながらも、王子サーブを武器に全国で活躍。全国高校選抜2部シングルス優勝、2016年インターハイ男子シングルスベスト32の実績を誇る。現在は京都大学卓球部に所属。物理工学科4年生。
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「勉強もしっかりしとけよ」作馬さんの教えで進学校へ
写真:多田浩嗣(京都大学)/撮影:ラリーズ編集部
そこが育徳クラブで、小学校6年生で王子クラブに移籍して、そこからは王子卓球センターに通いながら中学高校と過ごしてきました。
写真:全日本選手権ホープスの部での多田浩嗣/提供:本人
卓球強豪校への道もあったと思いますが、中学受験してまで進学校の大阪星光学院中高に進んだ理由は?
特に将来これがやりたいというのはなかったんですけど、やりたいことをやりたいと思ったときにできるようにするためには勉強しとかないといけないと思って、星光に進みました。
写真:多田の恩師である作馬六郎氏/撮影:ラリーズ編集部
強豪校でない進学校でも団体戦で勝つことが目標だった
写真:多田浩嗣(京都大学)/撮影:ラリーズ編集部
団体戦も勝ちたかったのでしっかり学校の練習に行って、学校で部員の相手をしながら自分の練習もして、チームも強くしようと思ってました。
個人だけ勝てれば良いというのはすごい自分勝手で、学校の練習を適当にするようでは友達関係も上手くいかないし、あくまで部活の一員としてチームで勝とうという中で、プラス個人は少し頑張るということを目標にしてました。
結果、団体で大阪府でベスト8に入り、近畿大会に学校として初出場することができました。
「団体って楽しいじゃないですか」
両立にはオンとオフの時間の切り替えは大事
勉強するときは勉強、卓球するときは卓球、としないと両方適当になっちゃうので。
あと卓球はなるべく毎日するようにしてました。
写真:2019年全日学では2勝をあげた多田浩嗣(京都大)/撮影:ラリーズ編集部
なので学校終わって直接王子卓球センターに行って、サーブ練習だけして帰るなど、毎日30分でも1時間でも良いのでやるのは意識していました。
写真:多田浩嗣(京都大学)が得意とする王子サーブ/撮影:ラリーズ編集部
両立のコツは「とにかく試合をする」
写真:多田浩嗣(京都大学)/撮影:ラリーズ編集部
進学校だとどうしてもレベルが違う相手と練習することになります。そういうときでも、相手の得意なところと練習すれば、自分の練習にはなるので。
写真:多田浩嗣(京都大学)/撮影:ラリーズ編集部
そうやって自分の練習だと思ってやれば2倍練習できて、しかも相手の得意な部分と練習ができる。意識すれば練習量は少なくても最大限練習できると思ってやっていました。
サーブ練習をして、それを試合の中で試して、上手くいかなかったら試合の中で直していく。課題練習よりも試合をして、実戦に近い形で調整して自分のものにしていく。
写真:全日本選手権ホープスの部での多田浩嗣/提供:本人
それも課題練習でなく試合の中で実際にやっていきながら、とにかくサーブ、3球目攻撃の精度を上げることに特化した練習をしてました。
これが短い練習時間で勝つポイントですかね。
それは意識して、相手が嫌がるプレーを目指してやっています。
写真:2019年全日学での作馬氏と多田浩嗣(京都大)/撮影:ラリーズ編集部
「とにかく試合をする」「ラリーは諦めてサーブ・3球目攻撃の精度を上げる」「相手が嫌がるプレーを目指す」。多田の思考法には、短い練習時間でもいかにして勝つかが詰まっていた。
考え方だけでなく、用具も“いかにして勝つか”という観点から多田は選択している。
インタビュー後編では、“文武両道を極める男”多田の用具のこだわり、大学生活での卓球の進化、そして今後の目標に迫る。
(インタビュー後編 「もう一度全国でランク入りしたい」京都大・多田、格上選手に勝つための思考法 に続く)