廃部寸前だった札幌大卓球部が道内トップの強豪に返り咲いたワケ | 卓球メディア|Rallys(ラリーズ)

写真:札幌大学卓球部/撮影:ラリーズ編集部

卓球インタビュー 廃部寸前だった札幌大卓球部が道内トップの強豪に返り咲いたワケ

2020.11.26

この記事を書いた人
Rallys副編集長。学生卓球を愛し、主にYouTubeでの企画を担当。京都大学卓球部OB。戦型:右シェーク裏裏

いま、札幌大学卓球部が面白い。

「北海道の歴史を塗り替える」を合言葉に、インカレでは北海道勢唯一の決勝トーナメント3年連続通過(2017年女子、2018、2019年男子)、2019年にはインカレ予選男女アベック優勝を果たした。

道内トップの強さを誇る札幌大学卓球部だが、学生たちのインタビューや練習取材を通して特に感じたのは、チームの雰囲気の良さと学生たちの礼儀正しさだ。

札幌大学卓球部、その秘密に迫った。

丹羽孝希姉の指導も 充実の練習サポート

札幌駅から地下鉄、バスで30分ほど、ゆるやかな丘陵地に札幌大学は位置している。敷地内には自然林があふれ、緑豊かで広大なキャンパスの中央部にある体育館で、卓球部の気持ちの良い挨拶が響いていた。


写真:緑豊かな札幌大学/撮影:ラリーズ編集部

近年の札幌大学好成績の要因の1つは、充実した練習サポートにある。

学生が欲しいと言うのであれば、僕らが練習時間や環境、相手も用意する」。そう語るのはチームを率いる藤倉健太監督だ。北海道の国公立大学でプレーしていた自身のネットワークや、札幌大OBでもある髙橋春雄総監督の人脈を活かし、強くなりたい学生たちには強豪チームとの練習機会も多く与えられる。


写真:札幌大学の練習風景/撮影:ラリーズ編集部

卓球日本代表の佐藤瞳(ミキハウス)を輩出した札幌大谷高や、駒大苫小牧高、北海道科学大学高といった道内トップの強豪高校に加え、実業団のJR北海道と練習を共にすることもある。さらには東京五輪代表の丹羽孝希(スヴェンソン)の姉・美里さんが月に数回指導にあたり、実際に取材前日にも札幌大学の練習に訪れていたという。


写真:札幌大学卓球部女子主将の荻野晶(3年)/撮影:ラリーズ編集部

強豪高校にも練習に行けたり、丹羽さんやOBの方が来てくれたり、それは札幌大卓球部の良さだと思います」。女子主将の荻野晶(3年・駒大苫小牧高出身)も練習サポートの手厚さをチームの特徴として真っ先に挙げる。

低迷の10年間を経て復活の時

現在、札幌大学卓球部では、学生がやりたいだけ練習できるよう最大限支援する体制が整っている。そこには札幌大学の低迷期を知る藤倉監督の思いがあった。


写真:札幌大学の練習風景/撮影:ラリーズ編集部

1967年創部の札幌大学卓球部は、長く北海道内トップの強豪校として名を馳せてきた。しかし「2005年頃から約10年ほど低迷が続いていた」と藤倉監督は明かす。

「もともと特待生制度がないに等しかったので、選手が来なくなって低迷し、強い大学に選手が流れていった」。当時を悔しそうに振り返る。

「北海道の強い選手は、みんな道外に出ていった。それはたぶん大学が悪かったんです。道内の大学に残っても、高校時代の貯金でやるような選手だけで一生懸命練習をやらないし、結局残っても高校生に負けていた」。

2016年、再起の時が訪れる。きっかけは現コーチの三和拓蒼氏含む強豪校出身の3選手の入学だった。


写真:コーチとして指導に当たる三和拓蒼氏/提供:札幌大学

「僕が入る前は本当に廃部寸前みたいな感じだった。でも自分以外に全日本ジュニア出場経験のある2人が進学すると聞いて、近場の大学ということもあったし、この3人なら全国出られそうだなと思って」(三和氏)と、彼らの偶然の進学が転機となった。

「また復活できる」。

かつての強い札幌大学を知る藤倉監督の直感がそう告げていた。

札幌大学の職員だった藤倉監督は、正式に卓球部のコーチに就任した。

力を入れたのは、競技面だけではなく、学業面や生活面のサポート体制だった。

“授業最優先”をモットー 進路決定率100%、留年率0%を維持

藤倉監督は大学側に掛け合い、卓球部員のための様々な制度を整備していった。

前述した競技面における練習サポートはもちろん、全国大会含む遠征時には成績に応じて大学からの補助金支給特待生制度による授業料減免なども卓球部の学生に適応できるように調整した。


写真:練習に励む札幌大学卓球部員/撮影:ラリーズ編集部

2021年度からは従来の大学、OB会からの支援に加え、個人および協賛企業からの卓球部独自の選手応援金制度も発足させる。

「特待生制度はありますが、全員が同じ条件をもちろん受けられるわけではなく、学業や練習に全力で取り組む合間を縫ってアルバイト等で生活費等を自分で支弁している学生もいます。そこで来年から1学年1人を目安に、より思う存分大学生活に打ちこめるように卓球部独自の選手応援金制度を設けます」とその経緯を明かす。


写真:札幌大学の練習風景/撮影:ラリーズ編集部

さらには「部活は来るけど授業は出ない。単位も取らない。そういう感じだった」という状況を打破すべく、“授業最優先”をモットーに掲げ、監督・コーチが授業の出席状況や学業成績をチェックし、本人と定期的に面談を実施。その結果、体制変更後は進路決定率100%、留年率0%を維持している


写真:試合中アドバイスを送る藤倉監督(写真左)/提供:札幌大学

高校の先生が考えるのは、ちゃんと卒業してどこに就職できるのか、しっかり面倒見てもらってどうしてくれるのという部分。そのあたりは僕の力でも変えられる範囲だった」。

そう振り返る指揮官の1つ1つの積み重ねが実り、今や道内屈指の強豪校の座に返り咲いたのだ。

北海道の歴史を塗り替える

札幌大学卓球部は、「北海道から全国へ」「北海道の歴史を塗り替える」を合言葉に日々練習に取り組んでいる。


写真:1年生エースの斉藤怜吏(札幌大学)/撮影:ラリーズ編集部

指揮官からの期待も高い1年生エースの斎藤怜吏(函館大学付属有斗高出身)も「自分が北海道に残って、北海道から全国でも勝てる選手になりたいと思って札大に来ました」と活躍を誓う。

北海道学生の成績更新に挑戦し、歴史を作れることも魅力の1つだと藤倉監督は語る。


写真:挑戦を続けてきた4年生男子 左から佐々木陵、近藤聡度、井手唯人、野呂孝介、本間大輝 野呂は1月の全日本にも出場予定/撮影:ラリーズ編集部

「全日本一般予選である北海道選手権で、 北海道内の大学生が優勝したのは、3、40年前に1人しかいない。なので、男女ともにまずそこを塗り替えたい。また、40年前に1度インカレで北海学園大学がベスト16に入っていますが、それより後は男女ともにない。それも塗り替えたいという思いがあります」。

充実の練習環境と、学業や生活面を幅広くサポートする体制。

そして「北海道学生の歴史を塗り替える」という監督と選手共通の強い気持ち。

確かに、強くなる理由が揃っているのだった。

(第2話 “卓球が強くなる”以上のものを手に入れられる 札幌大卓球部の挑戦 に続く)

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写真:札幌大学メンバー/撮影:ラリーズ編集部

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