企業スポーツの代名詞、“仕事と卓球の両立”を体現してきた男が、ここで一区切りだ。
鹿屋良平(リコー)、30歳。
卓球部から引退し、会社に残って社業に専念する。
最後と決めた全日本は、自身が高校3年時以来の自己ベストである5回戦(ランク決定戦)まで勝ち進んだ。
当たり始めると止まらない両ハンド攻撃は健在で、前日はスーパーシードの大矢英俊(ファースト)との激戦を制した。
写真:鹿屋良平(リコー)/撮影:ラリーズ編集部
そして今日、ランク決定戦の対戦相手は、野田学園時代の一学年下の吉村真晴。
結果は、ゲームカウント1-4で鹿屋の敗退となった。
「良かったです、(吉村)真晴選手で。1〜3回戦で負けて悔いを残すより、真晴選手にキレイに吹っ飛ばしてもらったので(笑)」
“最初、相手も入らなかったですけど、それ以上に僕が全然入らなくて、これは全然ダメだな”と、清々しい笑顔で自身のラストマッチを振り返った。
写真:鹿屋良平(リコー)/撮影:ラリーズ編集部
写真:試合を終えて称えあう鹿屋良平(リコー)と吉村真晴(TEAM MAHARU)/撮影:ラリーズ編集部
リコー卓球部の伝統「仕事と卓球の両立」
会社のフルタイムの勤務時間が終わってから、練習を毎日続けてきた。
リコー卓球部の伝統である。
「若い頃は、仕事が終わって練習しても疲れを感じなかったんですが、ここ最近は1回動くとけっこう息が上がるようになってきて」
2,3年前から引退を考えていたが、チーム事情もあって現役生活を続けてきた。
「僕も30歳になり、ちょうど来年、チームに若手の有望選手も入ってきますので、ここが区切りだなと」
写真:今回、ベンチに入った兄・鹿屋圭太氏と/撮影:ラリーズ編集部
これまで卓球に費やしてきた時間を仕事に
これからは、社業に専念する。
“卓球と同じように全力で?”と水を向けると、鹿屋らしい謙虚な答えが返ってきた。
「仕事の面でも、まだまだ未熟なところが多く、勉強が必要なので、これまで卓球に費やしてきた時間を仕事に充てて、もっと成長していきたいと思います」
写真:鹿屋良平(リコー)/撮影:ラリーズ編集部
優勝して、工藤監督ともう一度ハグしたかった
“思い残すことはありません”と言いつつ「工藤さん(一寛、リコー卓球部監督)と、もう一回ハグしたかったですね」と笑った。
「前期日本リーグと総合団体とファイナル4で優勝した2018年、僕はラストで勝って、結局、その年3回工藤さんに抱きついたんです(笑)。それ以来僕らは優勝できなくて、その機会はありませんでした。もう1回優勝して、工藤さんとハグしたかったなと」
監督泣かせのコメントである。
「優勝は本当に気持ち良いものですが、後は山本勝也ら次のメンバーに任せます」
礼儀正しく、でも台につくと超攻撃的に両ハンドを振り回した“ブンブン丸”が、笑顔でラケットを置く。
これからのために、ずっと仕事と卓球を両立させてきたのだ。
今度は、リコーの社業というさらに大きな舞台で、思う存分鹿屋が駆け回る姿が目に浮かぶ。
写真:鹿屋良平(リコー)/撮影:ラリーズ編集部
(2020年9月掲載)鹿屋良平インタビュー
>>卓球もビジネスも「結果が一番大事」 リコー卓球部のコーチ兼選手・鹿屋良平