日本生命レッドエルフは、早田ひなと平野美宇のツインエースを擁し、Tリーグ3連覇を果たした。
だが、このチームを語るときに欠かせないのが、チーム2位の16マッチに出場した森さくらだ。セカンドシーズン最多勝の森は、早田や平野が故障離脱する中、サードシーズンもフル稼働した。
しかし、最多勝の2年目とは打って変わって3年目は5勝11敗と苦しい結果に終わってしまう。この2年間、森を誰よりも傍で見てきたのが担当コーチの竹谷康一氏だ。
今回は、竹谷コーチに森との二人三脚の日々を聞いた。
【竹谷康一(たけや こういち)】埼工大深谷高、筑波大を経て、実業団の日産自動車で活躍。インターハイダブルス・団体優勝、全日本選手権ベスト8、全日本ジュニア準優勝などの実績を持つ。日本生命レッドエルフのコーチを務め、森さくら、麻生麗名の担当コーチ。
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コーチから見た森さくら、最多勝の2季目と苦しんだ3季目
セカンドシーズンは14勝で最多勝、一方サードシーズンは5勝11敗と苦しみました。振り返ってみていかがでしたか?
写真:森さくら(日本生命レッドエルフ)/撮影:ラリーズ編集部
それが上手くいって、1ゲームですが初めて石川選手に勝って、さくらはすごい自信を得てシーズンに臨みました。
写真:竹谷康一コーチ(日本生命レッドエルフ)/撮影:槌谷昭人
たぶんコロナ期間ですごく良くなったという手応えがドリームマッチであって、もっとできると思い過ぎてたんだと思います。3戦目のリンイエ(トップおとめピンポンズ名古屋)戦で負けたときに、同じようなパワー系のスタイルで力負けしたと感じて、「やっぱりだめだ」「うまくできない」と一気に自信がなくなってしまった。
あそこからメンタル的には最後まで崩れて、立て直せずに最終戦まで行ってしまったかなと思います。
写真:プレーオフファイナルで森さくらの戦況を見守る竹谷コーチ/撮影:ラリーズ編集部
プレーオフファイナルでの対戦も、本人は「良かった」と言っていました。ただ、私的にはファイナルはシーズン中の力を出せたらいけたんじゃないかなと感じていて、決して内容が良かったようには思えなかったんですけど(笑)。
写真:プレーオフファイナルでの森さくら/撮影:ラリーズ編集部
貝塚で日本ペイントと対戦した時に加藤美優選手に0-3で負けて、ビクトリーマッチでもう一回さくらで行くというときに、“さくら、声はお前の武器だ、出していこう”と臨んだらすごい良いプレーをした。でもリードしたけど逆転負けして、自分の今までの声を出すスタイルでやっても勝てなかった。
それでどんどん自信を無くしていくことにはなったので、声を出す出さないというのはやりにくかったかもしれないですね。
写真:森さくら/撮影:ラリーズ編集部
さくらはずっと辛かったかもしれないですけど、スポーツに取り組む者としては、「なんとかやっていこう」と踏ん張ってできたのはやりがいがありましたね。
写真:竹谷康一コーチ(日本生命レッドエルフ)/撮影:槌谷昭人
二人三脚で歩んできた森さくらと竹谷コーチ
写真:以前のインタビューでは竹谷コーチとの出会いで卓球人生が変わったと語った森さくら/撮影:ハヤシマコ
それはなにか竹谷さんの実体験から出ている言葉なのでしょうか?
自分が選手の頃から、どこかの大会に向けて頑張ろうと努力しても成績が良くなくて、そのちょっと後に強くなったと実感できたことがよくありました。
それから指導者として、いろんな選手を見るようになって全員そうなんですけど、2、3か月、半年頑張ったところであんまり成果は見えない。1年くらい経ったくらいでようやく何か変わったなと周りから言われて気づく。卓球はそんなもんだというのをわかってほしいとさくらにはよく言ってます。
写真:竹谷康一コーチ(日本生命レッドエルフ)/撮影:槌谷昭人
でも最近は、誰か強い人の真似をしてみるとか、工夫してできないことができるようになるとかで「卓球が楽しくなってきた」とは言ってますね。
写真:森さくら(日本生命レッドエルフ)/撮影:ラリーズ編集部
竹谷コーチの指導哲学
でも強化には間違いなく良い。どれだけ良いときも悪いときもその担当の選手を見ているので、やりがいがありますね。勝ったときは自分も喜びを感じられますから。
写真:ファイナルで森さくらにアドバイスを送る竹谷康一コーチ(日本生命レッドエルフ)/撮影:ラリーズ編集部
さくらの前にはカットマンの石垣やサウスポーの若宮を見ていて、戦型はもちろん性格も全然違います。難しいですけど、なるべく意見を選手側からも言いやすい関係性を築けるようにしています。
指導に関する哲学はあると言えばありますね。
でも、一番は、いろんな人が見て感動する、楽しめること。そういう観て喜んでもらえる選手になってほしいと思っています。
さくらにも「試合に勝つことが仕事じゃない。試合に勝ってもさくらが嬉しいだけ。試合をして誰かに何か影響を与えることが仕事なんだ」とよく言っています。
そういうところは大事にして指導していますね。
写真:竹谷康一コーチ(日本生命レッドエルフ)/撮影:槌谷昭人
「試合をして誰かに影響を与えることが仕事」。
良いシーズンも、悪いシーズンも。
声を出すシーズンも声を出さないシーズンも。
森と竹谷コーチの戦いは続く。
特集・日本生命レッドエルフ第1弾 森さくら、前田美優らのインタビュー
>>森さくら、前田美優らのインタビュー!日本生命レッドエルフ特集