文:ラリーズ編集部
テニスのような屋外スポーツは雨の影響を受けやすい。19世紀に雨天のためテニスができなくなった際、室内で打ち合ったのが卓球の始まり、とも言われている。日本代表の快進撃で歓喜に沸いたラグビーワールドカップも、一部試合が台風19号による大雨で中止となり引き分け扱いとなった。プロ野球でも雨天による試合中止がしばしば見られる。
一方で体育館などの屋内でプレーする卓球には、一見雨による影響はないようにも見える。厳密には雨による直接的な影響はない。ただ雨によって生じる「湿気」が卓球のプレーに大きく影響する。
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トップ選手も影響を受ける“湿気”という天敵
極めて繊細な用具を使う卓球競技は、湿気による影響をもろに受ける。空気中の水分がラバーの表面に付着し、特にドライブ技術ではボールがラバーの表面で滑り、回転がかかりづらくなってしまう。
湿気の影響を受けるのは、トップ選手も例外ではない。張本智和(木下グループ)は、T2ダイヤモンド2019シンガポール大会で丹羽孝希との準々決勝後「会場の湿気が多くて、チキータができなかったのが苦しかった」と東南アジアの湿度の高い気候に苦労したことを明かした。
写真:T2ダイヤモンド2019シンガポールでの張本智和(木下グループ)/撮影:ラリーズ編集部
同じくT2ダイヤモンド2019シンガポールに出場した中国・林高遠(リンガオユエン)は大会中ネットミスをするたび、しきりに自身のフォア面のラバーを気にしていた。
シンガポールは熱帯気候に属しており、年間通して気温・湿度が高くなる傾向がある。さらに大会中シンガポールでは、しばしば雨が降っており、湿度が高まっていた。
湿気は卓球にとって天敵となっており、日本でも梅雨の時期の練習や試合で苦労するプレーヤーも多いのではないだろうか。
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“雨ニモマケズ” 湿気対策
写真:水谷隼(写真はグランドファイナル)/撮影:ラリーズ編集部
卓球の天敵とも言える湿気だが、対策を講じることが可能だ。
卓球プレーヤーは、食品の保管時によく使用される乾燥剤をラケットケースに入れるなどして工夫している。
また、タオルで卓球台を拭いている選手を見たことはないだろうか。実はこの行動も埃や台の汗などの湿気を払っており、対策の一つなのだ。
この対策は、卓球台表面に付いた小さな水滴を取り除き、台を弾んだボールに水滴が付着すること、ボールを経由してラバーに水滴が付着することを防ぐ効果がある。卓球競技においてタオルは、汗を拭くだけでなく、湿気対策として使用されることも多いのだ。
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卓球の奥深さ
室内競技にも拘らず雨の影響を受けるという点は、他のスポーツには見られない卓球の特殊性と言えるだろう。
湿気に大きな影響を受けることは非常に厄介な点とも言えるが、そこは卓球という競技の個性。卓球は、繊細で、難しい部分がおもしろさでもあり、魅力でもある。