文:ラリーズ編集部
卓球界には独特なサーブを放つ選手が多い。
例えば、ドイツのドミトリ・オフチャロフ。185㎝以上ある身体を卓球台の下まで屈めてから強烈なバックサーブを放つ。ブラジルのウーゴ・カルデラノは天井近くまでボールを投げ上げるサーブを使い、日本の松平健太は自身の顔の横でしゃがみ込みながらボールに回転をかける“しゃがみ込みサーブ”を使用する。
写真:サービスの前、台の下に沈むドミトリ・オフチャフ(ドイツ)/提供:ittfworld
回転が重要視される卓球のサーブでは、選手によって創意工夫された回転のかけ方が無数に存在し、サーブが選手の個性としてよく表れる。
分かりにくい横回転サービスで世界を制した劉国梁(中国)
写真:2001年ITTFプロツアーグランドファイナルの劉国梁/撮影:アフロスポーツ
かつて「世界一サーブが上手い」と評された中国のレジェンド、劉国梁(リュウグォリャン)もそうだった。劉国梁が繰り出すサーブは、一言で表すと“異質”。
通常フォアサーブでは体重移動を体の後ろから前へ移動させてボールに体重を乗せるが、劉国梁は体重移動を前から後ろへ、腰をねじりながら引くようにサーブを切る。通常、右利きならば左足を体の前に持ってくるが、逆に右足を前にする独特なスタンスから「逆足サーブ」と呼称され、劉国梁の代名詞となった。
現在、劉国梁が引退して15年以上が経つが、現代卓球においても逆足サーブを使用する選手が存在する。今回は数あるサーブの中でも異質であり、希少な存在となった「逆足サーブ」に迫る。
逆足サーブの狙い
世界のトップ選手が繰り出すサーブには、必ず狙いが存在する。前述したオフチャロフのバックサーブは、強烈な横回転によって相手のレシーブを台から出させる効果があるため、自身が先手を取る狙いがある。
逆足サーブも同じく自身の攻撃につなげるためのサーブである。利き足を前に持ってくることで体をねじり、引き上げるようにサーブを切ることで、サーブ後自然と身体が相手を向く効果がある。
写真:サーブ後すぐに3球目の体勢に移れる/撮影:ラリーズ編集部
つまり、通常のサーブに比べてサーブ後の体勢が素早く整うため、サーブ後の3球目攻撃を万全な体勢で行うことができる。ペン表ソフトの劉国梁は、逆足サーブからの3球目攻撃から始まる前陣速攻を得意としていた。
また逆足サービスはタイミングが独特で、相手は対応することが難しい。使い手が少ないサービスであるからこそ、相手は取りにくく、価値を発揮する。
>>卓球の横回転サーブの打ち方 順横回転と逆横回転の比較も|卓球基本技術レッスン
現代でも見られる逆足サーブ
写真:逆足サーブ/撮影:ラリーズ編集部
劉国梁は引退してから中国ナショナルチームで指導を行い、サーブを次の世代へと伝承させている。世界選手権金メダルの王励勤(ワンリチン)や、閻安(ヤンアン)が使用するなど、中国選手の間では逆足サーブは珍しくない。
また昨今は“スウェーデンの新星”トルルス・モーレゴードが逆足サーブを積極的に使用するなど、ヨーロッパでも逆足サーブの使い手が現れた。特徴的な各選手のサーブに注目して観戦をしてみるのも面白いのではないだろうか。