「東山の選手は卓球をよく知っている」"絶対王者"を追い詰めた東山高校卓球部に潜入 | 卓球メディア|Rallys(ラリーズ)

写真:東山高校卓球部メンバー/撮影:ラリーズ編集部

卓球インタビュー 「東山の選手は卓球をよく知っている」“絶対王者”を追い詰めた東山高校卓球部に潜入

2021.12.16

この記事を書いた人
Rallys編集長。学生卓球を愛し、主にYouTubeでの企画を担当。京都大学卓球部OB。戦型:右シェーク裏裏

2021年夏のインターハイ、男子卓球界の“絶対王者”愛工大名電高を準々決勝で追い詰めたのが、東山高校卓球部だ。マッチカウント2-3で敗れたものの、“高校卓球界に東山あり”と存在感を放った。

現在の高校卓球界では中高一貫での強化が主流となっているが、東山は違う。高校入学からインターハイまでの2年4ヵ月で全国トップと戦える選手を育て上げている。また、卒業後も選手が成長することも特徴の1つで、卒業生の大島祐哉(木下グループ)や笠原弘光(シチズン時計)らは今も日本卓球界の最前線で戦い続けている。

今回は東山高校に潜入し、卓球部の特徴や卒業後も成長する秘訣などを探った。


【東山高校卓球部】京都府の卓球強豪校。2021年のインターハイ学校対抗ではベスト8に入り、優勝した愛工大名電高を2-3と追い詰めた。エースの星優真は、全日本選手権ジュニア男子の部で第1シードを下し、ベスト8とランク入り。笠原弘光(シチズン時計)、大島祐哉(木下グループ)ら実業団やプロで活躍する選手を輩出している。

愛工大名電を追い詰めたインターハイ


写真:インターハイでの宮木操監督と星優真(東山高校)/撮影:ラリーズ編集部

――インターハイ学校対抗はベスト8でしたが、準々決勝で愛工大名電を2-3と追い詰めました。
宮木監督:僕らの団体の目標はメダルを獲ることだった。そうなると名電に追いつけ追い越せが一つの大きな目標になるわけです。

今回、名電と当たる準々決勝までにも強豪校が多い厳しい組み合わせでしたが、楽な形で上がるよりは選手に緊張感が出るので、結果論では良い組み合わせでした。


写真:宮木操監督(東山高校)/撮影:ラリーズ編集部

――名電戦は1,2番が負けて0-2スタートでした。
宮木監督:ただ、ダブルスの前でもチームには諦めムードはなくて、ダブルスの試合前の星(優真)、佐藤(匠海)の表情を見たらチャンスはまだあるなと。

そのダブルスが勝ってくれて、同時進行の4番、5番でも4番で佐藤が勝って、5番の1年生古閑もゲームオールになるところまでいけた。選手が諦めずに頑張ってくれたのが一番大きかったと思います。


写真:東山高校3年の佐藤匠海 愛工大名電戦は4番シングルスで鈴木颯に勝利した/撮影:ラリーズ編集部

――個人戦では星選手、原選手がシングルスベスト16、ダブルスでも星/佐藤ペアが3位、原/人見ペアがベスト8とランク入りしました。

団体戦の勢いが個人戦に繋がったのでしょうか?

宮木監督:強いて言えば、個人戦はもう1回ずつ星(優真)も原(大翼)も勝たしてあげたかったですけどね。ダブルスで佐藤も頑張ったんですけど、準決勝は二台だけでやるという雰囲気や緊張感に飲まれましたね。

ただ、勝てるかどうかと思った試合をいくつか乗り切ってくれたので、選手は頑張ってくれたと思います。


写真:男子ダブルス3位に入った星優真(写真左)・佐藤匠海(東山高校)/撮影:ラリーズ編集部

宮木監督:インターハイの団体戦を見て「感動した」「涙が出てきた」と言ってくれる方もいました。

生徒にも言ったんですけど、ただの「惜しかったね」で終わる試合ではなくて、見てる人を感動させる試合ができたのは良かったです。総じて良かったインターハイだと思います。


