「"自分が気持ち良いだけの練習"はいらない」徹底した意識改革で全国3位の就実高校卓球部 | 卓球メディア|Rallys(ラリーズ)

写真:就実高校卓球部メンバー/撮影:ラリーズ編集部

卓球インタビュー 「“自分が気持ち良いだけの練習”はいらない」徹底した意識改革で全国3位の就実高校卓球部

2021.10.03

この記事を書いた人
Rallys編集長。学生卓球を愛し、主にYouTubeでの企画を担当。京都大学卓球部OB。戦型:右シェーク裏裏

意識が変われば行動が変わる、とよく聞く。今年のインターハイで女子学校対抗3位に入った就実高校卓球部にぴったりな言葉かもしれない。

就実高校卓球部の練習場は、冷暖房があるわけでもなく、赤マットが敷かれているわけでもないごく普通の学校の体育館だ。他の部活と兼用のスペースもある。


写真:就実高校卓球部の練習風景/撮影:ラリーズ編集部

その環境の中で「日本一」という目標を掲げ、徹底した意識改革で、インターハイ女子シングルスで枝廣愛が、女子ダブルスで枝廣愛/吉井亜紀ペアが3位入賞と学校対抗含む全3種目で全国3位を掴み取った。

過去には五輪代表やインターハイ女王を輩出した名門校の選手たちは、どのようにして強くなるのだろうか。就実高校卓球部にお邪魔し、その秘訣を探った。


【就実高校卓球部】岡山県の卓球強豪校。2021年のインターハイでは女子学校対抗3位、女子シングルス3位(枝廣愛)、女子ダブルス3位(枝廣愛/吉井亜紀ペア)と好成績を収めた。過去のインターハイでは平成18年度に女子シングルスで宇土弘恵が、平成10年度に女子ダブルスで藤井聖子/小野磨奈美ペアが優勝に輝いている。また、2000年シドニー五輪女子卓球日本代表の内藤和子も就実高校卓球部OG。

インハイ全種目3位入賞 「少しホッとした」


写真:安田征弘監督 学生時代は名門・東山高校でプレー/撮影:ラリーズ編集部

――今年のインターハイでは女子学校対抗、女子シングルス(枝廣愛)、ダブルス(枝廣愛/吉井亜紀ペア)全て3位と好成績でした。
安田監督:枝廣、吉井のツインエースがいて、そこまで行けなかったら逆に叩かれるんじゃないかなと思ってました(笑)。


練習場に貼られた「日本一」の文字

――目標はもっと高く設定していたわけですね。
安田監督:日本一を目標にして、打倒四天王寺を掲げてずっとやってきていました。

だから学校対抗準決勝で四天王寺に0-3負けと差がある結果になってしまって、「結局四天王寺に勝つのは無理なんだ…」となりかけたところを、枝廣がシングルスで四天王寺の面田(采巳)選手に勝ってくれたので、少しホッとしました。


インターハイシングルスで勝利したあとの枝廣愛と安田監督の肘タッチ

“自分が気持ち良いだけの練習”はいらない

――日本一を目指す中、練習で意識していた点はありますか?
安田監督:安定感ある“負けない卓球”ではなく攻撃的な“勝てる卓球”をすることです。


写真:インターハイシングルスベスト16、ダブルス3位の吉井亜紀(2年)/撮影:ラリーズ編集部

――ハイリスクハイリターンな卓球ということでしょうか?
安田監督:そうです。ハイリスクな打球を入れるように練習すれば、ローリスクな卓球をする相手には負けないという自信はありました。


インターハイではエースの枝廣がシングルス3位まで駆け上がった

――でもハイリスクな卓球をしようとすると、練習でどうしてもミスが増えます。頭ではわかっていてもプレーする生徒たちは、不安で入れに行きたいとはなりませんか?
安田監督:そこは何のために練習してるの?っていう意識のところですね(笑)。大事なのは試合で勝つことですから。
――おっしゃるとおり、私の意識が低かったです(笑)
安田監督:課題練習でも自分が気持ち良いだけの練習をする選手が多いんですけど、「そんなんいらん」と課題練習を減らしました。

練習では、ガンガン打ってそれをカウンターするような、いわゆる“ラリーが続かない練習”をやって、そこを“続くようにしていく練習”をずっとやってます。

試合と練習がかけ離れる選手も多いので、むしろ課題練習はゲーム練習をして自分の課題が見えた後に必ずやるなど徹底してます。


取材中もゲーム練習が行われていた

メンタルトレーナーによる意識改革

――試合を意識した練習が、就実の強さの1つの要因だったんですね。
安田監督:あとはメンタルトレーナーを招いて、意識から変えられているのも特徴の1つかもしれません。


