文:ラリーズ編集部
リオ五輪団体銅メダルを獲得し、自己最高世界ランキングは2位と日本人最上位につける卓球黄金世代の一人、伊藤美誠選手を紹介します。プロフィール、使用用具、プレースタイルなどの基本的な情報から、国際大会での戦績についても触れていきます。
卓球女子の黄金世代の一角として幼少期から注目されている伊藤美誠のプロフィールを見ていきましょう。
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伊藤美誠とは?
伊藤美誠とは、全日本選手権で2018、19と2年連続の3冠を達成し、世界ランキングでは中国選手の分厚い壁を一人突き破り3位(2021年4月時点)に君臨する、日本の卓球選手です。
2020年には、2大会連続の五輪代表に内定し、全日本選手権では女子ダブルス、混合ダブルスの2冠を達成。ITTFワールドツアー2020では、ハンガリーOPで優勝、カタールOPで準優勝と圧巻の結果を残しています。
また、繊細な台上技術、フットワークを生かしシングルスだけでなくダブルスでも活躍し、東京五輪では水谷隼(木下グループ)と組む混合ダブルスでも代表に内定しており、メダル獲得が期待されます。
プロフィール
伊藤美誠は2000年10月21日生まれの20歳(2021年4月時点)です。静岡県磐田市出身で、2歳の終わりから卓球を始めました。
2008年の全日本選手権バンビの部(小2以下)、2010年の全日本選手権カブの部(小4以下)でそれぞれ優勝を果たし、2011年の全日本選手権では一般の部で大会史上最年少勝利の記録を更新しました。
写真:伊藤美誠(スターツ)/撮影:ラリーズ編集部
2013年のドイツオープンでは平野美宇(日本生命)と組んだ女子ダブルスでワールドツアー初優勝を果たし、史上最年少でのツアーダブルス優勝を記録しました。
2015年には、ドイツオープン女子シングルスで世界最年少優勝記録を樹立し、ギネス記録に認定されました。また、その年の世界選手権蘇州大会では、破竹の快進撃で準々決勝に進出。2003年パリ大会での福原愛の持つ記録を塗り替え、日本選手歴代最年少ベスト8入りを果たしました。
その後2015年9月発表の世界ランキングで日本選手3番手の10位となり、リオデジャネイロ五輪女子団体戦代表候補選手に選出されました。
翌年のリオ五輪では、女子団体3位決定戦で、ロンドン五輪銅メダリストの馮天薇(フォンティエンウェイ・シンガポール)に勝つなど大活躍し、最年少の15歳300日で銅メダルを獲得しました。
写真:伊藤美誠(スターツ)/提供:ittfworld
2017年の世界選手権ドイツ大会では早田ひな(日本生命)と組んだ女子ダブルスで銅メダルを獲得しました。
2018年の全日本選手権では女子シングルス、女子ダブルス、混合ダブルスを全て制し3冠を達成。その年の世界選手権団体戦スウェーデン大会では、決勝で中国の劉詩雯(リュウスーウェン)に勝つなど8戦全勝と日本を準優勝に導く活躍をし、同大会の最優秀選手賞を受賞しました。
さらに、6月のジャパンOPで中国の王曼昱(ワンマンユ)を下し優勝を果たすと、11月のスウェーデンOPでは、劉詩雯、丁寧(ディンニン)、朱雨玲(ジュユリン)に勝つ圧巻のプレーで優勝。卓球帝国から最も恐れられる選手の一人としてその名を世界に轟かせました。
写真:伊藤美誠(スターツ)/提供:ittfworld
2019年の全日本選手権でも別次元の強さを発揮し、女子史上初となる2年連続の3冠を達成しました。その年の世界選手権ハンガリー大会では早田ひなと組むダブルスで銀メダルを獲得。
11月に行われたチームワールドカップでは、ホームの観客の前で決勝で同年代のライバル、孫穎莎(スンイーシャ・中国)と大熱戦を展開。マッチポイントを握るも逆転負けを喫し、チームも敗れて準優勝に終わりました。
2020年1月には、東京五輪のシングルス、団体戦、混合ダブルスの代表に内定したことが発表されました。その後ハンガリーOPで優勝、カタールOPで準優勝を果たすなど、さらにそのプレーに磨きをかけています。さらに、同年4月には世界ランキングで日本選手歴代最高となる2位となりました。
伊藤美誠公式インスタグラム
プレースタイル
伊藤美誠の戦型は、右シェークバック表の前陣速攻型です。バック面に表ソフトラバーを貼り、ナックルボールを効果的に用い相手を翻弄します。
伊藤が中国選手たちから恐れられている原因は他の選手には真似できない伊藤の独創的な技術の数々にあります。まず、伊藤のサーブ。近年は様々なフォームからの巻き込みサーブを軸とし、その中に順回転のサーブや切り方の違う逆系のサーブ、そしてロングサーブを混ぜて相手に的を絞らせないような配球を見せます。
中でも目を引くのは、巻き込みサーブを出すときの独特の構え。その後のラリーに備えコンパクトなサーブを出す女子選手が多い中、伊藤のダイナミックなフォーム、そして素早いスイングスピードで放たれる巻き込みサーブは、唯一無二の武器となっています。
