張本・伊藤が3位入賞 8ヵ月ぶり再開の国際大会の3つの特徴 | 卓球メディア|Rallys(ラリーズ)

写真:張本智和/提供:ittfworld

卓球ニュース 張本・伊藤が3位入賞 8ヵ月ぶり再開の国際大会の3つの特徴

2020.11.23

文:ラリーズ編集部

約8か月ぶりの国際大会となった「#RESTARTシリーズ」3大会が幕を閉じた。男女W杯、ITTFファイナルと全ての大会で中国勢がワンツーフィニッシュを飾った。

日本勢では、女子W杯で伊藤美誠(スターツ)が3位、石川佳純(全農)がベスト8、男子W杯では張本智和(木下グループ)が3位入賞を果たした。また、伊藤はITTFファイナルでもベスト4に入る活躍を見せた。

今回の3大会は、新型コロナウイルス感染対策として入国時に完全隔離措置がとられるなど、従来の国際大会とは異なる形式で進行した。

4月以降凍結されていた世界ランキングは、本大会の結果から再び反映される。出発直前まで現地情報は二転三転していたが、選手にとっては東京五輪のシード権にも関わるビッグゲームのため、出場を強行したという側面もあった。

異例の大会となった今回の取り組みを振り返る。

>>伊藤美誠、中国選手連破ならずも日本勢唯一のベスト4<卓球・ITTFファイナル>

①中国選手の強さ際立つ

男子W杯では優勝が樊振東(ファンジェンドン)、準優勝が馬龍(マロン)、女子W杯では優勝が陳夢(チェンムン)、準優勝が孫穎莎(スンイーシャ)、ITTFファイナルでは男子は馬龍が優勝、樊振東は準優勝、女子は陳夢がW杯に続いて優勝、準優勝が王曼昱(ワンマンユ)と、中国勢がすべてワンツーフィニッシュを果たした。


写真:W杯・ITTFファイナルで2冠の樊振東/提供:ittfworld

卓球王国中国は新型コロナウイルスの影響で国際大会が中止になった後も、国内ではトップレベルの大会を開催した。
8月には東京五輪模擬大会、10月には全中国選手権と、中国のトップ選手たちはこれまでと同じように切磋琢磨し、技を磨いた。
国内合宿も重ね、中国国内トップ大会という世界一の実戦の場で研鑽した選手たちの実力は、さらに飛躍していた。


写真:W杯・ITTFファイナルで2冠の樊振東陳夢(チェンムン・中国)/提供:ittfworld

②日本選手の卓球が進化

だが、日本選手も負けていなかった。

国際大会のなかった8ヶ月間、日本選手たちはそれぞれの環境の中で、自分たちの課題を克服し、さらに進化させた姿を見せた。

伊藤美誠は、サービスの種類を更に増やしたことに加え、レシーブ時の動きの速度がさらに早くなっていた。W杯準決勝の中国・孫穎沙と一戦では、敢えて相手と真っ向勝負でのラリーを軸に試合を組み立てた。敗れはしたが、ゲームカウント0-3の劣勢から2ゲームを連取し、基礎技術をさらに磨いてきたことを感じさせた。


写真:伊藤美誠/提供:ittfworld

張本智和は、持ち前の世界最高峰のバックハンド技術の精度を高めた上に、フォアハンドのフォーム改善によって、穴のないフォア・バックの切り返しを実現させた。W杯準決勝では、リオ五輪金メダリストの馬龍も、カウンターと連打を繰り出す張本の進化に戸惑い、一時はゲームカウント3-1と張本が王者を追い詰めた。


写真:張本智和/提供:ittfworld

③コロナ禍初の国際大会

コロナ禍で行われる初の国際大会ということで徹底した感染対策がとられた。
中国国内や省内の規則で、入国後に隔離期間が設けられ、伊藤美誠は20歳の誕生日を中国のホテルで迎えていた。

そして、出発前から不安視されていたように、中国入りした後の練習再開にも時間がかかっていた。

だが一方で、長期滞在によって、これまであまり見られなかった光景も見られた。
中国トップ選手はじめ他国の選手と共に練習する、日本選手たちの姿である。
伊藤美誠は陳夢、孫穎沙と、石川佳純はチャン・リリー(アメリカ)らと試合会場で練習し、充実の様子が垣間見えた。


写真:2019ワールドカップのチャン・リリー/提供:ittfworld

また、隔離期間を含む長期滞在のため、生活面、特に食事が心配になるが、ITTFファイナルに出場した加藤美優は21日、自身のインスタグラムに「全農さんに今回もサポートしていただきました!ありがとうございます」と、五目ご飯のパッケージを持った写真をアップしていた。

いつも以上に、食事や試合間の補食も難しい環境だったことは想像に難くない。
現地で石川佳純も練習間の補食として「おにぎり is best」と明るく日本のファンに向けてコメントを発信していた。

全農広報・調査部に聞くと、今回はいつも以上にサポートメニューを揃えたと言う。

「新型コロナウィルスの影響がある中、1か月近くの長期間の中国遠征で、日本代表選手の皆さんの食事や補食が心配でした。長期遠征のため荷物も多く、飛行機の持ち込み制限もありますので選手の皆さんに注文書をお送りして食材を選んでいただきました。お湯を注ぐだけで温かいご飯が食べられる『マジックライス』や『ドライフルーツ』が人気でした。『ニッポンの食』が選手の皆さんの活躍の一助となっていれば嬉しいです」


写真:選手から人気だったという「ドライフルーツ」

国際大会が戻ってきた

過酷な環境ながらも、与えられた条件で懸命に戦った日本選手たち。

現地に報道陣も帯同しなかったため、その困難の多くは伝えられず、これまでと同じように前向きなコメントが選手のSNSなどで発信された。

しかし、今回の中国遠征に参加した選手とスタッフが、覚悟と不安の中で旅立ち、異例の環境の中で戦ったことを私たちは忘れてはならない。

そのおかげで、私たちファンが手に汗握りながら代表選手を応援する、あの感覚が戻ってきたことも。


写真:石川佳純/提供:ittfworld

日本勢の結果

男子W杯

張本智和:3位入賞
丹羽孝希:初戦敗退

女子W杯

伊藤美誠:3位入賞
石川佳純:ベスト8

ITTFファイナル

伊藤美誠:ベスト4
張本智和、丹羽孝希、石川佳純、佐藤瞳、加藤美優:初戦敗退

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