【シリーズ/徹底分析】張本、馬龍に大金星。絶対王者を”ハメた”緻密な2つの作戦【ライオン卓球ジャパンOP荻村杯・男子シングルス準々決勝】


<LION卓球ジャパン・オープン荻村杯 北九州大会、2018年6月6日〜10日、北九州市立総合体育館>

白熱した試合をラリーズ独自の視点で振り返る、【シリーズ・徹底分析】。

今回は、ジャパンオープン・男子シングルス準々決勝の張本智和(6月度世界ランキング10位・JOCエリートアカデミー)と馬龍(同2位・中国)の試合に迫る。

リオ金メダル、2015年・17年世界卓球2連覇中と、まさに絶対王者と呼ぶにふさわしい馬龍に、張本智和はどのようにして勝利を上げることができたのか。

そこには2つの戦術があった。

ジャパンオープン・男子シングルス準々決勝:張本智和(JOCエリートアカデミー) vs 馬龍(中国)

馬龍(中国)は数々のビッグタイトルを総なめにしてきた絶対王者だ。
写真:新華社/アフロ


<スコア>
張本智和(JOCエリートアカデミー) 4-2 馬龍(中国)
11-8/11-9/11-7/3-11/2-11/11-6

張本の戦術1:バック対バックのコースの振り分け

張本がバック対バックのコースを絶妙に振り分けることで馬龍の攻撃を封じた
図:ラリーズ編集部


1ゲーム目から張本の得意なバックハンドを活かした戦術が上手くいっていた。

馬龍はフォアハンドの打球において、世界トップクラスの破壊力を誇る。張本が勝つためにはバックハンドのラリーに持ち込み、バックハンドという局地戦を制する必要があった。

張本はバックハンドのラリーの際に、ミドル(利き腕側のポケットあたり)からバックサイド(バック側の台の端あたり)へ絶妙にコース振り分け、馬龍に的を絞らせないことに成功した。このバックハンドのラリーでのコースの振り分けにより、馬龍の得意のフォアハンドを封じるとともに、張本のバックサイドの決定率を引き上げていった。

さらに、バック側を意識した馬龍が無理やりフォアハンドで回り込もうとしたところを、張本は見逃さず、がら空きになった逆のコース(バックからのストレートコース)を突く冷静なプレーも見せた。

この戦術1が功を奏し、絶対王者相手に3ゲームを連取。第4,5ゲームでは、追い込まれてからも冷静にラリーをしてくる馬龍への焦りからか、張本が先にミスをする展開も目立った。しかし、第6ゲームにはこの戦術1の展開を丁寧に実行。大金星の裏側には張本の冷静な戦略があるのだ。

張本の戦術2:読みにくいサーブから甘いレシーブを誘い一撃で仕留める

張本は読みにくいサーブから甘いレシーブを誘い、それを相手のミドルに打ち込むことで得点を重ねた
図:ラリーズ編集部


張本は、世界一と言われるバックハンド攻撃のタイミングとスピードに注目されがちであるが、実はサーブの名手でもある。

張本は実際に得意のサーブを活かし、馬龍の攻撃力を半減させた。

戦術1のような張本優勢のバックハンド同士のラリーになる展開を避けたい馬龍は、張本のサーブに対し、張本に先に攻めさせないよう、低く短く返球するストップレシーブ(以下ストップ)をし、張本が攻撃できずに繋いできたボールを仕掛ける戦術を取ろうとした。

一方、馬龍のストップを封じたい張本は、要所でストップが最もしにくいアップサーブ(前進回転がかかり、強引にストップをすると甘く浮いてしまうサーブ)を使用した。そして馬龍のレシーブが甘く浮いてきたところを、シェークハンドの馬龍が最もブロックをしにくいミドル(台の中央、馬龍の右足のポケット付近)に強打をし、得点を重ねた。

馬龍はストップレシーブを減らさざるを得なくなり、他のレシーブに切り替えるが、その度に張本がことごとく戦術1の展開に持ち込んでいく。

馬龍が戦術1を防ごうと思うとストップレシーブを選ばなくてはならず、戦術2の展開になってしまう。

このように、張本が奪った4つのゲームでは、戦術1と戦術2のコンビネーションにより、馬龍に打つ手をことごとく潰し、張本優位の展開が続いたのだ。

張本は今年4月のアジアカップで樊振東(同1位・中国)、5月の中国オープンではロンドン五輪金メダリストの張継科にも勝っており、今後中国からのマークが一層強くなることが考えられる。

実際、今大会の馬龍の練習相手には張本とフォームがそっくりなコピー選手と思われる選手が帯同していた。

中国選手の対策に負けず、2020に向けたさらなる成長に期待が高まる。

文:中川正博(ラリーズ編集部)
写真:千葉格/アフロ

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