意識が変われば行動が変わる、とよく聞く。今年のインターハイで女子学校対抗3位に入った就実高校卓球部にぴったりな言葉かもしれない。
就実高校卓球部の練習場は、冷暖房があるわけでもなく、赤マットが敷かれているわけでもないごく普通の学校の体育館だ。他の部活と兼用のスペースもある。
写真:就実高校卓球部の練習風景/撮影:ラリーズ編集部
その環境の中で「日本一」という目標を掲げ、徹底した意識改革で、インターハイ女子シングルスで枝廣愛が、女子ダブルスで枝廣愛/吉井亜紀ペアが3位入賞と学校対抗含む全3種目で全国3位を掴み取った。
過去には五輪代表やインターハイ女王を輩出した名門校の選手たちは、どのようにして強くなるのだろうか。就実高校卓球部にお邪魔し、その秘訣を探った。
【就実高校卓球部】岡山県の卓球強豪校。2021年のインターハイでは女子学校対抗3位、女子シングルス3位(枝廣愛)、女子ダブルス3位(枝廣愛/吉井亜紀ペア)と好成績を収めた。過去のインターハイでは平成18年度に女子シングルスで宇土弘恵が、平成10年度に女子ダブルスで藤井聖子/小野磨奈美ペアが優勝に輝いている。また、2000年シドニー五輪女子卓球日本代表の内藤和子も就実高校卓球部OG。
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インハイ全種目3位入賞 「少しホッとした」
写真:安田征弘監督 学生時代は名門・東山高校でプレー/撮影:ラリーズ編集部
練習場に貼られた「日本一」の文字
だから学校対抗準決勝で四天王寺に0-3負けと差がある結果になってしまって、「結局四天王寺に勝つのは無理なんだ…」となりかけたところを、枝廣がシングルスで四天王寺の面田(采巳)選手に勝ってくれたので、少しホッとしました。
インターハイシングルスで勝利したあとの枝廣愛と安田監督の肘タッチ
“自分が気持ち良いだけの練習”はいらない
写真:インターハイシングルスベスト16、ダブルス3位の吉井亜紀(2年)/撮影:ラリーズ編集部
インターハイではエースの枝廣がシングルス3位まで駆け上がった
練習では、ガンガン打ってそれをカウンターするような、いわゆる“ラリーが続かない練習”をやって、そこを“続くようにしていく練習”をずっとやってます。
試合と練習がかけ離れる選手も多いので、むしろ課題練習はゲーム練習をして自分の課題が見えた後に必ずやるなど徹底してます。
取材中もゲーム練習が行われていた
メンタルトレーナーによる意識改革
写真:就実高校卓球部の練習風景/撮影:ラリーズ編集部
枝廣は「先生の話聞いて、意識が変わらない人の感覚が分からないです」とまで言ってましたね(笑)。
シングルス・ダブルスでともにインターハイ3位入賞の枝廣愛(3年)
他のチームとは練習の意識から違うから、特別良い環境でもない中で全国3位になれたんだと思いますね。
他の部活とも一部を兼用するごく普通の学校の体育館で練習し、就実は全国3位に輝いた
枝廣愛もメンタルの指導で変わった
ここでインターハイシングルス3位、ダブルス3位の成績を残した就実高校卓球部のエース・枝廣愛に、就実高校卓球部についてを聞いた。
また、岡澤先生によるメンタルの指導にも感銘を受けたと伺いました。どういう点が良かったんですか?
それを聞いて、今までの試合では「これ入らなかったらどうしよう」とビビってやらずに負けちゃうことがあったんですけど、先生のお話を聞いて、負けるにしてもちゃんとやって負けないといけないなと思って、試合ができるようになりました。
やるべきことをやって負けたら仕方ない
再び安田監督。今後のことを尋ねた。
写真:練習を見つめる安田征弘監督 学生時代は名門・東山高校でプレーした/撮影:ラリーズ編集部
他のメンバーも結構強いんです。ただ、そこから全国トップに行くには、技術も意識もまだ足りていない。
まあそこは僕の仕事で、どうしたら全国のトップと競争できるのかを考えて、技術を身につけさせてあげる。そこから「私たちは日本一になれる」という意識になって、努力や行動が始まるかなと思ってます。
新チームではエースとしての働きが期待される吉井亜紀(就実高校)
岡澤先生も柔道の野村さんに「負けてもいいやん。負けたら日本に帰ろう(笑)」くらいで声を掛けてたらしくて、だから私も真似して、今はあんまり負けて怒ることはしないですし、「負けたらまた帰って練習しよう」って言うだけですね。
写真:就実高校卓球部メンバー/撮影:ラリーズ編集部
取材後、岡山駅まで送ってもらう車中(ありがとうございます)で、運転しながら安田監督がこうつぶやいた。
「最終的にはちゃんと自分の意思で選べる人生を歩んでほしいんですよね」。
就実は、ただ一生懸命がむしゃらに頑張るのではなく、結果の出る努力をどのようにしていくかを考える。それは、社会に出たときこそ大切な考え方だからだ。
「そういうことを卓球で感じたり、身につけたりして、選手たちには幸せになってほしいですね」。
就実高校卓球部の強さの理由が垣間見えた気がした。