龍谷大平安高卓球部に潜入 "絶対王者"に挑み続ける男子、創部10年目で全国ランカー誕生の女子 | 卓球メディア|Rallys(ラリーズ)

写真:龍谷大平安高校卓球部メンバー/撮影:ラリーズ編集部

卓球インタビュー 龍谷大平安高卓球部に潜入 “絶対王者”に挑み続ける男子、創部10年目で全国ランカー誕生の女子

2021.12.11

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Rallys編集長。学生卓球を愛し、主にYouTubeでの企画を担当。京都大学卓球部OB。戦型:右シェーク裏裏

学生スポーツはいつも予想できないドラマが起こる。だから面白い。

2016年、当時京都府で65回連続インターハイ出場中だった“絶対王者”東山高校卓球部を相手に、ミラクルを起こしたのが龍谷大平安高校男子卓球部だ。インターハイ予選の東山戦、前半0-2のビハインドから大逆転勝利を決め、たった1枠しかない学校対抗出場枠を勝ち取った。その勢いのまま臨んだインターハイ本戦でも快進撃を見せ、学校対抗第5位という記録を残した。


写真:2016年のインターハイ学校対抗第5位に入賞した龍谷大平安高/提供:龍谷大平安高校卓球部

時は流れ2021年、次は龍谷大平安高校女子卓球部が輝きを放った。創部10年目で2度目の出場となったインターハイ学校対抗で初勝利をあげると、主将・大村風葉がシングルス2、3、4回戦をフルゲームで勝利し、ベスト16とランク入りを果たした。

今回は、龍谷大平安高校の男女卓球部に潜入し、それぞれの監督、主将に話を聞いた。


【龍谷大学付属平安高校卓球部】京都府の卓球強豪校。男女卓球部があり、女子は創部10年目の2021年インターハイ学校対抗で初勝利、主将の大村風葉がシングルスベスト16とランク入りを果たした。男子はインターハイ学校対抗1枠を争い、毎年東山高校に挑み続けている。元・クローバー歯科カスピッズの加藤駿や関西学生ランカーの山下海大(近畿大)らを卒業生として輩出。

目標は「打倒・東山高校」


写真:島田英明監督(龍谷大平安高)1998年から監督に就任し、監督生活23年目 自身も龍谷大平安高のOB/撮影:ラリーズ編集部

――京都府では東山高校という“絶対王者”がいます。その中で戦う思いを中心にお話を伺えればと思います。
島田監督:自分もOBなので、平安を何とか全国に轟かせたいという思いでずっとやってきています。

京都には東山高校がありますので、ここを倒さないと全国に行けません。東山高校の伝統をなんとか打ち崩したいと思ってやってきました。

目的は人間形成、目標が打倒・東山高校、そして全国で常勝できるチーム作りとしています。


写真:練習中に指導する島田監督(龍谷大平安高)/撮影:ラリーズ編集部

――目標達成に向けて工夫している点はどういうところでしょうか?
島田監督:完全下校が学校の制度として19時となっていて、時間が本当に限られています。

なので放課後の練習が4時から実質2時間半くらいしかできない中で、いかに質を高めていくかということを日々考えて取り組んでいます。

――その他、強くなるために工夫している点はありますか?

島田監督:選手個々人が自主的に朝練習しています。6時半すぎから来る子もいます。

また、練習が7時に終わった後、近くのクラブチームに練習場を求めて行ったり、自分たちが育ってきたクラブチームに戻って練習したりと、規定練習以外の時間を上手に使っているところが一つ大きな点と思っています。


写真:龍谷大平安高校の練習風景/撮影:ラリーズ編集部

――工夫しながら打倒・東山高校を目標に戦っているんですね。
島田監督:東山高校は全国経験者も多く、私たちからするとエリート的存在です。逆に平安は全国の経験が少ない選手ばかりで、中学の時に近畿大会にすら出ていない子達が入学してきます。

