文:ラリーズ編集部
7月2日に開催されたWTTコンテンダーザグレブで、日本代表の平野美宇(木下グループ)が世界ランキング1位の孫頴莎(スンイーシャ・中国)を破って、女子シングルス優勝を飾った。
写真:平野美宇(木下グループ)/提供:WTT
この勝利は平野にとって、今シーズン国際大会初優勝以上の価値がある。なぜなら相手は世界ランキング1位で、先日の世界選手権女子シングルスで金メダルを獲得した、名実ともに現在の世界ナンバーワンプレーヤーの孫頴莎だからだ。
孫頴莎はその輝かしい成績はもちろんのこと、「とにかく海外選手に負けない」ということでも有名な中国人選手だ。
例えば、現在の男子世界ランキング1位の樊振東(ファンジェンドン・中国)は、昨年の世界選手権団体戦で日本代表の張本智和(智和企画)に敗れ、今年4月に開催されたWTTチャンピオンズマカオではフランスのアレクシス・ルブランにも敗れている。
写真:樊振東(ファンジェンドン・中国)/提供:WTT
このように、いかに強い中国人選手でも「海外選手に勝ち続ける」ということは、容易ではないのだ。
しかし、件の孫頴莎は違う。本当に海外選手に負けない。少なくとも、ここ数年は孫頴莎が中国人選手以外に負けている姿を見たことがなかった。
では、そんな孫頴莎が「最後に海外選手に負けた」のはいつなのだろうか。
孫頴莎が最後に負けたのは4年前
孫頴莎が最後に海外選手に負けた試合(国際大会)は、4年前に開催されたスウェーデンオープン女子シングルス準決勝まで遡る。
孫頴莎は当時18歳ながらも、世界ランキングは堂々の6位。既に中国トップレベルの選手として、海外選手の大きな壁となっていた。
そして、そんな孫頴莎を打ち破った選手が、何を隠そう、伊藤美誠(スターツ)だ。
写真:2019年スウェーデンオープンでの伊藤美誠(スターツ)/提供:ittfworld
孫頴莎と伊藤美誠は同い年ということもあり、自他ともに認めるライバル。同大会では準決勝で伊藤が孫頴莎をゲームカウント4-2で下し、最終的には伊藤は準優勝を果たしている。
以降は、孫頴莎が勝ち越す形となっているが、伊藤は孫頴莎から勝利を挙げた数少ない海外選手なのだ。
そして、平野は今回、そんな孫頴莎から勝利を挙げた数少ない海外選手の一人となった。
1年後に開催されるパリ五輪に向けて、代表選考レースは佳境を迎えており、伊藤も平野も現段階では代表を十分に狙えるポジションにつけている。今回の平野の勝利が直接的にパリ五輪代表権につながることはないが、中国トップ選手を破る力を持った日本人選手が増えることは、日本代表にとって間違いなくプラスとなるだろう。