文:ラリーズ編集部
今回は、東京五輪混合ダブルスで銅メダルを獲得し、Tリーグ・木下マイスター東京に所属する台湾のエース・林昀儒(リンユンジュ・チャイニーズタイペイ)を紹介します。プロフィール、使用用具、プレースタイルなどの基本的な情報から、世界ランキングを上げる要因となっている国際大会での戦績についても触れます。
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林昀儒とは
林昀儒は2019年6月に行われたジャパンオープンで、林高遠(リンガオユエン・中国)やウーゴ・カルデラノ(ブラジル)を破って準優勝に輝き、一躍話題となった選手です。
2021年に開催された東京五輪では、鄭怡静(チェンイーチン・チャイニーズタイペイ)との混合ダブルスで銅メダルを獲得しました。
林昀儒のプロフィール
林昀儒(リンユンジュ/LIN Yun-Ju )は2001年8月17日生まれの22歳(2024年7月時点)で、台湾の宜蘭県員山郷出身です。9歳の時に父が勤務していた大学のサマーキャンプで卓球に出会いました。小学5年生からプライベートコーチの指導を受けはじめると、弱冠14歳の若さで台湾代表入りを果たし、2016年の世界選手権に出場しました。
写真:林昀儒(リンユンジュ・チャイニーズタイペイ)/提供:©T.LEAGUE
2018年には当時開幕したばかりのTリーグにも岡山リベッツから参戦し、2シーズン在籍してシングルスで4勝を挙げました。
写真:林昀儒(リンユンジュ・チャイニーズタイペイ)/撮影:ラリーズ編集部
その後も国際舞台で経験を積んでいった林昀儒は、2019年のT2ダイヤモンドマレーシア大会で馬龍(マロン・中国)、樊振東(ファンジェンドン・中国)といった中国トップ選手を撃破し、17歳にして優勝を果たします。そして、続くシンガポール大会でも準優勝を飾り、林昀儒は一躍世界トップレベルの選手として知られるようになりました。
2020年には新型コロナウイルの流行により活動が制限される中、中国超級リーグに男子選手唯一の海外勢として参戦し、腕を磨きました。その中で、2021年のWTTコンテンダードーハでは男子シングルス準優勝、WTTスターコンテンダードーハでは混合ダブルス優勝を飾り、確かな成長を証明します。
写真:林昀儒(リンユンジュ)と鄭怡静(チェンイーチン・チャイニーズタイペイ)/提供:ITTF
そして同年、林昀儒にとって初の五輪となる東京五輪が開幕します。林昀儒は男子団体、男子シングルス、混合ダブルスの3種目に出場し、男子シングルスで4位、混合ダブルスで銅メダルという堂々の成績を残しました。
なお、五輪の卓球競技で台湾選手がメダルを獲得したのは2000年シドニー大会の陳静以来21年ぶりであり、台湾生まれの選手が五輪の卓球競技でメダルを獲得したのは史上初の快挙でした(陳静は中国からの帰化選手)。
写真:林昀儒(リンユンジュ)と鄭怡静(チェンイーチン・チャイニーズタイペイ)/提供:ITTF
大舞台で確かな成績を残した林昀儒は同年の世界選手権でも混合ダブルスで銅メダルを獲得し、自身初の世界選手権メダル獲得を達成します。
着実に成長を遂げていた林昀儒は更なる成長を求めて、2022-2023シーズンのドイツブンデスリーガにノイ・ウルムから参戦を発表します。同シーズンのノイ・ウルムには、ドミトリ・オフチャロフ(ドイツ)、トルルス・モーレゴード(スウェーデン)、張本智和といった世界トップレベルの選手が参戦し、大きな話題となりました。
林昀儒(リンインジュ・チャイニーズタイペイ)/提供:T.LEAGUE/アフロスポーツ
そして、2022年末には、Tリーグ復帰を電撃発表。自身2度目となるTリーグには木下マイスター東京から参戦し、復帰戦で2勝を挙げ、日本の卓球ファンを魅了しました。
林昀儒のプレースタイル
林昀儒の戦型は、左シェーク裏裏ドライブ型で、鋭いカウンター攻撃が特徴です。まだ、身体の線が細いですが、前陣での打点の早い連打が持ち味で、プレーに穴がなく安定したラリーが魅力です。また、チキータを多用して連続攻撃へとつなげるプレーも見られます。
