卓球の見方は5分で変わる(4) 60秒のタイムアウトで何ができるか? | 卓球専門WEBメディア「Rallys(ラリーズ)」
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2019.07.07

卓球の見方は5分で変わる(4) 60秒のタイムアウトで何ができるか?

写真:1分間のタイムアウトが試合の流れを変える/撮影:ラリーズ編集部

5分でガラリと変わる卓球の見方、第4回のテーマは「タイムアウト」だ。

卓球ではルール上、1試合に1回だけ1分以内のタイムアウトを取ることが出来る。

この試合中の1分間をきっかけに、それまで劣勢だった選手が大逆転することもある。そのためタイムアウトは「勝敗のカギを握る60秒」と言っても過言ではない。

タイムアウトの裏側で何が起きているのかを知り、注目するともっと卓球観戦が面白くなる。詳しく見て行こう。

>>卓球の見方は5分で変わる(2)16cmのトスが明暗を分ける「サーブ」に注目

高まるタイムアウトの重要性

卓球、タイムアウト
写真:1分間のタイムアウトが試合の流れを変える/撮影:ラリーズ編集部

戦略スポーツである卓球において、1分間もコートから離れて作戦を整理出来る時間は貴重だ。

プレー中はどうしてもボールを相手コートに入れるためのテクニックに意識が集中したり、激しいラリーで心拍数が上がるため、冷静に先を見据えた戦術を考えるのはトッププレイヤーであっても至難の業だ。

また一昔前は試合中に1ポイントごとにボールを拾いにいき、その時間を「一人作戦タイム」として使えたが、最近の国際大会やTリーグでは試合進行の迅速化のためマルチボールシステム(複数のボールを使って試合を進行する。ラリーが終わると審判から新しいボールが渡される。前のラリーで使ったボールはボールボーイが拾う)が採用されている。

この新ルールでは前のラリーが終わったらすぐに次のサーブを出さなければならず、次の作戦をじっくり考える時間的猶予が無くなってしまったのだ。

すなわち1分間のタイムアウトの重要性は更に増しているとの見方も出来る。

たった60秒で何が出来るのか?

卓球、タイムアウト
写真:1分間のタイムアウトが試合の流れを変える/撮影:ラリーズ編集部

この重要なタイムアウトの場面で、選手たちはベンチで何をしているのだろうか?

ベンチコーチとの対話の中で直前の「得点パターン」「失点パターン」を整理したうえで次の一手を決めるのがこの1分間の一般的な使い方だ。

また緊張していたり、熱くなりすぎていてパフォーマンスを発揮出来ていない場合には、この1分間をメンタルを整えるために使うこともある。

タイムアウトは内容より「タイミング」が重要

卓球、タイムアウト
写真:1分間のタイムアウトが試合の流れを変える/撮影:ラリーズ編集部

タイムアウトの1分間をどのように過ごすかも試合に大きな影響を与えるが、よりポイントとなるのがタイムアウトを取る“タイミング”だ。

タイムアウトを取る選手にとって、最も避けたいのは、そのタイムアウトによって対戦相手がより有利になることだ。

自分がタイムアウトを取るということは、相手にも貴重な1分間の時間を与えることになる。自分には有利だが相手にとっては必要が無いタイミングでタイムを取ることが重要だ。

理想とされる3つのタイミング

卓球、タイムアウト
写真:1分間のタイムアウトが試合の流れを変える/撮影:ラリーズ編集部

トッププレイヤーの間でセオリーとなりつつあるタイムアウトの取り方を3つ紹介しよう。

1つ目は「大量リードから追い上げられそうな時」だ。例えば9-3でリードしていて10-7まで追い上げられた時。このタイミングでタイムアウトを取ると、相手の連続得点の要因になっているパターンへの対策を練ることができるのでそのゲームを取れる確率が高まる。

2つ目は「試合前半で戦い方に迷う時」。戦術転換が早い卓球競技において、1ゲーム目、2ゲーム目で「この相手にはこのコースを突いていこう」という基本方針が立てられないとずっと迷いながら戦うことになり、勝利を手繰り寄せるのは難しい。試合の前半でこの基本方針をベンチで相談できれば、その後の試合全体を有利に進めることに繋がるため大きい。

3つ目は「ゲームポイント、マッチポイントを握った場面」だ。ゲームポイントを握ったらあと1本だけ取ればそのゲームを制することが出来る。

「あと1本だけ取ればよい」という特殊な局面が大きなプレッシャーを選手に与える。そのため焦って打ちに行ってミスしたり、逆に相手のミスを期待して安全策を取りに行きやすくなる。この場面ではそれまで最も高確率で得点できていたパターンで勝負するのか、それまで1本も見せていないテクニックで相手の意表を突くのかを非常に迷うためタイムアウトの1分間で覚悟を決めることが有効だ。

また、高等テクニックとして、タイムアウトを自ら取っておきながら、1分経たないうちにコートに戻る選手もいる。ルール上はタイムアウトを取った側の選手が1分未満でコートに戻った場合、その時点でタイムアウトは終了となり、相手選手も直ちにコートに戻らなくてはならない。そのため、相手ベンチコーチがアドバイスを伝え終わらず、相手選手が迷っている状態で試合を再開できるのだ。

誰がタイムを取るのか

卓球、タイムアウト
写真:1分間のタイムアウトが試合の流れを変える/撮影:ラリーズ編集部

タイムアウトは、選手だけでなくベンチコーチも取ることが出来る。誰がタイムアウトを取るかということも非常に重要だ。しばしば選手がタイムアウトを取りたくないタイミングでベンチコーチが取ってしまうことや、選手が試合にのまれている場面などベンチがタイムを取ってあげるべきタイミングで取り逃すシーンも見られる。

「誰がタイムアウトを申告したか?」
「このタイミングでタイムアウトを取ったのは何でだろう?」
「ベンチでどんなアドバイスをしているのかな?」
(時折、試合中継で会話の内容が聞こえることもある)
「タイムアウトの後で何を変えたのかな?タイムアウト逆転に繋がったのか?」

このようなポイントを想像しながら観ると卓球をもっと楽しめること間違い無しだ。

「1試合に1度しか使えないタイムアウト」の裏側にある緻密な戦略や勝利への執念に注目して欲しい。

>>卓球の見方は5分で変わる(1)点を獲るか?拾うか?

文:川嶋弘文(ラリーズ編集長)

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