"サプライズペアで終わる気はない" 中国×アメリカの国際ペアが入念な調整<世界卓球2021現地レポート> | 卓球メディア|Rallys(ラリーズ)

写真:カナック・ジャー(アメリカ)、王曼昱(ワンマンユ・中国)ペア/撮影:ラリーズ編集部

大会報道 “サプライズペアで終わる気はない” 中国×アメリカの国際ペアが入念な調整<世界卓球2021現地レポート>

2021.11.23

この記事を書いた人
1979年生まれ。テレビ/映画業界を離れ2020年からRallys編集長/2023年から金沢ポート取締役兼任。
軽い小咄から深堀りインタビューまで、劇場体験のようなコンテンツを。
戦型:右シェーク裏裏

それはセレモニーの域を超えていた。

練習が終わらないのだ。

ピンポン外交50周年を記念し、22日にサプライズで発表された、混合ダブルスに出場する林高遠(リンガオユエン・中国)/チャン・リリー(アメリカ)ペア、カナック・ジャー(アメリカ)/王曼昱(ワンマンユ・中国)2組のペアのことだ。


写真:カナック・ジャー、王曼昱ペア(写真手前)/林高遠、チャン・リリー ペア(奥)/撮影:ラリーズ編集部

ピンポン外交とは何か

ちょうど50年前の世界選手権名古屋大会のことである。1971年、東西冷戦下の米中両国。当時、中国は文化大革命の真っ只中にあったが、開催国日本卓球協会からの熱心な働きかけで6年ぶりに世界選手権に参加したのが、名古屋大会だった。

ある日、試合会場に向かう中国選手団のバスに、一人のアメリカ代表選手が間違えて乗車する。当時「アメリカの選手とだけは接触してはならない」とされていた中国選手団だったが、後部座席からエース・荘則棟選手が歩み寄り、友好的な言葉を交わした。

それを契機に、中国が「アメリカ選手団を中国に招待する」と発表、その後の米中国交樹立に大きく貢献したと言われる出来事が“ピンポン外交”である。

このピンポン外交の他にも、1991年千葉大会での南北コリア統一チーム結成など、卓球の世界選手権には国際政治の葛藤を乗り越えようとしてきた歴史がある。

今回、史上初のアメリカ開催直前に、中国卓球協会と米国卓球協会、そして国際卓球連盟が仕掛けた粋な計らいである。


写真:中国とアメリカ両国の卓球協会と選手団でユニフォームを交換した/撮影:ラリーズ編集部

世界最高峰の舞台で

しかし一方で、ここは世界最高峰の舞台、世界卓球選手権である。

混合ダブルスは今や五輪種目でもあるのだ。本人たちにしてみると、ただのサプライズやセレモニーのペアで終わらせる気はないのだ。


写真:チャン・リリー(写真右)、林高遠/撮影:ラリーズ編集部

初めこそぎこちない動きだったが、徐々に熱が入り、すぐにラリーは本域のものになる。途中、何度も劉国梁(リュウグォリャン)中国卓球協会会長はじめ指導者が、それぞれのペアに指導を行い、また練習を再開した。


写真:チャン・リリー(写真右)、林高遠(写真中央)/撮影:ラリーズ編集部

多くのメディアや記者、YouTuberたちがこの歴史的瞬間を伝えようとメインコートに詰めかけたが、あまりに続く真剣な練習に、他の場所で始まった記者会見に場所を移すほどだった。


写真:カナック・ジャー(アメリカ)、王曼昱(ワンマンユ・中国)ペア/撮影:ラリーズ編集部

カナック・ジャー/王曼昱ペアは、現地時間23日15時20分(日本時間24日6時20分)からブラディミル・シドレンコ/Mariia TAILAKOVA(ロシア)と、林高遠/チャン・リリーペアは、現地時間23日16時(日本時間24日7時)からティアゴ・アポローニャ/シャオ・ジエニー(ポルトガル)との対戦が決まっている。

まもなく幕が上がる。


写真:セレモニーが行われたメインコート/撮影:ラリーズ編集部

特集・なぜ世界選手権は特別なのか

>>“史上初”アメリカ開催決定の裏側 世界選手権には卓球人たちの心意気が詰まっていた

練習風景の動画

関連記事

>>ピンポン外交50周年 中国×アメリカの国際ペアが混合ダブルス出場へ<世界卓球2021>