卓球界初のクラブ×学校での"小中高一貫強化" 静岡学園の"時流に乗った"ジュニアチーム構想 | 卓球メディア|Rallys(ラリーズ)

写真:静岡学園高校卓球部のメンバー/撮影:ラリーズ編集部

卓球インタビュー 卓球界初のクラブ×学校での“小中高一貫強化” 静岡学園の“時流に乗った”ジュニアチーム構想

2021.11.24

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Rallys編集長。学生卓球を愛し、主にYouTubeでの企画を担当。京都大学卓球部OB。戦型:右シェーク裏裏

インターハイ出場がやっとだった静岡学園高校を大きく成長させたのが、17年前に就任した寺島大祐監督だ。寺島監督は良い意味で型にはまらず、常に新しいことを取り入れ、チームをアップデートしてきた。その結果、静岡学園高校は2021年のインターハイで初の学校対抗ベスト4に入るまでになった。

だが、寺島監督はまだ満足していない。日本一の夢に向け次なる仕掛けとして、外部のクラブチームと協力したジュニアチームを設立し、小中高一貫での強化を目論んでいる。

卓球界初の“クラブチームと学校が協力した小中高一貫指導”の意図や展望を探った。


【静岡学園高校卓球部】静岡県の卓球強豪校。2021年のインターハイ学校対抗では初のベスト4に入った。エースの鈴木笙は、全日本選手権一般シングルスで前回王者を下す金星をあげた。卒業生は、川上尚也(早稲田大)、渡井丈人士(駒澤大)、手塚元彌(法政大)、後藤世羽(専修大)ら関東の強豪校で活躍する選手たちを輩出している。

>>特集・静岡学園#1 初のインハイベスト4、エースは全日本王者撃破 静岡学園卓球部で選手が着実に強くなるワケ

静岡学園ジュニアチーム構想の経緯


写真:静岡学園高校卓球部の寺島大祐監督 沼津東高校から筑波大学を卒業後、すぐに静岡学園に着任 今年で17年目になる/撮影:ラリーズ編集部

――静岡学園ジュニアチーム設立の経緯から教えて下さい。
寺島監督:今のインターハイの上位常連校は、ほとんど付属中学があって中高一貫の指導をしています。

静岡学園も中学はあるのですが、入試や通学に関してハードルがあります。色んな制約がある中で高校で主軸になる選手を育てるのは厳しいと考えていました。じゃあ何ができるのかと考えたときに、外部のクラブチームと協力してジュニアチームを作り、一緒にやっていく形をずっと模索していました。

――それが今回形になったということですね。
寺島監督:愛知のクラブチームのアシュラの小林修平監督とずっと仲良くさせてもらって、人間的にも信頼でき、公私共々のお世話になっていました。

小林監督は、指導力があって全員の面倒を見ながら強い選手も作れ、なおかつクラブ経営もしっかりできる方です。


写真:静岡学園高校卓球部の寺島大祐監督/撮影:ラリーズ編集部

寺島監督:アシュラとしては店舗を拡大したいし、静岡学園としてはジュニアチームを作りたい。そこで協力して静岡でやれたらということで、ジュニアチーム構想が本格的に進み、2022年4月からスタートすることになりました。

アシュラ・小林監督「卓球界に新しいやり方を提示できる」

静岡学園ジュニアチーム構想のもう1人のキーマン、アシュラの小林修平監督にも詳しく話を聞いた。


写真:アシュラの小林修平監督(写真右) 埼玉工業大学出身で現在は愛知県のクラブチーム・アシュラで指導している/提供:アシュラ

――どうしてこのタイミングで、アシュラとして静岡学園のジュニアチームを作ることになったのでしょうか?
小林監督:昔から寺島先生とは仲が良くて、「小中高一貫の指導がやれたら良いね」と話していました。

ただ、僕も愛知でアシュラをまずはしっかりやらないといけないので、「やりたいけど厳しいな」という状況でした。徐々にアシュラが安定して来たり、新しくコーチが入ったりして、僕もこの構想に携わる余裕が出てきました。

今年大学を卒業する僕の教え子が、静岡の方を見ることも決まり、とんとん拍子に話が進みました。

――この取り組みにおけるクラブチーム側のメリットはどう考えていますか?
小林監督:そもそも今は中高一貫指導はあっても、小中高一貫で強化していくという学校はおそらくないので、初めての形だと思います。

クラブチームと学校が一緒に組んで小中高一貫で強化するという新しいやり方が実現すれば面白いし、卓球界の活性化にも繋がっていくのかなと。


写真:静岡学園高校の練習風景/撮影:ラリーズ編集部

小林監督:今は高校の先生にならずに、小学生の強化とビジネスを考えてクラブチームをやっている方も僕の周りでは多いです。

高校の先生は、学校の授業をやって部活もやってと本当に大変だと思うので、であれば外部のクラブと協力しても良いと思います。もしこの取り組みが上手くいけば、卓球界に新しいやり方を提示できるのかなと。