写真:就実高校卓球部の練習風景/撮影:ラリーズ編集部

――え、それは卓球専門のメンタルトレーナーがいらっしゃるんですか?
安田監督:いえ、その先生は過去にプロ野球の東北楽天ゴールデンイーグルスや柔道で五輪3連覇の野村忠宏さんのメンタルトレーナーもされていた方で、僕は以前、奈良女子高校でも卓球部の監督をしていて、その頃からお世話になっています。
――なんていう方ですか?
安田監督:岡澤祥訓先生です。
――そんなにいろんなスポーツのメンタルトレーナーをされてるのに、恥ずかしながら初耳でした。
安田監督:就実にも年に1,2回来てもらっていて、岡澤先生から「大事なのはやるべきことをやること。だからミスをしない練習よりも、どんどんミスして良いから、それを入れる練習をすれば強くなる」というようなメンタル面の話をたくさんしてもらいました。

枝廣は「先生の話聞いて、意識が変わらない人の感覚が分からないです」とまで言ってましたね(笑)。


シングルス・ダブルスでともにインターハイ3位入賞の枝廣愛(3年)

安田監督:そこから、“ミスを怖がる”んじゃなくて、“ミスしてもいいから良いボールを打つ”と意識が変わって、練習中の打球音も当てただけの“ポンポン”からしっかり振り切った“カンカン”に変わって、練習の質も大きく変わりました。

他のチームとは練習の意識から違うから、特別良い環境でもない中で全国3位になれたんだと思いますね。


他の部活とも一部を兼用するごく普通の学校の体育館で練習し、就実は全国3位に輝いた

枝廣愛もメンタルの指導で変わった

ここでインターハイシングルス3位、ダブルス3位の成績を残した就実高校卓球部のエース・枝廣愛に、就実高校卓球部についてを聞いた。

――就実高校で強くなったと感じますか?
枝廣愛:安田先生に会ってから、自分の卓球はガラっと変わりました。安定しながらも、相手よりも速い攻めで決まるようになったので、すごい良くなったと思います。
――試合で勝つことを意識した練習が就実の特徴かと思うのですが、枝廣選手が意識していたことはありますか?
枝廣愛:四天王寺さん、明徳義塾さん、リベルテさんなど、全国上位は強いです。だから普段の練習中、先にミスをされたら自分も練習にならないので、そこは厳しく言うこともあります。
――日本一になるには厳しい部分も必要ですよね…。

また、岡澤先生によるメンタルの指導にも感銘を受けたと伺いました。どういう点が良かったんですか?

枝廣愛:「もし負ける場合でも、やらずに負けるより、後悔しないプレーをしよう」という話でした。

それを聞いて、今までの試合では「これ入らなかったらどうしよう」とビビってやらずに負けちゃうことがあったんですけど、先生のお話を聞いて、負けるにしてもちゃんとやって負けないといけないなと思って、試合ができるようになりました。

やるべきことをやって負けたら仕方ない

再び安田監督。今後のことを尋ねた。


写真:練習を見つめる安田征弘監督 学生時代は名門・東山高校でプレーした/撮影:ラリーズ編集部

――新チームについてはどうですか?
安田監督:吉井がまだ2年生なのですが、やっぱりもう1人エース級がいないとな、と思ってます。

他のメンバーも結構強いんです。ただ、そこから全国トップに行くには、技術も意識もまだ足りていない。

まあそこは僕の仕事で、どうしたら全国のトップと競争できるのかを考えて、技術を身につけさせてあげる。そこから「私たちは日本一になれる」という意識になって、努力や行動が始まるかなと思ってます。


新チームではエースとしての働きが期待される吉井亜紀(就実高校)

――枝廣選手は、その技術や意識が良かったんですね。
安田監督:そうですね、今回のインターハイに関しては、チームとしてある程度そういう風にできたので、良かったと思います。「やるべきことやってるよね。だから最終的に負けても仕方ないやん」っていう状態でした。

岡澤先生も柔道の野村さんに「負けてもいいやん。負けたら日本に帰ろう(笑)」くらいで声を掛けてたらしくて、だから私も真似して、今はあんまり負けて怒ることはしないですし、「負けたらまた帰って練習しよう」って言うだけですね。


写真:就実高校卓球部メンバー/撮影:ラリーズ編集部

取材後、岡山駅まで送ってもらう車中(ありがとうございます)で、運転しながら安田監督がこうつぶやいた。

「最終的にはちゃんと自分の意思で選べる人生を歩んでほしいんですよね」。

就実は、ただ一生懸命がむしゃらに頑張るのではなく、結果の出る努力をどのようにしていくかを考える。それは、社会に出たときこそ大切な考え方だからだ。

「そういうことを卓球で感じたり、身につけたりして、選手たちには幸せになってほしいですね」。

就実高校卓球部の強さの理由が垣間見えた気がした。

取材動画はこちら

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