安定した職業を捨て、好きなことで生きていくことを選んだ男がいる。
関西卓球アカデミーに所属する各務博志(かがみひろし)だ。
関西卓球アカデミーのエース・坂根翔大とともに関西大学を53年ぶりのリーグ優勝に導いた各務は、卒業後、一度ラケットを置き、高校の教員となった。だが、1年で退職し、2021年4月から関西卓球アカデミーで実業団選手としてプレーしている。
今回は各務に好きな卓球を仕事にするまでの経緯やその決意の裏側を尋ねた。
【各務博志(かがみひろし)】1997年06月29日生まれ。兵庫県出身。須磨学園高から関西大学に進学し、同期の坂根翔大らとともに53年ぶりリーグ優勝に貢献した。激戦区兵庫県から全日本選手権に通過し、2019年の関西学生選手権ではランク入りを果たした実力者。豪快なフォアドライブを武器とする。
>>各務博志(関西大学)の用具紹介|俺の卓球ギア#22
教師から卓球選手に
写真:各務博志(関西卓球アカデミー)/撮影:槌谷昭人
――各務選手は、関西大学卒業後、一度教職に就いたと伺いました。
各務博志:はい、卓球の指導者になろうと考えて、教員の道に進みました。担任をしてたんですけど、通信制の学校だったので部活はなかったですね。
――そこからどうして卓球の実業団選手に?
各務博志:今年24歳になるのですが、23歳のときに関西卓球アカデミーの方から声をかけていただいて、若いときにしかチャレンジできないですし、こんな機会はめったにないと思って、飛び込みました。
写真:各務博志(関西卓球アカデミー)/撮影:槌谷昭人
――教職というある意味安定した道を捨てて、卓球選手になるという選択に迷いはなかったですか?
各務博志:一年間サラリーマンとして過ごした中で感じたことがありました。それは
自分のやりたいことをやるべきだな、ということです。
忙しく仕事を頑張っていたときも、時間を見つけては卓球をしていました。高校や大学までは卓球するのが当たり前の環境で、いざ離れてみるとこんなに充実していた時間だったんだなと気づきました。
安定や金銭面で言うと教員の方が良いです。でも、自分のやりたいことはなんなんだろうと考えたときに、やっぱり卓球をやってるときが一番楽しいなと感じたので、こちらの道を選びました。
写真:2021年ビッグトーナメントでの各務博志(関西卓球アカデミー)/撮影:ラリーズ編集部
――思い切った決断ですね。仕事を変えるときに親の反対などはありませんでしたか?
各務博志:親には卓球がしたいと伝えたら、「若い時は自分のやりたいことをやればいい」と応援してくれました。「戻りたいときはいつでも戻れば良い」とありがたく背中を押してもらいました。
坂根翔大という大きい存在
写真:各務博志(関西卓球アカデミー)/撮影:槌谷昭人
――今はどういうスケジュールで働いているんでしょうか?
各務博志:朝は保育園で子供たちに卓球を教えて働いています。18時くらいからはアカデミーの方でレッスンをさせてもらってます。
――保育園やコーチなど、卓球をプレーする以外の仕事面だとどういうところに楽しさとかやりがいを感じますか?
各務博志:教員時代も高校生ですが子供と関わる仕事をやっていました。
今回は保育園で年齢層は変わったのですが、子供はやっぱり素直なので、自分の関わり方で子供の人生が変わってくる。そこは卓球を教えるにあたっても、それ以外の生活面の指導でもやりがいを感じますね。
写真:各務博志(関西卓球アカデミー)/撮影:槌谷昭人
――自分の卓球の練習は保育園やレッスンの後ということですよね?
各務博志:そうですね。坂根(翔大)とよく練習しています。
――坂根選手の存在は大きいですか?大学も同期ですよね。
各務博志:大学の時も引っ張ってもらいましたし、この世界に飛び込んでこられたのも彼がいたのは大きいですね。
写真:各務博志(関西卓球アカデミー)/撮影:槌谷昭人
――去年の教員時代と今はどこが一番違いますか?
各務博志:練習量はもちろんですが、今の職業は体が資本になるところですね。教員時代は、デスクワークが多かったんですけど、今は体が資本。自分の体をもう一回作り直す意味でも毎日坂根と一緒にトレーニングを頑張ってます。
写真:各務博志(関西卓球アカデミー)/撮影:ラリーズ編集部
――今後についてはどういう風にイメージしていますか?
各務博志:日本リーグに出場させてもらう機会があれば、2部でまずは勝ち越しを狙ってやっていきたいと思っています。
好きな卓球を仕事に選んだ男は、淡々と自分のやるべきことを見据えていた。選択を正しいものにするのは、いつも自分の努力しかない。
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