卓球×インタビュー ダブルス世界王者、陳建安の琉球アスティーダへの思い「初代チャンピオンを目指す」<琉球アスティーダ特集#5>
2018.10.26
写真・文:川嶋弘文/ラリーズ編集長
チャイニーズ・タイペイ代表の陳建安は、2008年17歳の時に世界ジュニアのシングルスで世界の頂点に立つと、2013年にはタイペイのエース荘智淵と組んだダブルスで中国を破り世界選手権の金メダルを獲得。その後も不動の代表メンバーとしてリオ五輪にも出場するなど世界トップクラスに君臨する、陳建安(27、チェン・ジエン・アン)。
Tリーグ・琉球アスティーダへの加入を決めたこの男は、どこまでも謙虚で、その真面目な表情を崩さない。
9月某日、琉球アスティーダのプロモーションと、Tリーグのドーピング検査を兼ねて沖縄入りした陳は、沖縄の地元メディアへの取材にも真摯に対応し、アスティーダ早川球団社長の陽気なジョークも微笑で受け流す。世界トップクラスのパワードライブを繰り出す大型レフティの豪快なプレーとは対照的な、穏やかな陳の素顔に迫った。
Tリーグ参戦を決めた理由
ーー今年4月のアジアカップ(横浜開催)以来の来日と伺いました。これまで沖縄には来たことがありますか?
陳:今回初めて沖縄に来ました。タイペイでもチームメイトの江(宏傑選手、琉球アスティーダ)から聞いていた通り台湾からとても近かったです。直行便だと1時間半くらいですから。
ーー東京(羽田)からだと3時間以上かかるので、その半分くらい。やはり距離が近いことも琉球アスティーダを選んだ理由なのですか?
陳:それもあります。Tリーグ自体への参戦についてオファーがあった後に、球団を決めるプロセスがあったのですが、アスティーダを決めた理由の一つが台湾からの近さでした。普段は高雄で台湾ナショナルチームメンバーと練習をし、そこからワールド・ツアーを含む大会に出る生活を送っています。移動には慣れましたが、やっぱり近い方がいいですね。
ーーベルギーやフランスでのリーグ参戦経験もおありですが、そんな百戦錬磨の陳選手が今回Tリーグへの参戦を決めたのはなぜですか?
陳:一番はそのレベルの高さです。近年、日本の選手は本当に強くなっていて、ワールド・ツアーでもいつも注目していますし、YouTubeを見てプレーを研究しています。それに加え、黄鎮廷(T.T彩たま・香港)や韓国選手らアジアのトップ選手たちが続々と参戦を発表していて、強い選手と沢山試合が出来る環境が整っている。ヨーロッパの選手もいるので、アジアだけではなく、世界中から注目が集まっています。
ーータイペイでは荘智淵選手とのツインエースで安泰の地位にいるようにも見えます。そんな陳選手がよりハイレベルな環境を求める理由とは?
陳:個人としては2020年の東京五輪への出場を目指しています。世界ランキングでは台湾勢の中では上位にいますが、台湾の選考方式が国内選手との選考会を重視するものであり、油断が出来ません。なのでもっと強くならないといけません。
ーーより強くなるためにTリーグを選んだわけですね。台湾の選手がチームメイトにいることもプラスに働きますか?
陳:荘智淵、江宏傑とは台湾の実業団でもナショナルチームでも同じチームで小さい頃からずっと一緒にプレーしています。なので2人が同じチームにいることで安心して普段どおりのプレーが出来る。ただ、新しい環境なので、新たな気持ちで頑張りたいですね。
目標は初代チャンピオン
ーーTリーグでの目標は?
陳:もちろんやるからには初代チャンピオンを目指したい。そして自分の出番が来た時に1勝でも多くすることです。
ーーファンにどんなプレーを見て欲しい?強みは?チームメイトになる松平賢二選手は陳選手のフォアドライブのパワーが世界トップクラスと言ってましたよ。
陳:ありがとう(笑)。自分の強みはフォアドライブのスピードとパワーです。それから今ブロック技術を強化しているので、打たれてラリーになっても強い自分を見せたいと思っています。
ーー対戦してみたい相手やチームは?(選手リストを見せながら)
陳:全員強いですね(笑)。特にこの選手、チームというのは無いですが、先程、早川さん(琉球アスティーダ球団社長)がクリスマスのゲームでは奥さんと子供を招待すると言って下さったので、12月の沖縄でのホーム戦が特に楽しみです。
※クリスマスシーズンの琉球アスティーダのホーム戦日程
12月24日(月) 琉球アスティーダ vs 岡山リベッツ/宜野湾市立体育館
12月25日(火) 琉球アスティーダ vs 木下マイスター東京/宜野湾市立体育館
ーーそれは楽しみですね!チーム内に目を向けると、世界ランク最高位は丹羽孝希選手です。丹羽選手の印象を教えて下さい。
陳:同じ左利きの選手としていつもワールド・ツアーなどでもウォッチしてますが、センス、才能が素晴らしい選手です。チームメイトとして戦えるのが楽しみですね。
ーーこれまでリオ五輪出場や世界卓球や世界ジュニアでの金メダルなど輝かしいキャリアを歩んでおられますが、これまでで一番記憶に残っている試合は?
陳:やはり世界一になったパリでの試合ですね。(2013年の)世界選手権ダブルス決勝で相手は当時世界最強の中国の馬琳(マリン)・郝帥(ハオシュアイ)ペアでした。優勝した瞬間はまさに頭が真っ白になりました。大会前はまさか優勝出来るとは思っていませんでしたが、ペアの荘智淵も私も調子がよく、また長年組んでいるペアなのでコンビネーションもばっちりでした。デュースのゲームを全て取れたのが大きかったですね。Tリーグでもダブルスで出る機会があれば頑張りたいです。
<2013年世界卓球選手権パリ大会 男子ダブルス決勝のスコア>
陳建安・荘智淵(台湾) 4-2 郝帥・馬琳(中国)
9-11/12-10/11-6/13-11/9-11/11-8
<ITTFより2013年世界卓球選手権パリ大会 男子ダブルス決勝のハイライト映像>
ーーパリの決勝は本当に感動的な試合でしたね。2013年の世界卓球パリ大会はTリーグにも参戦する水谷(木下マイスター東京)と岸川(T.T彩たま)のペアが銅メダルだった大会。そこで台湾の陳・荘ペアが中国ペアを倒しての優勝でしたので日本のファンも覚えている人が多いと思います。大舞台で結果を残すために、どのような考え方で努力を積み重ねてきましたか?
陳:基礎を重ねてからそれを応用することが大切です。なので若い頃は徹底的に基礎練習をしました。今は技術が身についたのでよりメンタルを大切にしています。試合前はアップテンポな曲を聞いてテンションを高めます。
ーーもしよかったら、試合前にどんな曲を聞くのか教えて下さい。僕も聞いてみたい(笑)
陳:例えばこれとか。
ーーLSD!!グローバルなアーティストを抑えてますね。最後に日本の好きなところを教えて下さい。
陳:ラーメンですね。とんこつラーメンの「一蘭」が好きで来日したら必ず行きます。実は4月のアジアカップ(横浜)で来日したときも行きました。それから漫画・アニメだとワンピースが好きです。
ーー本日はありがとうございます。Tリーグでプレーを見るのが楽しみです。
陳:期待に応えられるように頑張ります。
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通訳:張一博/琉球アスティーダ