「誰でも強くなる」小林監督が言い切れるワケ


写真:アシュラの小林修平監督/提供:アシュラ

――小林監督は、ジュニアチームにはどういう選手に来て欲しいですか?
小林監督:もちろん良い選手に来ては欲しいんですけど、元々愛知のアシュラでも初心者ばかりで、そこから全国出場、全国ランクまで育てています。

なので、全然初心者でも構わないですし、僕が小学校のときにランクに入るくらいまで育てて、中高では寺島先生と一緒に全国でトップになっていけるように指導していく。そういう形が理想ですね。

強くなればどんどん上のカテゴリに引っ張っていくようにできれば良いと思います。

結構誰でも強くなるんで、卓球って。

――そう言える指導者がいるのは、選手や保護者にとって心強いと思います。
小林監督:強くならないなって子はあんまりいないですよ(笑)。練習をやらない子くらいです。

毎日やればみんな強くなるし、どれだけ周りがサポートしてくれるかなどはありますが、条件が揃えば誰でも強くなれると僕は思ってます。


写真:アシュラの小林修平監督/提供:アシュラ

――なぜそこまで言い切れるんでしょうか?
小林監督:僕はプレーヤー時代に、良い指導者に巡り合ってきて様々なことを吸収してきました。

最初は父親や元明治大監督の平岡義博さん、青森山田では吉田安夫先生、郗恩庭さんに中国でお世話になったり、董さん(董崎岷)、高島(規郎)さん、埼玉工業大の兼吉(道策)さんらの指導を受けてきました。ありがたいことにそこから自分の指導ができあがっています。

そもそもみんな難しく考えすぎなんですよね、技術に対して。

小林監督:僕がTwitterなどであげているプレーも、個人レッスンしてるときの動画の切り抜きや、ちょっとやってみようと数分でできたものです。

どんな技術も簡単に教えられることが指導者としての腕があるということだと思いますし、「技術を教えて」と言われて、その子ができなかったら僕は自分を責めますね。

「この子はこういう教え方、伝え方ならできるだろう」という指導のパターンを僕はたくさん持っています。そういう各々に合ったいろんな道を提示して、上手くなっていくのが好きなんですよね。

――そういう個性に合わせた指導ができると、多様な選手が育ちそうで面白いですね。
小林監督:アシュラはどういう選手を育てるなどは決まってなくて、全然違う選手がいます。ジュニアチームもそうなっていければ良いですし、その結果、静岡学園が日本一になってくれれば一番良いなと思ってます。


写真:静岡学園高校の寺島監督/撮影:ラリーズ編集部

寺島監督「できることは全部やりたい」


写真:寺島大祐監督(静岡学園高)/撮影:ラリーズ編集部

――最後に今後の展望をお伺いしたいです。
寺島監督:ジュニアチームを設立し、小中高一貫の強化は、初めてで上手くいかないこともあると思います。でも、アシュラと我々のコラボレーションで、上手くやっていって、他の学校のモデルケースになれればなと思います。

学校スポーツでは、中学校の部活の顧問の負荷が問題になっていますし、高校にもその流れは来ると思います。そうなれば違う仕組みも必要です。


写真:静岡学園高校の寺島監督/撮影:ラリーズ編集部

寺島監督:卓球が強くなりたくてやってますが、もちろん生徒らの将来のこともあるので、勉強と卓球以外のプラスアルファを付与できる組織として、また違う魅力が提案できるんじゃないかなとも思っています。
――新しい仕組みを作れるのが、寺島監督の素晴らしいところですよね。
寺島監督:自分にあって他の指導者にはあまりない部分なので、そこは活かしたいと思ってます。

メリットやデメリットなどをいろいろ考えたり、新しい取り組みで叩かれたりもするでしょうけど、やってみて失敗だったら仕方ないです。それよりもやらずに終わるのはもったいないので、できることは全部やりたいなと思ってます。


写真:インターハイでの静岡学園高校卓球部/撮影:ラリーズ編集部

自らの指導について、寺島監督は「固定観念はなく、良い形をずっと模索しながらやっている」と称する。今回のジュニアチーム構想も新しいことを探り続けた結果生まれたものだ。

卓球界に新しい風を吹き込み、学校スポーツの次の形を提示する静岡学園。ここから日本を代表する選手が出てくるのもそう遠くない未来なのかもしれない。

静岡学園ジュニアチームについてのお問い合わせ先

>>クラブチーム・アシュラの公式ページ(外部リンク)

>>アシュラ静岡店についてのお問い合わせ(外部リンク)

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