また、レシーブでは、バックの表ソフトラバーでのチキータ、逆チキータ、ストップなど多彩な台上技術で相手を翻弄し、先手を取ることができます。中国の孫穎莎や陳夢(チェンムン)は、その台上での多彩なレシーブを嫌がり、伊藤のバックサイドに強烈な下回転をかけたサーブや深く速いロングサーブを出し、ラリーに持ち込む戦術を多用します。
伊藤は、相手の回転をうまく利用し、本来回転のかけづらい表ソフトでバックドライブを打つことができます。さらに、本来フォアドライブで攻撃するようなボールも、伊藤は「みまパンチ」と呼ばれるフォアスマッシュで打ち抜いていきます。
ミドルに来たボールに対しては表ソフトで変化をつけて返し、低く厳しいボールは回転量のあるドライブで攻撃、甘いボールは回転量の少ないスマッシュで打ち抜く伊藤のプレーは、中国選手の予測をはるかに超え、対中国相手にも互角以上の勝負を展開します。
また、伊藤はカット打ちの名手としても名を馳せています。普通のプレイヤーがドライブ連打で攻略していくのに対し、伊藤は回転量に変化をつけ、両サイドへのスマッシュ攻撃で押していき、また表ソフトによる前後の揺さぶりも効果的に用いるため、カットマンにとって天敵と言える存在でしょう。
使用用具
伊藤美誠の使用ラケットは、ニッタクの「アコースティックカーボン」で、ラバーはフォア面に「ファスタークG-1」、バック面に「モリストSP」を使用しているようです。
世界ランキング
伊藤美誠は、2015年3月に38位だった世界ランクを、翌月の4月に一気に15位まで伸ばし、6月に9位を記録し、初の世界ランキングトップ10入りを果たしました。そこから現在までほとんど10位以内をキープし、世界の第一線で活躍し続けます。
そして2020年4月には過去最高となる2位にランクインし、日本人として歴代最高記録を更新しました。伊藤美誠の現在の世界ランキングは3位(2020年4月時点)です。
主な成績
国内大会
2008年 | 全日本選手権 | バンビの部優勝 |
2010年 | 全日本選手権 | カブの部優勝 |
2015年 | 全日本選手権 | ジュニアの部優勝 |
2016年 | 全日本選手権 | 女子シングルス ベスト4 |
2018年 | 全日本選手権 | 女子シングルス、女子ダブルス、混合ダブルス優勝 |
2019年 | 全日本選手権 | 女子シングルス、女子ダブルス、混合ダブルス優勝 |
2020年 | 全日本選手権 | 女子シングルス ベスト4、女子ダブルス、混合ダブルス優勝 |
国際大会
2014年 | ドイツオープン | 女子ダブルス優勝 |
スペインオープン | 女子ダブルス優勝 | |
ワールドツアーグランドファイナル | 女子ダブルス優勝 | |
2015年 | ドイツオープン | 女子シングルス優勝 |
世界選手権蘇州大会 | 女子シングルス ベスト8 | |
ベラルーシオープン | 女子シングルス優勝 | |
ワールドツアーグランドファイナル | 女子ダブルス優勝 | |
2016年 | 世界選手権団体戦マレーシア大会 | 女子団体 準優勝 |
リオデジャネイロ五輪 | 女子団体銅メダル | |
オーストリアオープン | 女子シングルス優勝 | |
世界ジュニア選手権 | 女子団体優勝 | |
2017年 | 世界選手権ドイツ大会 | 女子ダブルス3位 |
ベラルーシオープン | 女子シングルス優勝 | |
チェコオープン | 女子シングルス、女子ダブルス優勝 | |
ワールドツアーグランドファイナル | 女子ダブルス準優勝 | |
2018年 | 世界選手権団体戦スウェーデン大会 | 女子団体準優勝 |
ジャパンオープン | 女子シングルス優勝 | |
スウェーデンオープン | 女子シングルス優勝 | |
ワールドツアーグランドファイナル | 女子ダブルス優勝 | |
2019年 | 世界選手権ハンガリー大会 | 女子ダブルス準優勝 |
香港オープン | 女子シングルス準優勝 | |
ブルガリアオープン | 女子シングルス ベスト4、混合ダブルス優勝 | |
スウェーデンオープン | 女子シングルス準優勝、混合ダブルス準優勝 | |
ドイツオープン | 女子シングルス準優勝 | |
卓球ワールドカップ団体戦 | 女子団体準優勝 | |
オーストリアオープン | 女子シングルス優勝 | |
T2ダイヤモンド シンガポール | 女子シングルス準優勝 | |
ワールドツアーグランドファイナル | 女子シングルス ベスト4、混合ダブルス準優勝 | |
2020年 | ドイツオープン | 混合ダブルス準優勝 |
ハンガリーオープン | 女子シングルス優勝 | |
カタールオープン | 女子シングルス準優勝、混合ダブルス優勝 |
まとめ
今回は、リオ五輪銅メダリスト、今中国が最も恐れるプレイヤーであろう伊藤美誠選手を紹介しました。東京五輪でのシングルス金メダル獲得もますます現実味を増してきています。
卓球帝国・中国の想定を悠々と越え、独自の卓球スタイルを進化させ続け、「無敗の女」を目指す伊藤美誠選手の今後の活躍に、これからも離せません。