サービスは時折見せるロングサービスで相手の待ちを外し、得点につなげている場面が多くみられます。また、林昀儒の特徴としてプレー全体に力みがありません。多くの選手は、試合の序盤から中盤にかけて緊張による力みやプレーの堅さが目立ちますが、林昀儒は試合最初から上半身がリラックスしていて、のびのびとしたプレーをしています。
力みがないことによって本来のプレーに加えて、相手の球威を利用したプレーも容易にできるようになっています。そのため林昀儒は、抜群の威力を誇る中国の選手との相性も良いです。馬龍とは直近の2試合で勝利し相性が良いと言えます。
林昀儒の使用用具
バタフライの契約選手である林昀儒は、ラケットはバタフライの『林昀儒 SUPER ZLC』で、ラバーはフォア面に『テナジー05ハード』、バック面に『ディグニクス05』を使用しています。
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林昀儒の世界ランキング
林昀儒の世界ランキングは7位(2024年8月時点)で、最高ランキングは5位(2021年8月)です。
2017年6月時点では241位だったものの、そこから国際大会で実績を残して着実に順位を伸ばし、2020年12月時点では7位まで伸ばしました。
林昀儒の主な戦績
2012年 | 東アジアホープス選手権 | 男子シングルス:優勝 |
2018年 | ハンガリーオープン | U21男子シングルス:優勝 |
2019年 | 中国オープン | 混合ダブルス:優勝 |
T2ダイヤモンドマレーシア大会 | 男子シングルス:優勝 | |
T2ダイヤモンドシンガポール大会 | 男子シングルス:準優勝 | |
オマーンオープン | 男子シングルス:優勝 | |
チェコオープン | 男子シングルス:優勝 | |
ワールドカップ | 男子シングルス:ベスト4 | |
グランドファイナル | 男子ダブルス:準優勝、混合ダブルス:ベスト4 | |
2021年 | WTTコンテンダードーハ | 男子シングルス:準優勝、混合ダブルス:優勝(ペア:鄭怡静) |
WTTスターコンテンダードーハ | 混合ダブルス:優勝(ペア:鄭怡静) | |
東京五輪 | 男子シングルス:4位、混合ダブルス:銅メダル(ペア:鄭怡静) | |
世界選手権ヒューストン大会 | 混合ダブルス:銅メダル(ペア:鄭怡静) | |
2022年 | WTTシンガポールスマッシュ | 男子シングルス:ベスト8、混合ダブルス:準優勝(ペア:鄭怡静) |
WTTコンテンダーザグレブ | 男子シングルス:優勝 | |
WTTコンテンダーアルマトイ | 男子シングルス:準優勝、男子ダブルス:優勝、混合ダブルス:準優勝 | |
WTTチャンピオンズマカオ | 男子シングルス:ベスト4 | |
2023年 | WTTシンガポールスマッシュ | 男子ダブルス:ベスト4(ペア:荘智淵)、混合ダブルス:ベスト4(ペア:陳思羽) |
WTTチャンピオンズ新郷 | 男子シングルス:ベスト4 | |
世界選手権ダーバン大会 | 男子シングルス:ベスト8 | |
WTTコンテンダーチュニス | 混合ダブルス:優勝(ペア:陳思羽) | |
WTTコンテンダーアルマトイ | 男子シングルス:優勝、混合ダブルス:準優勝(ペア:陳思羽) | |
アジア選手権 | 男子シングルス:銀メダル、混合ダブルス:銅メダル(ペア:陳思羽)、男子団体:銀メダル | |
杭州アジア競技大会 | 男子ダブルス:銅メダル(ペア:荘智淵)、男子団体:銅メダル | |
WTTコンテンダーマスカット | 混合ダブルス:優勝(ペア:陳思羽) | |
WTTチャンピオンズフランクフルト | 男子シングルス:優勝 | |
2024年 | WTTコンテンダードーハ | 男子シングルス:ベスト4 |
世界選手権釜山大会 | 男子団体:銅メダル | |
WTTシンガポールスマッシュ | 男子シングルス:ベスト4、混合ダブルス:ベスト4(ペア:陳思羽) | |
WTTスターコンテンダーバンコク | 男子シングルス:ベスト4、混合ダブルス:ベスト4(ペア:陳思羽) |
まとめ
若くして国際大会で成果を残し、メキメキと実力を伸ばしている林昀儒。まだまだ成長過程にある台湾の期待の選手として、活躍が今後も期待されます。