初のインハイベスト4、エースは全日本王者撃破 静岡学園卓球部で選手が着実に強くなるワケ | 卓球メディア|Rallys(ラリーズ)

写真:静岡学園高校卓球部メンバー/撮影:ラリーズ編集部

卓球インタビュー 初のインハイベスト4、エースは全日本王者撃破 静岡学園卓球部で選手が着実に強くなるワケ

2021.11.23

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Rallys副編集長。学生卓球を愛し、主にYouTubeでの企画を担当。京都大学卓球部OB。戦型:右シェーク裏裏

今、高校男子卓球界で、静岡学園高校卓球部が熱い。

2021年全日本卓球選手権では、当時高校2年生だった鈴木笙(静岡学園高)が、前回大会一般男子シングルス王者の宇田幸矢(明治大学)を下し話題を呼んだ。さらに2021年のインターハイ男子学校対抗では、初のベスト4に入った。

近年、急速に力を伸ばし、着実に実績を積み重ねている静岡学園の強さには何か理由があるはずだ。静岡市にある静岡学園卓球部の練習場に潜入し、強さの源を探った。


【静岡学園高校卓球部】静岡県の卓球強豪校。2021年のインターハイ学校対抗では初のベスト4に入った。エースの鈴木笙は、全日本選手権一般シングルスで前回王者を下す金星をあげた。卒業生は、川上尚也(早稲田大)、渡井丈人士(駒澤大)、手塚元彌(法政大)、後藤世羽(専修大)ら関東の強豪校で活躍する選手たちを輩出している。

静岡学園の強さの裏には「能力値を上げる指導」


写真:静岡学園高校卓球部の寺島大祐監督 沼津東高校から筑波大学を卒業後、すぐに静岡学園に着任 今年で17年目になる/撮影:ラリーズ編集部

――今回はずばり“静岡学園の強さ”を探りに来ました。

静岡学園の選手たちが着実に強くなるのはなぜだと考えてますか?

寺島監督:2つあると思っています。

1つは「数値で見える能力値を上げる意識」と、もう1つは「新しいことを取り入れる柔軟さ」ですね。

――1つ目の能力値についてはどういうことでしょうか?
寺島監督:卓球の技術は、スタイルや用具によっても変わるので複雑で、アプローチするのは難しい部分です。

逆に「球の回転量が多くなる」とか「今まで届かなかったボールに飛びつける」とかは、基礎能力が上がれば向上します。「能力が上がればできることも増える」という考えでアプローチして、ボールの質やフィジカルといった“能力”を上げる部分はこだわって指導しています


静岡学園で大きく成長したエースの鈴木笙(3年)

――数値で見ることを意識しながら、基礎能力を上げていくと。
寺島監督:数値で見えた方が指導する側もされる側もわかりやすいです。トレーニングでは、体成分分析装置で自分の筋力が以前からどう変わったのかを数値で比較しています。

高校卓球という器の中で技術や戦術を突き詰めるのではなく、まずは「能力を上げる」と大きく捉えているので、高校卒業後に伸びてくれる素材作りにも繋がっていると思います。


練習中には負荷の高い多球練習を行うコマも

“静岡学園らしさ”は「卓球×勉強」を超えた「卓球×勉強×〇〇」


写真:寺島大祐監督(静岡学園高)/撮影:ラリーズ編集部

――2つ目の「新しいことを取り入れる柔軟さ」についても教えて下さい。
寺島監督:代表的なのが、できるだけゲストに来てもらうことです。

とりあえずゲストを呼ぶのではなく、例えばサービスで講師に指導に来てもらったり、ウェイトトレーニングを学ぶためにトレーナーを呼んだり、栄養面を学ぶため栄養士を招いたり、トップ選手に練習に参加してもらったり、テーマや頻度、タイミングも意識しています。


写真:栄養講習会で栄養士の言葉に耳を傾ける静岡学園卓球部の生徒たち/提供:静岡学園卓球部

――トップ選手だと、世界選手権代表の森薗政崇選手が練習に参加したこともあると伺いました。
寺島監督:森薗選手には、多球練習のパターンや心拍数を追い込むトレーニング、試合前のコンディション調整、試合の分析のやり方など、具体的なメニューや様々なアイデアでサポートをしてもらいました


