"同士討ち"で勝つための2つのポイントとは?|頭で勝つ!卓球戦術 | 卓球メディア|Rallys(ラリーズ)

写真手前:及川瑞基(木下グループ)、写真奥:篠塚大登(愛知工業大)/撮影:ラリーズ編集部

卓球技術・コツ “同士討ち”で勝つための2つのポイントとは?|頭で勝つ!卓球戦術

2023.09.27

この記事を書いた人
初級者、中級者向けに基本技術の説明から、戦術論や卓球コラムまでを執筆。社会人になってから5回全国に出場し、全日本卓球選手権(マスターズの部・男子30代以上の部)ではベスト64。まさに“頭で勝つ!”を体現中。
戦型:右ペン表裏

卓球ライター若槻軸足がお送りする「頭で勝つ!卓球戦術」。今回は「同士討ちで勝つために」というテーマでお話をしていきたいと思う。

同士討ちとはすなわち同じチームメイトと対戦することである。長年競技を続けている方なら必ず経験があるはずだ。そして同時に避けられない事態でもある。

なぜなら主要な大会への参加できる人数には限りがあり、部活動やクラブなどからメンバーを選抜する必要があるからだ。誰しもがチーム内の熾烈な競争に勝ち残らなければ、大会出場への切符を手にする事はできないのである。

誰が出場するのかを決めるために、最も一般的だろうものが「部内戦」というものである。筆者が高校時代も当然のことながら定期的に部内戦というものがあった。その際はいつも穏やかな部室もかなりピリついた雰囲気になり、いつもとは明らかに違う空気が漂っているものであった。

また部内での試合に限らず、公式戦においても同士討ちの場面は存在する。競合校ともなれば県内の大会でトーナメント上位になればそういった同じチームの仲間と対戦する機会が現れてくるはずだ。

今回はそんな同士討ちの場面で心がけておきたいことについて考えていこう。

同士討ちで勝つために

弱点を徹底的につく

まずなによりも大事なのが、弱点を徹底的に突くということだ。大会などでは基本的に初めましての選手と対峙することの方が多いだろう。その際はいかにスムーズに情報を収集できるかが鍵になる。

試合前の練習からフォームの癖を見抜き、出すサービスの傾向や回転量、あるいはレシーブの得手不得手、フォアとバックどちらが主力の武器なのか、等々の情報をいち早くキャッチした上で弱点を見抜く、という作業が必要になってくる。しかも当然、同時に目の前の1点を取りにいかなければばらない。

しかしその一方で、同士討ちならばその情報が最初から揃っている段階でスタートとなるわけだ。(もしチーム内の選手の情報を知らないならばそれは情報収集不足である)であればそれを1本目から突かない理由はない。たとえば相手が「フォア側の下回転のボールを打つことが苦手」としているのならば、ありとあらゆる手段を使ってフォア側に下回転のボールを送るように考えなければならない。

よく言われるのが、「試合の序盤から続けてやると慣れられるのではないか」といった懸念だ。これはたしかに一理あるとは言えるが、私の考えとしては「気にせずガンガンいけ」である。当然相手も繰り返すに連れて対応できるようにはなっていくだろう。ただし、それまで苦手とされている技術が試合の中で得意になる、なんてことはまずない。


写真手前:曽根翔(T.T彩たま)、写真奥:宇田幸矢(明治大)/撮影:ラリーズ編集部

仮に試合の中でうまく対応されたからといって、「もうこの弱点は通用しない」と思う必要はない。弱点を突いていることが相手にバレていたとしても、相手は「嫌だな」という感情が常に生まれ、いつもと調子が狂う、リズムが合わない、といったことにより本来のプレーをさせないといった副次的な効果も期待できるからだ。

まず相手の弱点を攻めることは常套手段である。自分がやりたいことよりも、相手が嫌なことを優先する。これが鉄則だ。

逆に相手に弱点を突かれているときにはどうしようか。これはもうただただ耐えるしかない。弱点がバレている以上、そこを攻められることは避けられない。相手からやられるのを覚悟した上で自分もやる、プロレスのような戦いを強いられるのが、同士討ちの運命である。

耐えるということは、簡単にミスをせずになんとかして「入れる」ことである。甘いボールになろうが、なにがなんでも入れる。そして入れたあとのボールもなんとか凌ぐ、そのことに注力しよう。だめでもともとである。逆に、ハッタリをかまして弱点ではないかのように見せかける行為も、効き目がないと思ったほうが良いだろう。地道に入れるしかない。

想定内をほんの少しでもはみ出す工夫

競り合った場面、ここぞというときに隠しておいたとっておきのサービスを繰り出して得点をする。そんな戦術も同士討ちの場合だと使えない。普段一緒に練習することのない相手であれば別だが、同じ環境で過ごしているのなら新たなサービスを考案している段階で相手に知られていることが多い。

同士討ちは基本的に相手に手の内を知られている。その中でひとつでも相手の知らない技術を使うことができれば優位に立てることは間違いないだろう。だが常に新しいサービスを編み出していくことは非常に素晴らしいことではある一方で、試合で使えるレベルに達するまではそれなりの練習時間が必要でもある。


写真:鈴木颯(愛知工業大)/撮影:ラリーズ編集部 ※写真は愛工大名電高在学時

そこでおすすめなのは、ほんの少しだけでいいので相手の想定内から外れたプレーをしようということだ。例えば同じサービスであっても、通常はバックサイドから出すところを、ミドルあるいはフォア側から出す。たったこれだけでも相手からしたらかなり嫌なはずだ。出し所が変わればサービスの軌道も変わるしレシーブの狙い所も変わってくる。加えて「見たことのないサービスが来るのかもしれない」と思わせる心理的な効果もある。

あるいは、サービスでもレシーブでも、普段使わないコースに打つことも大切である。フットワーク練習でも、3球目の練習でも、どうしても相手のバック側にボールを集めるプレーが多くなりがちである。そこでしっかりとフォアやミドルのコースも使うことで、普段の練習とは違うプレーを演出できる。特にミドルを狙うことは、リスクも少なくかつ効果的なのでおすすめである。バックにレシーブしていたものをフォアに狙うのは技術的に難しいが、ミドルならばほんの少しコースをずらすだけなので比較的容易である。

またあえて高いボールを使うというのも良いだろう。基本的にはサービスでもレシーブでもドライブでも、なるべく低くネットをギリギリ超すようにコントロールするのが常である。しかしドライブであればあえて高い軌道を描くボールを送ることも有効であると言える。なるべく相手コート深くに、しっかりと回転をかけたドライブを送る事ができれば、返球のタイミングやラケット角度を狂わすことができる。特に競った場面などでは、カウンターで叩くのも勇気がいるし、とっさに足を動かすのも難しく、特に有効だといえるだろう。

まとめ

今回は同士討ちを制するためにというテーマでお話をしてきた。何よりもまずは弱点をしっかりと突くこと。そして少しだけでもいいので普段とは違うプレーをすること、この2点が大事である。加えて言えば、初見の相手よりもラリーが長く続く傾向にあるので、それを見越して試合に望む必要もあるだろう。

部活動やクラブチームだけでなく、トップレベルの選手たちであっても、味方との対決に勝たなければ重要な試合への参加権を掴みとることができないのである。今後同士討ちがある際にはぜひ参考にして頂ければ幸いである。

若槻軸足インタビュー記事

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