「目に見えない応援の力は本当にある」。
そう語るのはプロ卓球選手・森薗政崇(BOBSON)だ。ドイツ・ブンデスリーガ時代には、応援を力に変え、ホーム勝率驚異の90%超えを果たしたこともある。
「全然気付かない所でファンにたくさん支えられている。もっとみんなで楽しめるものを作りたい」とファンへの思いを語る森薗に、「卓球の応援」についてファンからの素朴な疑問に答えてもらった。
※2020年5月29日に行ったYouTube Liveでの配信『森薗政崇が語る「アスリートから見た理想の卓球応援文化」|Rallys Online College』の内容を再編集して記事化しています
>>前編はこちら ドイツでホーム勝率90%超え 森薗政崇が語る「ファンや応援の力」
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このページの目次
煽りやブーイングは海外ではあるのか
――ここからはファンの方からの質問に答えていきたいと思います。まずは「敵チームへの煽りやブーイングはありだと思いますか?また海外ではありますか?」
森薗政崇(以下、森薗):煽りは海外でも少ないですね。
でもファンと一体化できるのではあれば、煽りはあった方がいいのではと個人的には思っています。
例えばバスケのフリースロー。どの会場でもゴール後ろで「ワーワー」騒いで邪魔をして、ミスったら大盛り上がり。スポーツはもっと感情を出していいのではと僕自身思っています。
でも、ファンのみんなは試合会場でその煽りを観たらバッシングすると思う。育ってきた環境や文化が違うだろうし難しいところはありますね。
写真:森薗政崇(BOBSON)/提供:伊藤圭/Unlim
――煽りに関連して、ドイツだとブーイングはあるんでしょうか?
森薗:ありますよ。
試合を真剣にやってると自分を抑えられなくて、ラケットを投げるとか台を蹴るとかしてしまう選手がいる。そういう態度が悪いときは自チーム相手チーム構わず、すごいブーイングがきます。
“ため息問題”の解消方法は?
――「ミスしたときの観客のため息はどう思いますか?」これはどうでしょう?
森薗:真剣に応援してる選手のプレーを見てて、「はぁ~」となるのはわからないでもないから「やめてね」とは言い辛いけど、確かに嫌かも。ワールドツアーの動画見ててもジャパンオープンは多いですよね。
言われてみれば海外はため息ないかも。凡ミスしても誰かが最初に手拍子して元気づけてます。そもそもネガティブなことが少ないですね。
写真:森薗政崇(BOBSON)/提供:伊藤圭/Unlim
――ため息の代わりに手拍子は名案ですね。
森薗:ゆっくりした手拍子からだんだん早くなって、サーブ前に一気に静まり返る応援わかります?あれはめっちゃ集中できる!あの一体感はほんとにいい文化だと思います。
中国だと「〇〇、加油(ジャーヨ)!〇〇、加油!」と声援で決まったリズムがあるじゃないですか。そんな感じで、だんだん早くなる手拍子応援の文化も引っ張ってきて、日本のスタンダードにしようぜと思っちゃいますね。
応援時に食事、飲酒はあり?
――続いては「試合をやっているときにお酒を飲む、飯を食う。ありだと思う?なしだと思う?」
森薗:ちょうどみんなで議論したかった!
両国国技館で1stシーズンのTリーグファイナル女子の試合を、僕、男子が終わった後に上で観てたんですよ。ビール売ってたから買い込んで見てたんですけど、めっちゃ楽しかったです!
だから僕は、絶対ありだと思う。
写真:森薗政崇(BOBSON)/提供:伊藤圭/Unlim
――(YouTube Liveのコメントでは)結構なし派が多いですね…。
森薗:これは意外!ドイツでは絶対瓶ビールが売ってて、みんな瓶ビール飲みながら観るのがスタンダードでした。
すごい面白い意見ですね。僕が考えてたスタンダードとみんなの考えにちょっと差がある。
真剣に卓球の応援を考えてくれてるからこそ、僕も軽く「良いよ。飲んじゃいなよ、食っちゃいなよ」とは言えない。自分もプレーしてて応援の熱を感じてるから。
でも選手側からすると、観に来てもらって楽しんでもらいたいという思いが強いから、「食事や飲酒はバリバリしてほしい」というのが正直なところ。
たくさんの人が応援してくれているからこそ、全員がハッピーな方法は100%ない。だからどこかで「より卓球を盛り上げられる方」を取っていくしかないと思うんですよね。
写真:森薗政崇(BOBSON)/提供:伊藤圭/Unlim
――「ラリー中の声援はどうでしょうか?すごいラリーの時に思わず声が出るときがあります」。こちらはどうですか?