ゲーム間で栄養補給を行う鈴木笙(静岡学園高)写真は全国高校選抜時

――世界でも戦うトップ選手から意見を貰えるのは貴重ですね。
寺島監督:森薗選手には、彼が主催している大会で、チームを集めるなど運営側にも携わらせてもらいました。

そのように卓球を通じて、卓球以外でも取り入れられることを経験するのは、生徒たちの財産になると思っています。


森薗政崇支援合宿に参戦した各学校の主将 前列左から2番目が鈴木笙(静岡学園高)

寺島監督:例えば、卓球が強くなることで海外の試合に行ければ、日本と違う街並みや言語などを早いうちに経験できます。それは誰でもできることではなく、その人にしか見えないステージや経験になります。

だからこそ勝利を求めたいんです。結果にこだわることでステージが変わる、という経験をどんどんしてほしいです。


昨年度卒業の後藤世羽(静岡学園高→現・専修大学1年)は国際大会でもプレーした(写真提供:ittfworld)

――卓球の結果を突き詰めることで、卓球以外の広い世界が見えるのは面白いですね。
寺島監督:卓球と勉強を両立した文武両道は、今はどこでも当たり前になってきています。静岡学園もスポーツクラスがないので、勉強は必要です。

そこにもう1つの何かを掛け合わせた「卓球×勉強×〇〇」が“静岡学園らしさ”になると思っています。

――もう1つを掛け合わせる、というのをもう少し具体的に言うとどういうことでしょう?
寺島監督:勉強できる子も卓球できる子もいっぱいますし、もちろん大事です。

ただそこに、様々な角度で多くの分野の人と触れ合うことで、卓球や勉強の他に、興味があることや好きなことが出てくると思います。「トレーナーになりたい」とか「栄養士になりたい」とか、他にも「情報分析に興味が出た」と大学院で研究する卒業生もいました。


大学を卒業し教員として母校に戻ってきた山口享也さん(写真右・静岡学園高→関西学院大学出身)

――なるほど、卓球×勉強に自分の興味関心が掛け合わさることで、その人にしかない強みになるわけですね。
寺島監督:学校と卓球場と寮や家の往復だと本当に狭い範囲でしか物事を見れなくなります。そこに多くの経験をしている大人が頻繁に来てくれることは、大きいんじゃないかと。自分がどう吸収するのか、逆にどう影響を受けないのかとか、早いうちから経験させてあげられる。

いつかはラケット置くかもしれないわけですから、静岡学園卓球部でしかできない経験が今後に活きて欲しいなと思っています。


「勝つことを求めたいです」

インハイベスト4に入った静岡学園・寺島監督の次なる野望


写真:2021年インターハイ男子学校対抗でベスト4に入った静岡学園/撮影:ラリーズ編集部

――その積み重ねが今年のインターハイ学校対抗で、初のベスト4と実ったわけですね。
寺島監督:自分たちの思っている以上に周りの方が喜んでくれて、純粋に嬉しかったです。OBや卒業生の保護者の方の方もサポートしてくれまして、僕らも頑張らなきゃなという気持ちにさせてもらいました。

ベストを尽くせるように僕自身も相当気合を入れて準備してきました。「このインターハイで燃え尽きてもいい」くらいのつもりでやって臨んだインターハイだったので、楽しかったですし、終わったあとの反動が凄かったです(笑)。

――反動というのは肉体的な?精神的な?
寺島監督:肉体的な疲労もそうなんですけど、今後はそのときの気持ちに任せようと思っていたので、終わってから1ヶ月くらいは駄目でしたね(笑)。
――ということは、今はまた新たな気持ちということですか?
寺島監督:全日本ジュニア予選も全然ダメだったので、そういう影響もあってさすがにこれはまずいなと、元に戻りました(笑)。

まだまだやりたいこともあって、1つが来年から設立するジュニアチームです。

――また新しいことにチャレンジするんですね。その設立の意図や経緯も伺わせてください。

「能力を上げる指導」と「新しいことを取り入れる柔軟さ」で男子初のインターハイベスト4に入った静岡学園。だが、目指すのは日本一だ。

そこで寺島監督が次に仕掛けるのは、ジュニアチームの設立だ。

付属中学の卓球部の強化ではなく、外部のクラブチームと協力したジュニアチームという形を選択した意図や、設立の経緯、その後の展望を聞く。

(特集・静岡学園#2 卓球界初のクラブ×学校での“小中高一貫強化” 静岡学園の“時流に乗った”ジュニアチーム構想 に続く)

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