取材・文:古山貴大
「楽しそう」という純粋な想いからスタートした田添響(Tリーグ・木下マイスター東京)の卓球人生。インタビュー前半では、ドイツブンデスリーガでの躍進やインカレMVPなど活躍の礎を築いた過去を紐解いた。
後編では、Tリーグに参戦した2018年を振り返るとともに、兄・田添健汰(木下マイスター東京)との仲などプライベートについても掘り下げ、田添響の素顔に迫る。
「水谷さんに応援してもらえる」圧巻のTリーグ
――昨年、Tリーグが開幕しました。参戦しようと思ったきっかけは何だったのでしょうか。
木下グループ総監督の邱(建新)監督に誘っていただいたことがきっかけです。2017年にドイツにいたとき、練習を見て頂いてたんです。
そのとき監督が次の年から日本に来ることが決まり、「一緒に入る?」と誘ってくれて。「お願いします」と言って、参戦が決まりました。
写真:田添響/撮影:ラリーズ編集部
――実際にTリーグに参戦してみてどうでしたか?
とにかくレベルが高かったです。出場している選手は全員が強くて、かつ会場の雰囲気もすごい。
自分が試合している時にベンチを見たら、水谷(隼)さんとか大島(祐哉)さんが応援してくれている。「こんな人たちに応援されていいのかな」と思うこともありました(笑)。最初のうちは、「ここでやっていけるのかな」と少し不安にもなったり。
でも、木下マイスター東京の選手は本当にいい人ばかりで、振り返ってみるとすごくやりやすかった。
自分自身は2回しか出場していませんが、試合を観ていて勉強になったこともたくさんありました。練習をしているときでも聞けば色々教えてくれるので、技術面でプラスになることも多かったです。
――兄弟でTリーグに参戦したことについて、特別な思いはありましたか?
そこは特になくて、普段通りです。兄とは小中高大とすべて一緒なんですよ。自分が練習したい時に付き合ってくれたり、融通が利いてやりやすい存在です。
――2018年は、インカレ(全日本大学総合卓球選手権大会)でMVPも獲得するなど、飛躍の年でしたね。昨年1年を振り返って、どう感じていますか?
初めての経験ばかりでした。あとは学生最後の年でもあったので、何かしらのタイトルを獲りたいとは思っていました。大学にたくさんお世話になったので、結果で恩返しをしたい想いはありましたね。
――ゲストとして参加頂いたRallys打ち納め会では、書き初めで2019年のキーワードを「挑戦」と書かれていましたね。2019年はどんな1年にしたいですか?
もっと強くなりたいですね。学生の中ではトップの位置でプレーできたけど、社会人になって一段上のレベルを実感しています。
今年の全日本でもチームメイトの大島さんにストレートで負けてしまいました。レベルの高い環境に身を置きながら、追いつけ追い越せで成長していける1年にしたいです。
>>水谷「絶対俺が先に6キロ減らしてやる」 減量したい水谷と増量したい田添響の戦いが勃発
釣りに盆栽・・意外なプライベート
――プライベートな部分もお聞きしたいです。オフの日は何をされていますか?
実は釣りが好きなんです。出身が福岡なんですけど、福岡にいるときは毎週のように父と釣りに行っていました。今でも帰省したときは行きます。東京の釣りスポットにはまだ詳しくないので、良いところをそろそろ見つけたいですね。
あと似合わないとよく言われるんですけど、盆栽も一回やってみたいと思っています。見た目がかっこいいんですよ。時間があるときにたまに調べたりしていて(笑)。
写真:田添響/撮影:ラリーズ編集部
――意外ですね!他にも趣味はありますか?
ゲームはよくやっていますね。「ブロスタ」というゲームを最近やり始めました。バトルゲームなんですけど、最近兄と水谷さんも始めて、一緒にやっています(笑)。
――お兄さんとも遊ぶんですね。
遊ぶことはありますが、性格は真逆なんですよ。卓球で言うと、兄は丁寧な卓球をしますが、自分は思いきりを大切にするタイプ。兄は一つひとつの技術に関しても、とにかく几帳面です。
それが、私生活になると逆転するんです。自分は掃除機とかすぐにかけるし、洗濯物を干すときも向きが揃わないと嫌だったり(笑)。兄はそういう部分をまったく気にしないので、すごく面白いなと思っています。
――対照的ですね!オフの日に、他の選手と卓球についてアツく語るようなことはありますか?
ないですね。おそらく無意識のうちに、オンとオフを切り替えているように思います。それこそ水谷さんなどトップで活躍している人ほど、オンとオフの切り替えはすごい。
「やるときはやる、やらないときはやらない」というようにしないと、続けていけない気もしていて。自分も休むときは、しっかりと休むようにしていますね。
>>【卓球×書き初め2019 #2】田添響(木下マイスター東京・専修大学)が選ぶ今年のキーフレーズ
プロアスリートとして見据える将来
――最後に、ご自身にとって卓球はどういう存在ですか?
生活の一部のような感じですね。小さいときから毎日ずっとやっていますし、自分が卓球を辞めて何かをする、なんてことは考えられない。
社会人になったばかりですが、いい環境で卓球ができることはありがたいこと。学生のときはそんなことは思わなかったですけど、プロとしてお金をもらい始めたことで、より一層思うようになりました。
――プロとして、今後どういう選手になりたいですか?
プロ選手として結果を出すことはもちろんですが、卓球をやっていない人から「卓球って楽しそうだな」「面白そうだな」と思ってくれるような選手になりたいです。自分のプレーを見て卓球を始めてくれたら、とても嬉しいですね。
「強くなりたい」「卓球を楽しんでいたい」というまっすぐな想いのまま、進化を続ける田添響。今春、大学を卒業した田添は、今後プロアスリートとして私たちを魅了してくれるに違いない。