取材・文:川嶋弘文(ラリーズ編集部)
卓球界でTリーグ入りを起爆剤に、急成長を果たした男がいる。ジンタクの愛称でファンから愛されるプロ卓球選手、神巧也(じんたくや、T.T彩たま)だ。
2019年のプロ転向から約1年で世界ランクを314位から45位まで上げると、Tリーグでもリーグ首位となる13勝を挙げる活躍を見せた。
神をキャプテンに据え、シーズンを共に戦った坂本竜介監督に、神の急成長の理由を聞いた。
>>第4話 卓球・坂本竜介に聞く 外国選手を「日本で育てる」方法
監督から見た神巧也、躍進の裏側
ーー神選手、活躍の理由を教えて下さい。
坂本竜介監督(T.T彩たま、以下坂本):神はすごい男だと思いますよ。僕も人間的にリスペクトしてますし、何やってもうまくいくんじゃないですか。ビジネスやっても上手くいくし、あの人柄の良さと、芯もあって自分の考えも持ってるから、「自分はこう思います」ってはっきりと発言もする。自分の力でチーム内でポジションを勝ち取ったんですよね。
写真:キャプテンの神と坂本監督/提供:©T.LEAGUE
ーー2019年1月のプロ転向が転機になったようにも見えます。
坂本:ジンタクは1年を通して、人間的な成長も見られた。実業団時代は、どんなに調子が悪くても団体戦には名前が書かれる。でも僕らのチームではそもそも名前が書かれるわけがないという大前提で神もベンチに入ってるんで。だから試合中シーズンで勝ち星を重ねても1回負けたらもう出してもらえないって本人は思っているわけですよ。それで伸びる選手と、つぶれる選手がいる。
ーー神選手は逆境をバネにできる選手だと?
坂本:神は自分が勝ち続けないと出られないというのを、逆に勢いにできる選手だったということ。やっぱり心の強さでしょうね。負けたくないっていう。練習見てても正直言って毎日へたくそだな、まだまだだなって思うわけですよ。
でも試合になると何とかねじ込むっていう。だから練習見ててまだまだだとは思いつつも、試合でオーダー書くときにやっぱ最後ジンタクが勝ってくれそうだなという安心感を持たせるところに持っていってくれる。
ーーこの1年で世界ランキングも急上昇されました。
坂本:世界的に、林昀儒がパッと出たけどそこはモノが違うから、彼を抜いたら世界で一番伸びた選手なんじゃないですか。ジンタクが50位以内は正直想像できなかった。でもたぶんこれから30位以内に入りますよ。(2月の)ハンガリー(オープン)でも(ドイツの)フランチェスカにも勝った。チームランキング的にもそうだし、日本チームにジンタクがいることは雰囲気という意味でもすごくいいこと。やっぱりベンチで「うるせーよ」ってくらい吠えてるから。「どこまで乗り出すんだよ」っていうくらい(笑)。
神のキャプテンシーがチームを支えた
ーー団体戦でのキャプテン、ムードメーカーは大切ですね。チーム内ではどんなキャプテンですか?
坂本:面倒見が良いですね。後輩たちが寝坊したらありえないだろって怒ってます。サラリーマンやってるのも大きいでしょうね。社会人としての、人間的なところもちゃんと教えてるんで。そういうところを含めてキャプテンにふさわしいですね。キャプテンというかあいつが監督じゃないですか(笑)。
写真:Tリーグ、シングルス勝利数トップの神巧也(T.T彩たま)/撮影:ラリーズ編集部
ーーT.T彩たまは海外選手も多いですが。
坂本:海外勢へのフォローも良くやってくれています。そんなに英語が喋れるわけじゃないですけど、自分の知っているものでがんばって、食べ物もわざと色々なところに連れて行って、日本にはこんな食べ物があるよとか、ご飯終わりにたまにゲーセンに連れて行ったりとか。
その辺は神だけじゃなくて、チーム全員で家族みたいにやってますね。ピッチフォードが4週間ぐらい日本にいた時、僕の家でご飯食べたり、(岸川)聖也も、(松平)健太もジンタクもフォローする。一番仲はいいんじゃないですかね。だれもそっぽを向かないから。
まぁジンタクには来季もキャプテンとして、彩たまを盛り上げてもらいますよ。
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