写真:学校対抗ベスト8入賞の東山高校卓球部/撮影:ラリーズ編集部

成長の要因はミーティング

エース兼主将として東山高校を支えた3年生の星にも話を聞いた。


写真:星優真(東山高校)/撮影:ラリーズ編集部

――インターハイはどうでしたか?
星優真:みんなが一つになって名電と戦えました。特に団体戦はチームが一つになったときは何が起こるかわからないなと思いました。

後輩たちに来年は頑張って欲しいです。


写真:星優真(東山高校)/撮影:ラリーズ編集部

――東山卓球部の特徴はどう感じてますか?
星優真:自分はミーティングだと思っています。

宮木監督は練習前のミーティング、1コマ終わってからのミーティング、練習後のミーティングと細かくやってくださって、的確にアドバイスをいただけます。そのアドバイスをもとに自分で考えて取り組めたことが成長に繋がりました。


写真:練習前のミーティングの様子/撮影:ラリーズ編集部

星優真:教えられたものをただ取り組んでいるだけだったところから、すごく自分で考えてやるということを東山に来て教わったので、そこから一階段ずつ成長できたのかなと思います。


写真:星優真(東山高校)/撮影:ラリーズ編集部

東山名物・トス練

再び宮木監督に。


写真:東山高校卓球部の練習の様子/撮影:ラリーズ編集部

――入学からインターハイまでの2年4ヵ月で強くなるために意識している点はありますか?
宮木監督:卓球の基本は動くことですからまず動く基本であったり、打ち方の基本であったりは当然やっていきます。

我々の指導の柱にしていることは、時世に乗り遅れないことと長所を伸ばすこと。例えば今の卓球界は超高速卓球と言われている。そういう部分も練習メニューの中に含んでいきながら、その選手の持っている長所へプラスしていっています。


写真:多球練習を行う東山高校卓球部/撮影:ラリーズ編集部

宮木監督:あとは“トス練”と呼んでいる多球練習も特徴です。

多球練習の内容が豊富ですし、我々には2年4ヵ月という短い時間しかないわけですから、全習法である実戦練習ばかりやっているといろんなことが身につかない。

分習法である多球練習で技、動き、速さなどを身につけて、全習法で活かすということをやっています。


写真:鋭い眼光で練習を見つめる宮木操監督(東山高校)/撮影:ラリーズ編集部

活躍するOBたちの存在も大きい


写真:東山高校OBとして活躍する大島祐哉(木下グループ)/撮影:ラリーズ編集部

――東山の卒業生は、大学、社会人でも伸びていく選手が多いと感じています。考えさせる方針などが関連しているのでしょうか?
宮木監督:それはあるかもしれません。よく大学の指導者の人たちから「東山の選手は卓球をよく知っている」と言ってもらえます。

それは、いろんなプリント類やミーティングでの話を通して、自分で考えさせることで、彼らの知識として残っていき、また、理解してから練習に取り組めているからだと思います。


写真:今季のTリーグで活躍している東山OBの大島祐哉(木下マイスター東京)/撮影:ラリーズ編集部

――大学で成長した大島選手や笠原選手も、東山OBとしてまだまだ最前線で戦ってますね。その存在も大きいですか?
宮木監督:OBたちが今現役で頑張ってくれていることによって、僕らが勉強になります。

卓球界最前線の生の声や最新の情報を僕らに与えてくれますし、OBは屈託なしに意見を言ってくれます。いろんな面で後輩を温かく見てくれているのはありがたいですね。

――最後に今後の目標もお願いします。
宮木監督:新チームは今年の3年生をどれだけ上回れるか。1つの大きな目標は3年生の成績を超えさせる。別に成績を上回ることだけが全てではないですけど、3年生に追いつけ追い越せでやっていきたいと思っています。


写真:東山高校卓球部メンバー/撮影:ラリーズ編集部

「東山の卓球はオールフォアで動き回ること」と言われていた時代もあった。だが、それは当時にあった戦い方を選んでいたからだ。積み上げてきた歴史や伝統だけでなく、今の時代にあったやり方を取り入れていく。全国上位常連の名門校として、東山高校が戦い続けられる理由が練習場にはあった。

2020年取材時のインタビュー

>>“オールフォア”の東山高校卓球部は、常にPDCAを回す理論派集団だった

取材動画はこちら

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