文:ラリーズ編集部
東京大学卓球部―そこには、強豪校出身の“卓球エリート”はいない。
「入部してから伸びる」。それは東大卓球部員に対してよく言われる言葉だ。入学時に卓球のレベルは低くても、彼らは4年間を通して“卓球エリート”と互角に勝負できるまでの力をつける。
東京大学の名を背負って戦う彼らの強さはどこからくるのか。ラリーズ編集部が練習に潜入し、その秘密に迫った。
東大卓球部とは
写真:東大駒場キャンパス正門/撮影:ラリーズ編集部
東大卓球部は創部約90年の歴史をもつ。関東学生リーグでは現在男子は3部、女子は4部に所属。男子は、一時は4部に落ちることもあったものの、長きにわたって3部の舞台で活躍している。
3部の大学には推薦選手をとる大学も多いなか、東大は卓球推薦なしで戦う。さらに、2012年には2部昇格を果たし、2シーズンにわたって2部の舞台で戦った。女子は、東大の女子学生が少なく、部員確保に苦労する中、安定して4部で優勝争いを繰り広げている。
現在、部員は約40名。月・水・土の夜、週3回の全体練習がメインとなり、日曜日や平日の朝練など、多くの部員がほぼ毎日、練習に取り組むという。
ラリーズ編集部 東大へ
写真:東大駒場キャンパス卓球場/撮影:ラリーズ編集部
ラリーズ編集部は9月某日、東京大学駒場キャンパスで活動する卓球部の練習に潜入した。
練習場には10台余りの卓球台が並べられ、学年や男女が分け隔てなく練習していた。冷房はなく、熱気や湿気がこもる環境。決して恵まれているとは言えない。
練習に参加して一番に抱いた印象は、練習に規律があり、高い集中力を保っているということだ。卓球強豪校ではない大学。さらには、練習を常に監視し、管理する指導者もいない。大学生は高校生までよりも一層、自主性が求められる。一般にそのような環境では、練習中にだらけてしまいがちな印象があるが、東大は違った。
20分1コマの練習が終われば、その合間の休憩時間には部員同士がアドバイスを交わし、卓球ノートに記録を付けている。また、下級生は強い上級生に次の練習の相手を申し込みに行く。そしてまた次のコマの開始を告げる掛け声がかかる。「はい!」という部員の返事とともに練習が再開する。そのような光景が印象的だった。
技術を学び、共有する制度
東大には優れた実績をもつ外部コーチが数名ついており、定期的に指導を受けている。また、練習にはOBや外部の強い選手を頻繫に招き、部内よりレベルの高い練習をする機会も多いという。
そして、東大には伝統的に縦割り班があり、学年や実力に関係なく数名ずつに分かれて定期的にミーティングをするという。そこではコーチなどから学んだことの共有や、目標、練習内容の確認を行う。時間が限られたなか、練習の質を高めるための工夫だ。
難関の入試を突破するための勉強で培われた高い集中力や創意工夫は、卓球の練習にも活きていた。
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「勉強だけじゃない」強い東大へ
写真:関東学生リーグでの東大/提供:東大卓球部
東大はスポーツでは弱いというイメージが世間にはある。卓球も例外ではないだろう。全国大会常連校と比べると、その知名度や注目度は劣る。
しかし、日本の最難関大学には、卓球に真摯に向き合う選手たちがいた。高校までの実績では敵わないような他校の選手たちに下剋上を起こすべく、彼らは日々の練習に取り組む。
「東大は勉強だけじゃない」。文武ともに高みを目指す東大卓球部の挑戦に注目だ。