約2年半という時間の中で東山高校をやっつけなければいけない。壁としては分厚いし、山としても高い。だからこそ頑張らないといけないし負けてられないと思いながら練習に励んでいます。

「誰かのために努力する」 平安での卓球生活

3年生主将の矢野にも、挑み続けた東山の存在について聞いた。


写真:矢野駿太(龍谷大平安高)/撮影:ラリーズ編集部

――東山高校の存在はどういうものでしょうか?
矢野駿太:強くて素晴らしい選手が多いです。でも、その選手たちを超えられたときに見える世界が、最高にワクワクするんじゃないかなと思ってました。

そういう気持ちをみんなで共有して、彼らを越えて、さらに高みを目指す気持ちを大事にして、自信を失うんじゃなくワクワクして頑張ろうという風にチームには言っていました。

――矢野選手が主将を務めた1年間をどう振り返りますか?
矢野駿太:やれることは本当に全部やったつもりだったんですけど、及ばなかったので、本当に彼らが強かったなと思います。

ただ、大学で超えられるように、大学受験が終わってからまた卓球を頑張りたいと思っています。


写真:矢野駿太(龍谷大平安高)/撮影:ラリーズ編集部

――後輩へのエールもお願いします。
矢野駿太:僕は平安で、「誰かのために努力する」ことを理解できたと思っています。少しずつ視野が広がって、自分はこんないろんな人に支えてもらってるんだなと気づけるようになりました。

後輩たちにはそういう気持ちも忘れずに、昨日の自分よりも絶対強くなると思って、最終的には東山を超えて全国でも上位に登りつめて欲しいと思います。

東山を超えた伝説の2016年

東山を下した2016年のチームについて、島田監督に聞いた。


写真:島田英明監督(龍谷大平安高)/撮影:ラリーズ編集部

――東山を倒し、インターハイ出場を決めた2016年は快挙でしたね。
島田監督:私が現役高校生のときから成し遂げられなかったことを達成してくれました。

特に主力の3年生だった今田祐樹、足立原陸は、中学生の時は近畿大会にすら出ていない。京都でだいたいベスト32、16くらいの力しかなかった子達です。

この子達が約2年半という時間の中で東山高校を超えたというのは、すごい努力したと思います。


写真:インターハイでの足立原陸(写真左)・今田祐樹/提供:龍谷大平安高校卓球部

島田監督:時間が限られているので朝当然練習するし、終わってから近くの卓球場を自分たちで予約して10時半くらいまで練習して、帰ってからさらにランニングもしていた。あと、体を鍛えるという意味で食事制限も含めて気を配りながらやってたと卒業後に聞きました。


写真:インターハイでの今田祐樹/提供:龍谷大平安高校卓球部

――そこまで突き詰めてやった結果だったんですね。
島田監督:また大きかったのが、一個下に現在龍谷大学の方に行っている馬場子龍、南崎祐人、この子達が入ってきたことです。彼らは平安では珍しく、全中を経験してきた子で、彼らが入ってきたことが上級生の今田、足立原の刺激になって、お互い切磋琢磨し出した。

これがチームの練習場の雰囲気をガラッと変えていったんですね。


写真:インターハイでの馬場子龍/提供:龍谷大平安高校卓球部

――その4人がレギュラーとして東山超えを達成したわけですね。
島田監督:インハイ予選の東山戦では、前半0-2スタートで「またいつもと一緒か…」という思いがあったんですが、ダブルスが3-0でシャットアウトしてくれたことをきっかけに、4番南崎が吹っ切れたのか3-0で相手エースに勝利して、ラストの足立原も3-0で勝利。

結果的には0-2からの3、4、5番で勝てて、46年ぶりの平安高校の勝利に繋がり、その時は嬉しかったです。


写真:殊勲の勝利をあげた南崎裕人/提供:龍谷大平安高校卓球部

――東山に勝った瞬間は、今までにない感情だったんでしょうか?
島田監督:あと一点取ったら勝ちというところで何回も負けてきているので、最後の最後までずっと緊張しっぱなしでした。

