"伊藤美誠の練習拠点"関西卓球アカデミーに潜入 競技未経験の代表が語る卓球愛 | 卓球メディア|Rallys(ラリーズ)

写真:伊藤弘美さん(関西卓球アカデミー)/撮影:槌谷昭人

卓球インタビュー “伊藤美誠の練習拠点”関西卓球アカデミーに潜入 競技未経験の代表が語る卓球愛

2021.06.28

この記事を書いた人
Rallys副編集長。学生卓球を愛し、主にYouTubeでの企画を担当。京都大学卓球部OB。戦型:右シェーク裏裏

日本女子卓球のエース・伊藤美誠(スターツ)が練習拠点としているのが関西卓球アカデミーだ。中国人トレーナーや日本卓球リーグ2部新人賞の坂根翔大ら実業団選手が伊藤の練習相手を務める。


写真:関西卓球アカデミーの壁面に貼られた垂れ幕/撮影:槌谷昭人

また、坂根らは実業団として日本卓球リーグに参戦する傍ら、関西卓球アカデミーに通う小学生も指導するコーチとしても働いている。6月には全国ホープス卓球大会大阪府予選会で男子優勝、全日本クラブ卓球選手権大会大阪府予選の小・中学生の部で女子優勝と、ジュニア指導も着実に成果を出している。

関西卓球アカデミーとはいったいどのような場所なのだろうか。代表の伊藤弘美さんに話を聞いた。

身近で見ていたから感じる伊藤美誠のスゴさ

――関西卓球アカデミーの設立経緯について、まず伺ってもよろしいでしょうか?
伊藤弘美さん:まず、関東にはエリートアカデミーがありますよね。「関西でも同じようなところを作って、支援したいね」という話を村上(恭和・現日本生命レッドエルフ総監督)さんとしていたのがきっかけです。

「関西卓球アカデミー」という名前は私がつけて、最初は村上さんと一緒にやっていました。


写真:関西卓球アカデミー/撮影:槌谷昭人

――今では伊藤美誠選手もが練習拠点にされてますね。
伊藤弘美さん:伊藤選手は、静岡にいた小学生時代からたまに練習に来ていました。たまたま機会があって大阪の昇陽中学に入学し、お母さんがここだったらしっかりと練習できると感じて、拠点にしてくれたのだと思います。
――当時伊藤さんは、伊藤美誠選手の練習に関してどういうサポートをされているんでしょうか?
伊藤弘美さん:関西の強豪校や実業団に練習行かせてもらったり、練習来てもらったり、そういうマネージメントを私はやっていました。
――今や伊藤美誠選手は世界2位まで上り詰めましたね。
伊藤弘美さん:彼女が成績を出したのは彼女の努力と苦労があり、周りの家族のサポートがあったからこそですが、それをサポートさせて貰ったことは幸せだと思いました。

こんなことはしたくてもできないじゃないですか。私こそ幸せですね。

――長い間、伊藤美誠選手を傍で見てきて、どこが優れていると感じますか?
伊藤弘美さん:特に観察力がすごいですね。人のことをよく見ていて、「弘美さん、昨日と違って今日はこうね」など他人が自分でも忘れてるような部分をよく見ています。

あとは賢いです。卓球でも感じますが、話も上手ですし、急に話を振られても怖じ怖じしません。小さいときからずっとそうですね。

「見ていたら私がワクワクするんです」伊藤代表の卓球愛

――伊藤美誠選手の練習拠点というイメージがありますが、関西卓球アカデミーでは、ジュニア世代の指導もされてますよね?
伊藤弘美さん:開設当初は中学高校がメインでしたが、今はもうちょっと年齢層が低くなってきましたね。

以前は強い子しか行けないというイメージで敷居が高かったみたいでしたが、初心者からも気軽に来れるようにHPを作り変えたり、少し月謝も安くしたりして、小学生だけではなくて、今は幼稚園の子も来ています。

――小学生以下の年代を中国人の王子コーチや坂根選手ら実業団選手が教えているというかなり豪華な指導陣ですね。
伊藤弘美さん:これは伊藤選手が関西卓球アカデミーに残るとなったときに、普通のコーチ陣のレベルではダメだと感じ、私が強い選手を多く雇ったんです(笑)。


写真:コーチも務めながら日本リーグにも出ている坂根翔大(関西卓球アカデミー)/撮影:ラリーズ編集部

伊藤弘美さん:コーチは強いし、彼らもやりがいを持てるように日本リーグに参戦したら良いと思って2020年から参戦しました。

介護施設や保育園も持っているので、そこで働いてもらいながら、卓球のコーチの仕事もするし、自分の選手としての練習もできるし、試合も出られる。そういう風にしてあげられたら良いなと思ってのことです。

――卓球選手にとってはとても良い職場ですね。どうして伊藤さんはそこまで卓球に力を入れられるんですか?
伊藤弘美さん:実は私は卓球経験者ではないんです。

でもコーチ達は、一生懸命働いて、卓球の試合も一生懸命プレーしています。見ていたら私がワクワクするんですよ。

伊藤弘美さん:やっぱり卓球が好きなんですよね。卓球をするわけじゃないのに、一緒に試合に行って観てると燃えるんですよ。

「なんで負けるのだろう。原因はひょっとして私にあるのかな?もっと練習量がいるな」とか「もっと仕事を時短して卓球の時間作ってあげないといけないな」とか、勝つために色々思うんです。

人から教えられるより自分の目で見て感じるタイプなので、卓球界で最初は色々苦労しましたが、好きなことだから苦労も面白いですよ。

――卓球経験者でないのに、そこまで卓球への思い入れを持たれているのが嬉しいですし、素晴らしい取り組みですね。
伊藤弘美さん:コーチ達の一生懸命な姿を見てると、卓球人生を終えたあとも面倒を見てあげないといけないという責任感も湧いてきました。

だから、卓球だけして終わりではなくて、アカデミーを運営できるように仕事も教えていこうと思ってます。一般常識的な基本から、ビジネスのやり方なども全部教えています。

卓球経験者が経営者としてチームや選手をサポートする例は多いが、伊藤さんのように、まったく競技歴がないにも関わらず、ここまで卓球事業と、選手のセカンドキャリア支援に力を入れる経営者も珍しい。

柔らかな関西弁に流れる“卓球愛”を感じた。

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