2023年5月1日、23年の現役生活引退を表明した、プロ卓球選手の石川佳純。
オリンピックでは3大会に出場し、日本卓球界初のメダル獲得に貢献。世界卓球2017大会では、47年振りに日本に金メダルをもたらすなど、圧倒的な実力と人気で長きに渡り日本卓球界を支えた石川。
写真:石川佳純(全農)/撮影:ラリーズ編集部
そんな石川が23年の現役生活の中で生み出した数々の名勝負の中から、5試合を厳選して紹介する。
石川佳純の魅力が詰まった名試合を、写真と共に振り返っていこう。
このページの目次
世界卓球2009横浜大会 石川佳純 vs 帖雅娜
写真:世界卓球2009横浜大会の石川佳純/写真:YUTAKA/アフロスポーツ
石川佳純の現役生活を振り返る上で、欠かすことのできない試合がこの一戦。
16歳の石川は、世界卓球2009横浜大会に日本代表として初出場。当時世界ランク99位の石川は、女子シングルス2回戦で、世界ランク10位の帖雅娜(ティエヤナ・中国香港)と対戦した。
写真:帖雅娜(ティエヤナ・中国香港)/提供:ittfworld
世界トップ選手の1人であった帖雅娜に主導権を握られ、ゲームカウント0-3、第4ゲームも点数は3-9と、あと2点で敗戦という状況となった石川。
試合を見守る誰もが敗戦を覚悟した中、石川は諦めなかった。
第4ゲームを3-9から追いつきデュースの末に奪うと、なんと3ゲームを連取して大逆転で勝利。
写真:世界卓球2009横浜大会写真:世界卓球2009横浜大会の石川佳純/写真:築田純/アフロスポーツ
世界の大舞台でジャイアントキリングを起こした石川は、世界卓球初出場ながらベスト8入りを果たし、一気に世界へその名を知らしめた。
スコア
〇石川佳純 4-3 帖雅娜(ティエヤナ・中国香港)
8-11/8-11/5-11/12-10/11-9/11-5/11-8
平成22年度全日本選手権 石川佳純 vs 福原愛
続いて紹介する試合は、17歳だった石川が、全日本選手権女子シングルス初優勝を果たす上で最大の山場となった、準決勝での福原愛(ANA・当時)との一戦。
大会当時の福原は、世界ランキング8位。国際大会でも好調を維持し、日本のエースとして全日本でも優勝候補の筆頭であった。
写真:平成22年度全日本選手権での福原愛/写真:築田純/アフロスポーツ
対する石川は、世界卓球2010大会準決勝ではタン・イェソ(韓国)に勝利し、日本のメダル獲得に貢献するなど、17歳ながら日本の次期エースとして期待が持たれていた。
写真:平成22年度全日本選手権での石川佳純/写真:築田純/アフロスポーツ
また福原と石川は、全日本での成績はベスト4が最高となっており、互いに初優勝を狙う者同士という状況でもあったのこの一戦。
安定したラリー戦で主導権を握った石川が、ゲームカウント4-1で勝利。決勝ではベテランの藤井寛子に4-0で勝利し、17歳10か月での全日本選手権優勝を果たした。
高校生での女子シングルス優勝は、佐藤利香(白鵬女子高)以来、22年振り4人目の快挙となった。
写真:平成22年度全日本選手権で初優勝を飾った石川佳純/写真:築田純/アフロスポーツ
当時の日本のエース福原を準決勝で破り、全日本優勝を掴んだこの一戦を、2試合目のベストマッチとして紹介した。
スコア
〇石川佳純 4-1 福原愛
11-7/10-12/11-3/11-4/11-9
世界卓球2014東京大会 石川佳純 vs 李皓晴
続いては、東京で行われた世界卓球2014団体戦での一戦。
エース福原愛を故障で欠きながらも、個の力とチーム力で勝ち上がった日本は、オランダとの激戦を制し準決勝に進出、決勝進出をかけて、香港と対戦した。
写真:李皓晴(リホチン・中国香港)/提供:ittfworld
1番で石垣優香(日本生命・当時)が李皓晴(リホチン・中国香港)の粘りのカット打ちの前に敗れるも、2番で石川が、そして3番で平野早矢香(ミキハウス・当時)が驚異的な逆転劇で勝利し、決勝進出まであと1勝に迫った日本女子。
そして4番では石川が登場、1番で勝利し勢いに乗る李皓晴と対戦した。相手の丁寧なプレーの前に、ゲームカウント1-2とリードを奪われ、後が無くなった石川。