勝った瞬間は頭の中が一瞬真っ白になって、血が逆流するというか、そういう感触は今でも覚えています。

すごいことをやったんだなと、観客席の方を見つめながら来てくださっている OB、保護者の方とガッツポーズしたのを覚えています。


写真:訪れていた龍谷大平安高の大応援団/提供:龍谷大平安高校卓球部

創部10年目でインターハイランカー誕生

続いては今年のインターハイで学校対抗初勝利をあげ、インターハイランカーを輩出した女子部の徳田直喜監督に話を聞いた。


写真:徳田直喜監督(龍谷大平安高)/撮影:ラリーズ編集部

――龍谷大平安高の女子卓球部の特徴はどういうところでしょうか?
徳田監督:男女で一緒にやっているので。女子同士だけでなくて男子とも練習をさせてもらってます。それは創部一年目からずっと同じで、女子から男子にお願いしにいくこともあり、一緒に混ざってやるのが特徴です。
――今年のインターハイは学校対抗初勝利もあげました。
徳田監督:2年前に初めて出た時は一回戦で負けてしまいました。その時に出てた二人(大村風葉、崎山雪音)が3年生になって、チームを引っ張って特に頑張ってくれました。


写真:崎山雪音(龍谷大平安高)/撮影:ラリーズ編集部

――シングルスでは大村選手というランカーも生まれました。
徳田監督:正直僕も緊張しました(笑)。2回戦、3回戦、4回戦と全部フルゲームでなんとか勝ち切ってくれて、特に4回戦のランク決定は団体で当たって負けていた相手でした。「こういう場でできることを一番大事にして楽しんでやりや」と言って試合してもらいました。


写真:ランク入りを果たした大村風葉(龍谷大平安高)/撮影:ラリーズ編集部

「全国でもっと活躍できる選手に」

大村にもインターハイを振り返ってもらった。


写真:大村風葉(龍谷大平安高)/撮影:ラリーズ編集部

――インターハイはどうでしたか?
大村風葉:団体の時は勝たないといけないプレッシャーが大きくて、会場の雰囲気にも飲まれてしまいました。

逆にシングルスでは勝たないとっていうプレッシャーがなかったので、思い切って自分から攻めることができました。


写真:大村風葉(龍谷大平安高)/撮影:ラリーズ編集部

――学校対抗も勝利、シングルスランク入りと主将として有終の美を飾れたのではないでしょうか?
大村風葉:自分自身でいっぱいいっぱいになることもありましたが、同級生や後輩が支えてくれたので、応援されるチーム作りを意識しながら最後まで頑張れました。

大学では、全国でもっと活躍できる選手になって、インカレなどでチームに貢献できるように頑張りたいです。


写真:龍谷大平安高校女子卓球部のメンバー/撮影:ラリーズ編集部

平安高校卓球部として全国に名を轟かせていけたら

最後に男女両監督に今後についてを伺った。

――どういうチームを作っていきたいのかをお聞かせください。

まずは女子部の徳田監督からお願いします。

徳田監督:卓球で勝てたら一番良いかもしれないですけど、社会人になったり大学生になったりしてもずっと卓球を続けてほしいです。そして、平安高校で卓球をやっててよかったなと思ってもらえるようになってほしいと思っています。
――島田監督はいかがでしょうか?
島田監督:男子は2016年の結果以上を目指したいです。女子は徳田監督が、創部10年目にしてインターハイランカー選手を育ててくれましたし、学校対抗も一回戦勝ってくれました。

これから女子もさらに全国で活躍していってくれると信じていますし、男子も女子もお互いに競争し合いながら、男子部女子部ではなく平安高校卓球部として全国に名を轟かせていけたらなと思っています。


写真:龍谷大平安高男女卓球部メンバー/撮影:ラリーズ編集部

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