文:ラリーズ編集部
<2021年全日本卓球選手権大会(一般・ジュニアの部)、2021年1月11日~17日>
「今年の全日本が最後です」
毎年、全日本選手権は、卓球選手の引き際の舞台にもなる。
観客のいない静かな今年の全日本に、華やかだった競技人生を終えていく選手たちがいる。
土`田「2年前から決めていた」
土田美佳(中国電力)は、試合が終わった瞬間、穏やかな微笑みを浮かべた。11月の後期日本リーグで優勝を勝ち取り、最後の舞台と決めていた全日本シングルスは3回戦で幕を閉じた。
写真:土`田美佳(中国電力)/撮影:ラリーズ編集部
試合後のインタビューでは「あんまり最後だなという感じはなかったんですけど、周りの方に最後だねと言われているので最後だなと思ってます」と照れた。
「キャプテン業を全うして引退しよう」
2年前に中国電力の主将になったとき、2年後の引退を決めていたという。
「2年間キャプテン業を全うしようと思って、(キャプテンになった時点で)2年後の引退を決めました」
写真:後期日本リーグで勝利する土`田美佳(中国電力)/撮影:ラリーズ編集部
最後の一年は、自身の怪我にも悩まされた。
「5月に腰を痛めて、手術を経て、11月の後期日本リーグに間に合わせようと準備をしていたんですけど、また膝を痛めてしまった。一年を通して怪我していたなあという感じです」と満身創痍だった一年を振り返る。
ただ、そのリハビリ期間も、会社やチームはずっと支えてくれた。
「一人だけでは今日この日までコートに立てなかった。周りの方に恵まれてすごく助けてもらった。感謝の気持ちでいっぱいです」と、清々しい笑顔で競技人生を締めくくった。
試合結果
◯皆川優香(大阪成蹊大) 3-2 𡈽田美佳(中国電力)
11-7/11-8/3-11/6-11/11-4
写真:土`田美佳(中国電力)/撮影:ラリーズ編集部
「幸せな卓球人生でした」
写真:小道野結(デンソー)/撮影:ラリーズ編集部
ゲームオール9-10で最後の1本を失ったとき、不思議と小道野結(デンソー)は爽やかな顔をしていた。
しかし、相手のベンチに礼をし、自陣のベンチに戻る途中で、堪えていた涙が不意にこぼれた。
写真:小道野結(デンソー)/撮影:ラリーズ編集部
悔しさなのか。それとも、両親の影響で5歳から始めた競技人生の思い出が駆け巡った感傷だったか。
無観客の静かなフロアに、小さく嗚咽する声が響く。
写真:小道野結(デンソー)/撮影:ラリーズ編集部
試合後、小道野は自身のSNSで「たくさんの方々に応援していただいて、幸せな卓球人生でした」とコメントを残した。
いつか終わりは来る。
普段の全日本なら見落としていたかもしれない、特別な一瞬だった。
試合結果
小道野結(デンソー) 2-3 ◯中田玲奈(筑波大)
11-7/8-11/6-11/11-7/9-11