森薗:僕は全然アリだと思います。本心からくる言葉だから。
「周りの影響に左右されすぎるのはそもそも選手として未熟」というのが僕の考えなので。
ドイツでも泣いてる赤ちゃんを注意する選手がいるんですけど、その選手はすごい回りから怒られる。選手間では「環境に対応してこそプロ」みたいな風潮があった。だからラリー中の歓声も僕は全然いいんですけど、慣れてなかったりそういう文化を知らない選手からするとびっくりですよね。
でも、卓球一番強い中国がロビングで凌いでるときに「ウォ~イ!ウォ~イ!」とか言ってるじゃないですか。だから比較的みんなそういう耐性はあると思うんでいいんじゃないかな。
写真:森薗政崇(BOBSON)/提供:伊藤圭/Unlim
――「『あと一本!』とか『次取りますよ~』とかの1球ごと応援はどう思いますか?」
森薗:そもそも卓球の応援のスタンダードですよね。
選手は、どれだけ気を張ってても集中力途切れる瞬間が来る。そのときに強めの「ここ一本頑張るよー!」みたいなの言われると、一回落ち着いて再集中できます。
試合後にサインを貰いに行きたいファンの悩み
――「試合後のサインや写真は図々しいかなと遠慮しがちなのですが、どう感じていますか?」
森薗:いや、来てよ!(笑)。そこは来てくださいよ(笑)。
自分のサイン書いて喜んでもらえるんですよ?こんな嬉しいことある?だからバンバン来てほしいです。
写真:森薗政崇(BOBSON)/提供:伊藤圭/Unlim
――森薗選手は、試合後長い時間サイン対応してる印象があります。
森薗:せっかく来てもらってるんだから。体育館の利用時間があるから全部はカバーできてないけど、できるところまではそりゃやりますよ。
個人的には決まったサイン時間があってもいいと思います。彩たまさんはよくやってますよね。
それをホームでやってもいいし、アウェーのときも場所を借りてやってもいいのかな、と。来てくれた人の満足度は上がると思いますね。
――「試合に負けてもサイン貰いに行っていいの?」これは私も気になります(笑)。
森薗:全然来てください!でも負けてめっちゃ悔しくてもし態度悪かったらごめんなさい(笑)。せっかく来たんだし「サインいいですか?」と来てほしい。凹んでてもそこをあえて来てください(笑)。
写真:森薗政崇(BOBSON)/提供:伊藤圭/Unlim
――「いつも同じ人がサイン求めて来たと思われたらなと遠慮しがちですが…行ってもいいですか?」
森薗:「いいですか?」と言いながら絶対来るじゃん(笑)。
ファンを大切にしたい気持ちは僕ら各選手みんな強くて、何回も来てくれる人は名前も覚えるし、チーム内で話題もあがります。
だから「私の顔覚えて!」くらい何回もサイン貰いに来てくれた方が繋がり強固になるし面白い!
無観客下でのファンサービス
――最後の質問これにしましょう。「新型コロナウイルス感染対策でのファンサービス」について。
森薗:どうしたらいいんだろ?
(コメントを見て)これ面白い。「試合直後にライブ配信」。
反省会、祝勝会含めて試合直後に控室でライブして、10分間なにも喋らないとか勝って酒飲んでるとか、確かに面白そうですね。
僕ら勝ったときは気分が良いから、すんごいハイテンションなんですよ。
写真:手前左から2番目のユニフォーム姿が森薗政崇(写真はTリーグ1stシーズン)/撮影:ラリーズ編集部
――それは見てみたいです(笑)。
森薗:面白いですよ。「イェーイ」とかずっと言ってます(笑)。
会場でファンのみんなと会えない代わりに、試合後の控室見せるのはありかもしれないですね。応援してもらったお礼を言葉で伝えるのって、当たり前のことだけど意外とできてないこともありますし。
――ぜひ実現してほしいです。今回は、ドイツでのプレーも含めたアスリート目線での応援論、非常にタメになりました。
森薗:でもそもそもブンデスとTリーグはコンセプトが違います。ブンデスは、小さくてより身近なもの。Tリーグはエンターテインメントとしてより多くの人に楽しんでもらうもの。
ドイツは、基本的に試合に金をかけないのがモットー。僕らのチームだと、町の銀行員が仕事後に来て、入場のアナウンスとかマイクパフォーマンスとかやってました(笑)。
だから応援は、ブンデスにあわせる必要はないと思うし僕が作れるわけでもないから、Tリーグならではの文化をファンのみんなとどんどん作っていきたいですね。
――また第2回もやりましょう!ありがとうございました!
写真:森薗政崇(BOBSON)/提供:伊藤圭/Unlim
プロ野球やJリーグのように、いつかずっと先に、ファン、選手たちが今を振り返り「あの頃、応援もいろんなこと試したな」、そう思えるように今は未来の卓球文化のため、いろんな応援を試していくべきだ。
だって、まだ立ち上がったばかりの、私たち自身のTリーグなのだから。
森薗選手をUnlimで応援しよう
森薗:インターハイがなくなった中、高校生に何かできないかと考え、Unlimというギフティングサービスを使って、予算を集めて高校生のために強化合宿を行うというプロジェクトを立ち上げました。状況次第なのですが、9月の連休に卓球合宿施設で強化合宿を行おうと思っています。
僕は高校時代、高体連の合宿がありがたかった。同じ年代の選手が集まって、とにかく試合して順位付けする。思い出としても大きな経験としても残ってる。実戦経験を積む場がもっと欲しいと高校生のときから思ってたので、インターハイがなくなった今、多くの学校を集めてたくさん試合をしてもらおうと考えてます。
写真:森薗政崇/撮影:伊藤圭
多くのファンの方々にUnlimでいただいたご支援は、合宿施設費用などに使わせてもらう予定です。みなさんありがとうございます。
強化の場を一回で終わらせるでなく、定期的にやっていきたいと思っているので、みなさんご支援のほど引き続きよろしくお願いします。高校卓球界には本当にお世話になったんで、少しでも僕にできることであれば恩返しできればと思ってます!
Unlimについて
※スポーツギフティングサービス「Unlim」とは…①競技活動資金に充て新たな挑戦をしたい、②自身の活動だけではなくスポーツや競技そのものを盛り上げていきたい、③スポーツを通じて社会に貢献したい、といったさまざまな思いを持つアスリートやチームに対して、金銭的に支援するサービスです。
【動画】森薗政崇、高校卓球界への恩返し
>>森薗政崇流“高校卓球恩返しプロジェクト”始動 「居ても立ってもいられなかった」