文:ラリーズ編集部
Tリーグの見逃せない名勝負をラリーズ編集部独自の視点で解説する【T.LEAGUE 名場面解説】。
今回は12月6日のノジマTリーグ・岡山リベッツVS琉球アスティーダの一戦から、第4マッチの吉田雅己と木造勇人の試合にスポットライトを当てる。
吉田は昨シーズンに引き続きリベッツの主軸として多くの試合に出場しており、Tリーグでの経験は豊富だ。2016年には全日本選手権で水谷隼(木下グループ)と組んだダブルスでも優勝しているなど、ダブルスの名手としても知られる。
対する木造は今シーズンからTリーグに参戦。今回の勝利が記念すべき初勝利となった。今年の全日本選手権では張本智和(木下グループ)と組んだダブルスでは優勝、シングルスでも3位と着実に力をつけてきている。
今回の両者の対戦は、要所で巧さを見せた木造が3-1で勝利。勝負を分けた木造の戦術について解説する。
ノジマTリーグ 岡山リベッツ 対 琉球アスティーダ:吉田雅己VS木造勇人
詳細スコア
吉田雅己 1-3 ○木造勇人
11-10/5-11/8-11/5-11
吉田VS木造のハイレベルな試合をダイジェストで確認!
1.“あえて打たせる”ハーフロングサーブ
図:木造のサーブからの展開/作成:ラリーズ編集部
この試合は、強力なフォアハンドを持つ吉田と、前陣での打点の速い速攻が持ち味の木造の対決という構図となった。
吉田はレシーブではストップからの4球目フォアハンド攻撃を狙った。そこで木造は時折ハーフロングで台から出るサーブを混ぜ、あえてドライブをかけさせてからそれを得意のカウンターで打ち返すという戦術をとった。
一般的にハーフロングのサーブに対して強打は難しいが、サーブ側も少し長さを間違えると先手を取られるというリスクがある。しかし、今回木造はサーブの長さを絶妙にコントロールし、吉田もドライブを「打たされている」感があった。
自分の得意なカウンターからのラリー展開にするために“あえて打たせる”。木造の細かな技術が凝縮した作戦だった。
2.バックハンドでの先手を取るレシーブ
図:木造のレシーブイメージ/作成:ラリーズ編集部
木造はレシーブでも自分の展開に持っていくための工夫を見せた。それがバックハンドで仕掛けていくレシーブだ。
第1ゲーム、吉田のフォア前とバックロングのサーブに対して受け身になってしまい、ゲームを落とした木造。そこで第2ゲームからはフォア前に対するチキータ、バックロングに対する打点の早いドライブレシーブで対応。これにより、レシーブでも先手を取る展開が増え、得点率が大きく増加した。
一般に、フォア前とバックロングをどちらも完璧に処理するのは難しい。木造の高い技術力とコースを読む力があったからこその芸当だ。
まとめ
自分が有利な展開に持ち込み、逆に相手の得意な展開にさせない。そんな卓球における定石が如実に見られたのが今回の試合だろう。
技術的にはどちらが勝ってもおかしくなかった中で、持ち味を発揮できた木造は第2ゲーム以降のびのびとプレーできていたように見えた。
今回の戦術は木造のハイレベルな技術あってのものだったが、その戦術を決める上での考え方は幅広いレベルのプレーヤーが参考にすることができるだろう。