写真:世界卓球2014の石川佳純/写真:アフロ
しかしここから、“世界一美しいフォアハンド”とも称されたフォアドライブと、ミスの無い両ハンドで粘りを見せた石川が、第4ゲームを奪い返す。
最終ゲームも苦しい展開となったが、中盤からラリー戦を支配した石川が11-7で勝利。世界卓球では31年振りとなる、日本の決勝進出を決める値千金の勝利を上げた。
写真:世界卓球2014の石川佳純/写真:アフロスポーツ
東京体育館を熱狂の渦に巻き込んだ、日本卓球界の歴史に残る一戦であった。
スコア
〇石川佳純 3-2 李皓晴(リホチン・中国香港)
11-4/8-11/10-12/11-9/11-7
写真:世界卓球2014女子日本代表/写真:平野敬久/アフロ
世界卓球2018ハルムスタッド大会 石川佳純 vs キムソンイ
続いては世界卓球2018大会での、石川の勝負強さが光った一戦を紹介。女子団体で準決勝に進んだ日本は、韓国と北朝鮮が急遽合同チームを組んだ、「南北合同コリア」との対戦となった。
前例のない異様な状況の中でも、1番で伊藤美誠(スターツ)が勝利し、2番には今大会日本代表キャプテンに任命された石川が登場、リオ五輪では敗れている因縁の相手、キムソンイ(南北合同コリア)と対戦した。
写真:キムソンイ(南北合同コリア・朝鮮民主主義人民共和国)/写真:新華社/アフロ
糸を引くようなカットと、隙あらば強烈なフォアハンドで得点を奪うキムソンイと、安定したカット打ちとスマッシュで得点を重ねた石川の一戦は、お互い2ゲームずつ取り合い勝負は最終ゲームへ。
写真:世界卓球2018の石川佳純/提供:ittfworld
最終ゲームでも一進一退の攻防が続くも、ゲーム終盤で3回エッジボールで得点するなど、運も味方につけたキムソンイがマッチポイントを握り、追い込まれた石川。
しかし3度の相手のエッジボール、2度もマッチポイントを奪われるという絶体絶命の状況でも、諦めることを知らなかった石川は、16-14という死闘の末勝利を上げた。
写真:世界卓球2018の石川佳純/写真:AP/アフロ
日本代表キャプテンとしての意地を日本中、世界中に見せつけたこの試合を、4試合目のベストマッチとして紹介した。
写真:世界卓球2018女子日本代表/写真:千葉格/アフロ
スコア
〇石川佳純 3-2 キムソンイ(南北合同コリア)
11-4/6-11/11-8/11-13/16-14
2021年全日本選手権 石川佳純 vs 伊藤美誠
最後は、2021年の全日本選手権の決勝での伊藤美誠(スターツ)との試合を紹介する。
2015年の全日本優勝を最後に、優勝から遠ざかっていた石川。そんな石川に対し、国内外で活躍し、世界ランキングは3位に位置付けていた、伊藤が優勢ではないかと思われていたこの一戦。
写真:伊藤美誠(スターツ)/撮影:ラリーズ編集部
試合序盤は伊藤がペースを握り、得意の速攻で得点を奪っていく。ゲームカウント3-1とリードを奪い、優勝まであと1ゲームに迫った伊藤。
しかしここから、石川が真骨頂とも言える驚異的な粘りを見せる。
写真:石川佳純(全農)/撮影:ラリーズ編集部
ゲームカウント1-3と追い込まれた5ゲーム目を12-10で取り返すと、第6ゲームは圧倒し11-5で勝ち切り、勝負は最終ゲームへ。
最終第7ゲームでは攻め続けた伊藤に対し、攻めと守りの完璧とも言えるバランスを見せた石川。9-9までもつれたこの勝負は、最後はフォアハンドで2連続得点を奪った石川に軍配が上がった。
写真:石川佳純(全農)/撮影:ラリーズ編集部
全日本での優勝から遠ざかった苦悩の4年間を乗り越え、5度目の日本の頂点に輝いた石川。試合後に見せた石川の涙は、4年間の苦難と、重圧から解放された安堵を物語っていた。
スコア
〇石川佳純 4-3 伊藤美誠(スターツ)
4-11/11-7/7-11/7-11/12-10/11-5/11-9
石川佳純の軌跡を忘れない
いかがだっただろうか。日本卓球界を長きに渡り支え、日本のために戦い抜いた石川佳純の軌跡を、我々は忘れない。
石川佳純の23年の卓球人生に敬意と感謝の気持ちを込めて、そして第2の人生の歩みに期待と応援の気持ちを込めて。
写真:石川佳純(全農)/撮影:ラリーズ編集部